コラム

「初」が並んだ逆転勝利の神戸戦 3人に共通する満足しない姿勢(Jリーグ神戸vs浦和)【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼古巣対決がリーグ初スタメンになった岩波拓也
浦和レッズはリーグ第8節のヴィッセル神戸戦で、前半に先制しながら一度は逆転される苦しい展開のアウェーゲームを、再逆転して3-2の勝利に持ち込んだ。これでリーグ2連勝となったが、実にこれは昨年8月以来のことだ。

 

このゲームで大槻毅暫定監督は、今季から加入した岩波拓也を3バックの中央でスタメンのピッチに送り込んだ。奇しくも、岩波にとってはこれが古巣対決。神戸の下部組織で育ち、キャリアで初の移籍を経験している岩波にとっては、かなり強烈な巡りあわせとなった。

 

プロサッカーの常で、スタメン発表から試合中にボールをキープするところまで、岩波には激しいブーイングが浴びせられた。それでも、「慣れ親しんだピッチと街でプレーできたことは嬉しかったし、友人や家族もたくさん見にくる中で初スタメンで出られたことはこれ以上のない喜びでした。試合前からブーイングがあるのは分かっていました。僕が移籍をして、神戸も次のチームに進もうという中で、これからもライバルとして戦っていきたいです」と、冷静さを保ってプレーした。

 

そして1-2のビハインドで迎えた後半27分には、柏木陽介の右コーナーキックをファーサイドで合わせて同点ゴールを決めた。ループシュートのような形になったヘディングシュートについて、岩波は笑みを浮かべながら振り返った。

 

「滞空時間が長かったので、相手の守備も寄せてきませんでしたし、折り返すか打つか迷った中で入れることができました。一瞬、時間が止まったようなシュートだったので、決まって良かったです。点を取ったことで逆に神戸は気持ちの面で落ちたと感じました。逆転できるかなと思っていましたし、自分のゴールが逆転につながって良かったです」

 

岩波はキャンプの時点から、槙野智章、マウリシオ、阿部勇樹と並ぶセンターバック争いでは劣勢だった。しかし、この日のプレーは「他にも良いセンターバックの選手がいますが、俺でもできるということを証明できたと思います」という手応えになった。

 

 

▼2人のルーキーがリーグ戦のピッチに
その岩波が決めたコーナーキックを得たプレーで右サイドから飛び込んでチャンスを演出したのが、明治大学から加入したルーキーの柴戸海だった。「小さいころから夢に見てきたステージですし、素晴らしいピッチでプレーできる喜びを感じました」という感慨の中、右ウイングバックで途中出場した。慣れないポジションだったが奮闘し、元ドイツ代表ルーカス・ポドルスキにも一歩も引かないマッチアップを見せた。

 

彼にとっては、これがリーグ戦の初出場だった。ルヴァン杯も重要な公式戦ではあるが、リーグ戦の重みは少し違う。今季の目標を「“リーグ戦で”10試合に出場すること」と話していただけに、まずは大事な一歩を踏み出した。試合後には大槻監督から「おめでとうという言葉をいただきました」と話す。

 

また、右ウイングバックから柴戸の投入時にセンターバックに移った橋岡大樹もまた、リーグ戦では初出場だった。彼もまた、堂々たるプレーを見せてチームの勝利の力になった。彼と対峙したのは浦和に在籍経験のある橋本和であり、何と言ってもフリーでクロスを上げさせた時には脅威になる存在だ。橋岡は自信を持って間合いを詰めた守備をして、危険なクロスを数回以内に抑えた。長身FWウェリントンとポドルスキを擁する相手だっただけに、サイドから何度もボールが入る展開になれば危険な展開になっただろう。

 

橋岡もまた、大槻監督からデビューを祝福されたが、その一方で「もっとできると思ってくれていると思いますし、大槻さんもこんなんじゃないと思っていると思います。ここからがやっとスタートだよ、という『おめでとう』だと理解しています」と話している。

 

 

▼ホッとした素振りもなく、次を見据える3人
3人に共通するのは、デビューの安堵感よりも「これから」という先に目が向いていたことだった。そして、その中でもキャリアの大きな記念となった柴戸と橋岡の2人が全く浮つくことなく地に足をつけていたことがとても印象深く残った。

 

「このピッチに立てたのはスタッフ、ファン・サポーターを含めて、家族などの応援のおかげです。勘違いせずに、真面目にひたむきにプレーして、ピッチ外でもきちんとプロとして振舞っていきたいです」(柴戸)

 

「ここからが本当に重要で、満足するわけにはいきません。何回も言いますが、『ここから』です。ようやくリーグ戦デビューできたけど、スタートラインに立っただけ。他の選手に負けないような気持ちで練習に取り組んでいきたい」(橋岡)

 

