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この街ー第1回『プロローグ@2017 八重瀬町』【浦研プラス】

長年レッズを追いかけ続けるサッカーライター島崎英純さん、ミスターレッズ福田正博さんが浦和レッズについて熱く提言を行う「浦研プラス」
今回、浦研編集部の許可を頂き、無料記事の一部を転載させて頂きます。



この街ー第1回『プロローグ@2017 八重瀬町』(浦研プラス)

沖縄で

冬の沖縄は天候不順が続く。それでも沖縄本島は本土に比べて気温が高いから過ごしやすい。雲の切れ間から覗く青空はどこまでも澄んでいて、射し込む太陽の日差しは眩く、吹き付ける風は心地良い。透き通る海の底に珊瑚礁が見える。広葉樹の木々はどこまでも深い緑で、褐色の土が鮮やかな色彩を放っている。

 オレが初めて沖縄に来たのは10年以上も前のことだ。当時のことは鮮明に覚えている。それから思い出は幾重にも積み重なり、今を生きる糧になっている。

 オレはJリーグクラブに所属するプロサッカー選手だ。ピッチの上で闘うことを生業としている。シーズン中は常に気が張っていて、神経を尖らせている。だから短いオフの間は、思い切りスイッチを切る。

 心を鎮める場所は、いつしかここになった。そして去年、オレの所属するチームは沖縄でキャンプを張り、今年も2年連続でこの地で始動した。ここにはオレが愛してやまないモノがある。場所がある。人が居る。

 サッカークラブのキャンプはシーズンを戦い抜く体力を築く鍛錬の場であると共に、長い共同生活の中で集合体が結束し、団結を図る重要な機会でもある。サッカー選手は1試合90分間のゲームを年間50試合程度戦うために、キャンプで懸命に基礎訓練に励む。ここで手を抜けば1年を棒に振る。それを理解する選手たちは自らで精神をコントロールする。意思を貫けない者は早々にプロの称号を剥奪されてしまう。

ただ、人間は一息つくことも必要だ。全力疾走で駆けていれば、いつかは力尽きる。心の余裕、機微はやはり大事で、その切替えができる者もまた、プロとして闘い続けることができる。

 『国際通り』に『豚球』という店がある。オレの友だちの”ウエケン”が経営している沖縄料理や豚しゃぶを食せる店だ。同い年のウエケンはアグレッシブな奴で、10代の頃から苦労を重ねながら様々な職を転々としたが、今では一家の大黒柱として立派な仕事をしている。オレと彼とは異なる業種だが、オレはウエケンを心から尊敬している。

 去年のキャンプではたった一日だけのオフ日前日にチームメイト全員を集めてウエケンの店でささやかな会を催した。ここでは監督、コーチングスタッフなどは加わらず、選手だけで交流を図った。サッカーチームは対象に関わる者全てが等しく責任を負わねば目標を果たせない。それを十分認識しながら、それでもたまには選手だけで集まって公の場では言えない不平不満や愚痴を言い合い、ストレスを発散して次へ進む準備をしたっていいと思う。繰り返すが、サッカー選手も人間なのだから、そりゃあ、言いたいことは山ほどある。

 去年の”慰労会”は楽しかった。今年も『豚球』で選手全員集まろう。オレはウエケンに電話してオフ前の夜に大人数の予約を入れた。彼はいつものように喜んでくれて「待ってるよ~」と言ってくれた。うん、オレも楽しみだ。正直キャンプのトレーニングは辛いから、会だけを励みに日々を生きよう(大げさ)。

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