浦和レッズについて議論するページ

今年より町田ゼルビア、浦和レッズを中心に取材するライター郡司聡さんによる「対戦相手から見た浦和レッズ」というコラムシリーズが浦議でスタート!
第9回は天皇杯 浦和vs鳥栖戦になります。

 


▼鳥栖の想定を超えた浦和の攻め
天皇杯・ベスト4進出を懸けて戦った準々決勝の対戦相手であるサガン鳥栖は、チームの指揮権がマッシモ・フィッカデンティ監督から、金明輝監督に移行してわずか2試合目だった。初陣となったリーグ戦のベガルタ仙台戦は3-2で接戦を制しており、次に対戦した浦和は仙台と同様の[3-4-2-1]システムを採用しているため、直近の仙台戦の流れを汲んだ形で相手のチーム分析が成されていたという。右サイドハーフで先発した安在和樹によると、浦和戦で強調されていたのは、こんなことだった。

 

「仙台よりも選手個々の能力、クオリティーは浦和のほうが高いことは大前提。だからこそ球際でより戦わなければならないし、セカンドボールを拾うことが重要になるという話でした」(安在)

 

浦和攻略のための方法論は、オーソドックスな[4-4-2]のシステムでチーム全体の陣形をコンパクトに保ち、前からのプレッシングでハメるか、ブロックを作ってスペースを消すか。そのメリハリをつけること。試合は立ち上がりこそ鳥栖が主導権を握ったが、次第に浦和のクオリティーが対戦相手を凌駕していく。

 

開始5分には岩波拓也による縦へのロングフィードから興梠慎三がフィニッシュに持ち込む。このファーストチャンスはゴールの枠を外れた。それでも、この日の浦和は選手同士の距離感が良く、“幅と奥行き”を駆使したボールの動かし方と人の動きで鳥栖の選手との局面勝負を避ける展開を作れていた。ボランチの原川力は、前半の試合展開をこう振り返る。

 

「一つ剥がされた時に全体のリトリートが遅い気がしました。球際になかなか厳しく行けなかったのも、守備がハマっていないから。中盤で数的優位を作られていましたし、相手のFWが降りてくる形から有効なスペースをかなり作られてしまったので、FWの選手に最終ラインの選手がつくのか、ほかの選手が行くのか。もっとスムーズに移行できないといけません」

 

こうして浦和の先制点は16分。左サイドの宇賀神友弥がカットインから右足を振り抜き、シュートがブロックに行った吉田豊に当たって入る、ラッキーなゴールの形ではあった。ただ、そのプロセスを振り返れば、右サイドを出発点に攻撃がスタートし、中央で興梠が起点を作りながら、ボールが最終的に反対の左サイドに展開されるなど、鳥栖を左右に揺さぶった過程でゴールが生まれている。

 

さらに追加点となった31分の槙野智章によるゴールシーンは、柏木陽介の縦パスに反応した興梠が中央の深い位置で起点を作り、その興梠が中央のバイタルエリアでフリーだった槙野にボールを戻す過程から最後は槙野のミドルシュートが決まっている。「2失点目は下がり過ぎていたし、ダブルボランチのいずれかがプレッシャーに行かないといけない状況でした」と原川。シュートシーンに体を寄せ切れなかったのは、鳥栖側にも問題点はあるが、ピッチの奥行きを使ってボールを動かし、相手のプレッシャーを巧みに剥がした浦和のクオリティーも、追加点を生む原動力となった。先制点を奪った宇賀神は、前半の試合展開をこう振り返る。

 

「鳥栖はもう少し前から来るのかなと思っていたのですが、それほど前から来ずにギャップができていました。前から来るなら割り切っていこうとしていましたが、思ったよりもギャップで受ける形も作れましたし、自分が相手との駆け引きでボールを受ける回数が多かったです。特に前半は一人ひとりが考えて嫌な位置取りをできていましたよね」

 

こうして浦和は2点をリードして前半を終えた。

 

▼オリヴェイラの手腕
2点のビハインドを負った鳥栖は、後半開始に“2枚代え”を敢行。高橋秀人を3バックの中央に配し、前線に3枚を並べる[3-4-3]のような布陣で反撃を試みた。しかし、57分にレフェリーへ判定の異議を唱えたキム・ミンヒョクが2枚目の警告を受けて退場処分となり、浦和が数的優位に立つと、試合の趨勢はほぼ決したも同然だった。

 

それでも、鳥栖は決してファイティングポーズを下げずに、小野裕二が一人、気を吐く形でチャンスを創出。対する浦和もカウンターから興梠を中心に絶好機を築いた。しかし追加点は奪えず、最終的に後半の途中で数的優位に立った浦和が、前半に奪った2点を守り抜く形で2-0と勝ち切っている。

 

鳥栖側の視点に立てば、浦和戦の敗因は、事前に用意していた戦い方を表現できなかった側面と、それを凌駕する浦和のクオリティーが想像以上に高かったことに起因している。原川は言う。

 

「システムが似ている分、直近の仙台戦と相手のハメ方は似ていましたが、個々のクオリティーが高い分、剥がされる回数が多かった。そこで剥がされた時にストレスを感じずに、リトリートするなりしてスペースを消す作業をしなくてはいけないと思います。もちろん、チームの完成度に差はありますが、そこにストレスを感じずに今後は戦い抜かなければなりません」

 

新体制発足間もない鳥栖と、オリヴェイラ体制発足から約半年が経った浦和では、チームの完成度の差は大きかった。まさに今回の鳥栖戦勝利は、浦和の“順当勝ち”とも言える結果だった。

 

動画:【ハイライト】浦和レッズ×サガン鳥栖「第98回 天皇杯 準々決勝」

※過去記事
『想定内な前半、想定外だった後半。コメントから鹿島の敗因を振り返る』Jリーグ浦和vs鹿島
『興梠、武藤をイライラさせた柏の守備プランとは?』Jリーグ浦和vs柏
『ポドルスキが語る。大量失点の理由はどこにあったのか?』Jリーグ浦和vs神戸
『仲川にやられ続けていた宇賀神を救ったピッチでの助け合い』Jリーグ横浜FMvs浦和
『前半多くのチャンスを作った磐田。ハーフタイムで的確な修正をした浦和。その要因とは?』Jリーグ浦和vs磐田
『谷口が「強さを感じた」と認める浦和のストロングポイントとは?』Jリーグ浦和vs川崎
『名古屋の選手達が「怖い」と言った攻撃の形とは?』Jリーグ浦和vs名古屋
・『甲府選手のコメントから見えてくる浦和レッズの強さと弱さ』ルヴァン杯 浦和vs甲府

 


蹴球界のマルチロール・郡司聡

30代後半の茶髪編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスに転身。現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測しながら、編集業・ライター業に従事している。

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