大槻監督になってから、負傷者以外のフィールドプレーヤーは全てピッチに立ち、リーグ戦の緊迫した場面でも躊躇のない選手起用が目立つ。仮に、彼らの起用で結果が出てなかったとしても、正式な監督を探している状態のチームに暫定監督として残す財産という意味では申し分がない。

 

その上で、この3人の選手が全く満足することなく上を目指していく姿勢は、彼ら自身のキャリアにとっても、チームに与える影響という点でも、良い影響があるはずだ。


※関連リンク

後半の「やり直し」連発に苦戦も逆転の神戸戦 効果的だった交代策と大外狙い【轡田哲朗ゲームレビュー/明治安田生命Jリーグ第7節神戸戦】(浦レポ)

 


轡田哲朗

1981年10月30日生まれ、埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。

コメント

  1. 1 匿名の浦和サポ(IP:150.246.25.88 )

    大槻さんと橋岡君は、すごく良い師弟関係だと思う。

    このコメントに返信

    2018年04月13日 22:53

  2. 2 匿名の浦和サポ(IP:106.156.160.78 )

    橋岡のデビューの話になった時「柴戸もです」と言う大槻さん。やっぱり若手を育てたい気持ちが伝わってくる。

    このコメントに返信

    2018年04月13日 23:21

    • 2.1 匿名の浦和サポ(IP:60.124.64.224 )

      ホント、今のタイミングで涼太郎と阿道がいればなあと

      2018年04月14日 20:59

  3. 3 ウラワ(IP:219.121.66.23 )

    橋岡、柴戸、荻原これだけ新人全員が活躍するって初めてじゃないか?三人ともこれからのレッズを引っ張って行って欲しい

    このコメントに返信

    2018年04月14日 00:58

  4. 4 匿名の浦和サポ(IP:119.173.120.202 )

    浦和は変わってくれたね、嬉しい

    このコメントに返信

    2018年04月14日 02:10

  5. 5 匿名の浦和サポ(IP:60.97.53.234 )

    大卒で坪井、平川、堀之内 高卒で長谷部が入って来た年も一年目から試合に出てレッズに欠かせない選手になっていったけど 今季入った選手達も そんな風になって欲しいね。

    このコメントに返信

    2018年04月14日 03:29

    • 5.1 匿名の浦和サポ(IP:14.12.33.0 )

      長谷部は2年目からですけどね

      2018年04月14日 09:13

  6. 6 匿名の浦和サポ(IP:111.239.154.37 )

    若手を使いながら勝つ、素晴らしいし、これは簡単な事では無い。
    しかも今の浦和で。
    無謀の様でもあるけど、先を見据えてる。
    この人がフロントより誰より浦和を良くしてくれるよ。

    フロントは安直な監督選びをするな、今年を乗り切るだけの監督に未来は無い。
    遠い先のビジョンを見る前に足下を良く見てみろ。
    一番必要としてる物がある。

    このコメントに返信

    2018年04月14日 07:59

    • 6.1 匿名の浦和サポ(IP:210.149.251.140 )

      じっぱひとからげ、ね!

      2018年04月14日 08:44

    • 6.2 匿名の浦和サポ(IP:60.124.64.224 )

      >6.1
      なんかカリっとジューシーでうまそー

      2018年04月14日 22:23

  7. 7 匿名の浦和サポ(IP:49.98.146.75 )

    これで前の方も有望な新人を獲得してくれ

    このコメントに返信

    2018年04月14日 09:43

  8. 8 匿名の浦和サポ(IP:60.113.11.12 )

    ところで直輝ってどうなの? 神戸戦、サブにも入ってなかった。ふつうにターンオーバーしてくるのかと思ったら。コンディション悪いのか。もっと最初から見たいんだけど・・・

    このコメントに返信

    2018年04月14日 10:40

  9. 9 匿名の浦和サポ(IP:219.194.247.16 )

    荻原って川越市出身なんだ初めて知った

    このコメントに返信

    2018年04月14日 11:55

  10. 10 匿名の浦和サポ(IP:126.34.114.121 )

    脳内オールスター戦でもやってなさい。

    このコメントに返信

    2018年04月14日 13:12

  11. 11 匿名の浦和サポ(IP:49.98.138.253 )

    今の浦和は選手は必死に戦っているし若手も使ってもらえるからギラギラしいる。
    新監督が就任してこの若手を使って育てる流れを切られないか心配。
    オリベイラなら今季は大槻で良いのではと思う。

    このコメントに返信

    2018年04月14日 14:26

    • 11.1 匿名の浦和サポ(IP:126.11.251.189 )

      また負けだしたらどうすんの?

