コラム

『ゴールを奪い切れなかった川崎戦 嬉しさだけでなかったメンバーのプレーは』Jリーグ浦和vs川崎【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼遅い時期にやってきたオーディション
アジア王者を勝ち取った激闘から中3日のリーグ戦は、優勝の可能性を残すためには勝利しかない川崎フロンターレが相手だった。浦和は25日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝、アル・ヒラル(サウジアラビア)との第2戦からスタメンを6人入れ替えた。タイトルが懸かったACL決勝と、優勝はおろか来季のACL出場権もないこの川崎戦では”外的モチベーション”が違いすぎる。だからこそ、ACL優勝を喜びつつもピッチに立てなかった悔しさを持つ選手たちの”内的モチベーション”を発揮する場として、川崎戦は適切なタイミングだった。

それと同時に、彼らにとってこのゲームは遅い時期にやってきたオーディションだった。それは、来月のクラブワールドカップに向けたものでもあり、来季に向けてものでもある。プロいう厳しい世界では、場合によっては来季以降の契約が懸かっているという側面だってある。決して、彼らが「抜けた」ゲームをしたわけではない。

今季、川崎と対戦するのはACLを含めて4試合目だったが、最も浦和がボールを保持して進められたゲームだったと言えるだろう。川崎戦の前の3試合、アル・ヒラルとの2試合と鹿島アントラーズ戦のイメージが強く残る状態でこのゲームを見れば、川崎のボールへの圧力は大きくなかった。確かに、浦和の選手がボールを受けた時に川崎の選手は近くにいた。しかし、ボールを奪われるのではないか、足下にガツンと飛び込んでくるのではないかという恐怖感には乏しいものだった。だからこそ、川崎に守られたというよりは、先にミスから得点を渡してしまったことと、その後の時間で浦和が点を取れなかったということを考えるべき試合になった。

▼結果的にミスからの失点が痛手に
中盤でフル出場した矢島慎也は「自分もそうだけど、全体として試合の最初にバタついてしまった」と話した。ここで自分のプレーをしっかり見せたいという選手たちの思いは、どうしてもアドレナリン過多の状況を招きやすい。それは仕方のないことでありつつ、前半14分という早い時間帯にミスで得点を渡してしまったのは痛手だった。相手MF家長昭博がスペースにボールを出して菊池大介と競争になり、カバーに入ったマウリシオが難なくカットしたかに思われたプレーは、マウリシオがボールを処理できずに突破を許した。そこから、小林悠のゴールが生まれてしまった。

マウリシオは「自分の決定的なミスが敗因になってしまった。悲しく思っているし、反省している。ボールの前に入ろうとして、通り過ぎてしまった。自分の計算ミスで、相手に入られてしまった」と悔しそうに話していた。また、中央で最後に追いかけていた森脇良太も「今日は勝たなければいけない、結果を出さなければいけない試合だった。それに尽きます」と、言葉少なだった。

一方で、その失点場面の後の時間帯は、浦和がかなりボールを保持した。川崎戦の厳しいところは、ボールを延々と持たれ続けて走らされてしまうことにあるのだが、浦和の選手たちは厳しく寄せていたし、楽にボールを持たせることなく回収して、それほど苦労せずにマイボールを作った。この点においては、ACLを経てのたくましさを感じた部分が大きい。確かにファウルも多くなったが、寄せた時に、寄せ切る、次のプレーを許さないという強さを発揮することができていたように見える。川崎を相手にそのような状況を作れたという意味でも、守備面での整理はチーム全体として良い段階まで来ていると言えるのではないだろうか。

▼優勝が懸かった川崎と対戦した意義
そうなると、やはり課題は攻撃の精度ということになるだろう。矢島は出場したACL川崎戦との比較も念頭に「徐々に堀さんのやりたいサッカーができている。自由に動いて、(遠藤)航くんと、(長澤)和輝くんと3人の関係で前に進んでいくことができた」と手応えがあった面があるとも話す。実際に、矢島のラストパスから武藤雄樹のシュートにつながった場面や、長澤が前で絡んだボールから矢島のミドルシュートもあった。中盤までの関係性という意味では、川崎に全く劣るところは無かった。

つまり、試合後に高木俊幸が悔しさを露わにして話したように、ラスト30メートルほどのところが課題になった。高木は「最後のところの精度です。パス、ボールタッチ、判断、そうした精度が足りなかった。相手は事故のような形でも点を取った。自分たちはそうじゃなかった。結局、試合結果で今の順位を示してしまった」と、自らに対しての苛立ちを話していた。

メンバーの大幅な入れ替えでコンビネーションに難があった点を差し引いても、彼らにとっては現在レギュラーでプレーしている選手と自分の差がどこにあるのかを認識する機会にもなったのだろう。そうした意味では、優勝の可能性が残っている川崎とACL決勝直後というタイミングで対戦できたことは幸運だったと言えるのかもしれない。もちろん、ホームゲームであり勝利することが求められたが、川崎戦はそうした捉え方をするべきゲームになった。

動画:【公式】ハイライト:浦和レッズvs川崎フロンターレ 明治安田生命J1リーグ 第33節 2017/11/29

※関連リンク
得られた手応えと・・・ 菊池大介が川崎戦に感じたこと【轡田哲朗レッズレビュー/明治安田生命Jリーグ第33節川崎戦】(浦レポ)


轡田哲朗

1981年10月30日生まれ、埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。

コメント

  1. 1 匿名(IP:126.247.194.77 )

    来季は堀チルドレンの直輝と峻希戻すのかな。

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    2017年12月01日 19:59

  2. 2 匿名(IP:49.97.111.99 )

    スポーツ報知のしんぞうの手記が泣ける

    このコメントに返信

    2017年12月01日 20:46

  3. 4 匿名(IP:60.46.237.119 )

    峻希だの直輝だのしつけぇなユース厨、神戸でスタメン取れない選手とJ2の選手戻してタイトル狙えんのかよ阿呆が。

    このコメントに返信

    2017年12月02日 00:28

  4. 5 匿名(IP:101.128.162.21 )

    あの失点が事故って。高木は三年目でしょ。伸びるとも思えない。しっかり入れ替えていかないと。先に社長から。

    このコメントに返信

    2017年12月05日 04:06

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