      2018年04月14日 14:55

    • 11.2 匿名の浦和サポ(IP:49.98.138.253 )

      負けだしたらどうするって?
      それは新監督でも同じ事だろう。
      今のチーム作りなら負けても若手を起用して未来ある負けだと思うけどね。
      しかし新監督は即結果が欲しいから若手起用は消極的だろうし、それで負けだしたら未来もない無意味な負けだぞ。

      2018年04月14日 15:56

    • 11.3 匿名の浦和サポ(IP:126.11.251.189 )

      j2に落ちなきゃ良いが。今年のリーグは何処が落ちてもおかしくない。浦和も十分ありえる、大槻監督は最後のカードとしてとっておきたかったが。

      2018年04月14日 16:21

    • 11.4 匿名の浦和サポ(IP:123.230.113.41 )

      連戦の中で対戦相手の吉田監督も新人3人を先発させてたわけで、前任者が若手起用に消極的すぎただけで大槻監督が若手起用に特に積極的だとは感じないな。
      大槻監督は若手だけでなく平川のようなベテランにも出場機会を与えているし、選手たちの出場機会が偏りすぎず、選手たちがに試合勘を維持させたままイーブンな状態で後任者に引き継ぐ暫定監督の役割を全うしているのだろう。新監督が決まればその戦術にあわせてまた出場選手がある程度偏っていくのも自然な流れだと思う。

      2018年04月14日 17:59

  12. 12 匿名の浦和サポ(IP:1.75.212.246 )

    大槻さんは、暫定監督ということだがもしこのまま連勝続けても中村GMは変えるのか! どちらにしろ、今月中にははっきりするわけだが

    このコメントに返信

    2018年04月14日 15:19

  13. 13 匿名の浦和サポ(IP:124.103.14.19 )

    監督変わっても橋岡はずっと使っていくべき!以上!

    このコメントに返信

    2018年04月14日 16:32

  14. 14 匿名の浦和サポ(IP:14.193.184.214 )

    暫定が、W杯中断までと思っている人も多いだろうけど、
    今シーズンいっぱいでもいいのでは?

    このコメントに返信

    2018年04月14日 16:37

  15. 15 匿名の浦和サポ(IP:1.75.1.46 )

    ミシャ札幌も調子いいみたいで21日楽しみだな 駒井出てる? その反面、ガンバは初勝利挙げたと思ったら長崎に0ー3~長崎もそこそこやるかちなみに矢嶋は浦和と同じ境遇

    このコメントに返信

    2018年04月14日 17:04

    • 15.1 匿名の浦和サポ(IP:49.98.139.143 )

      俺たちの矢島はガンバ大阪U-23のレギュラーとしてJ3で活躍してますよ!!

      2018年04月14日 17:18

    • 15.2 匿名の浦和サポ(IP:1.75.244.66 )

      浦和のベンチからガンバのU23に移籍した矢島さんに今後も期待

      2018年04月15日 08:51

  16. 16 匿名の浦和サポ(IP:1.75.239.48 )

    ミシャ、新天地での仕事も
    いい感じで良さそうだね!
    おめでとうを送るよ!
    あなたの仕事がうまくいく様に
    祈ってます!
    浦和でも叶わなかったけど、
    もっとビッグネームのタレント軍団での
    采配が見たかったです。
    でもそういうチームは
    監督が目立たないからいやかなぁ。。

    このコメントに返信

    2018年04月14日 17:23

  17. 17 匿名の浦和サポ(IP:124.140.204.224 )

    暫定監督のまま行って成功したクラブよりも失敗したクラブの方がはるかに多いんだよ
    きちんと新監督までバトンを繋ぐという気持ちが今の多くの選手を使うという方向性にも
    つながっていると思う、
    貢献してくれた人を切るのはやはりつらい。
    ノーモア堀、ノーモアエンゲルス

    このコメントに返信

    2018年04月14日 17:43

  18. 18 匿名の浦和サポ(IP:60.113.11.12 )

    この過密スケジュール、選手の疲労は相当なもんだし、たまったもんじゃないだろうけど、見てる分には連戦って結構楽しいな(苦笑)。週2回の95年を思い出す。あんときのオジェックも、大槻さんみたいにモチベータ―で、それがまたよかったんだよな。連戦だからこそ、ターンオーバーでいろんな選手にチャンスがくるわけだし。そろそろ直輝や武富、ナバウト、スタメンで見たいんだけどなあ。

    このコメントに返信

    2018年04月15日 01:43

  19. 19 匿名の浦和サポ(IP:210.142.95.53 )

    大槻さんは、その言動からモチベーターと捉えられがちだが、自チームの状況と相手チームとの関係を考えていて、すごく状況を読めていると思うよ。だからフォーメーションの変更や選手の回し方が的確。さすが、分析担当をしていただけの事はある。就任からわずか3戦で、けが人以外の全員を起用して、全ての試合で勝ち点を得るというのは、単なるモチベーターに出来ることじゃないよ。

    このコメントに返信

    2018年04月15日 10:54

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