今年よりTwitterでスタートした「浦和レッズのプレビュー、レビュー」が面白いと話題となっている浦ビューさん。
その原稿を浦ビューさんに許可をいただき浦議に転載させていただきます。
2019 J1第15節 レビュー
浦和レッズvsサガン鳥栖 2-1。
いつも読んで頂きありがとうございます。
代表ウィークが明けて、大槻体制のホーム最初の試合となった第15節のサガン鳥栖戦。結果は見事に勝利を収めました。大槻監督就任後初勝利です。
では、早速レビューを始めたいと思います。
目次
~スタメンと基本システム~
~前半戦~
~後半戦~
~総括~
さいごに
〜スタメンと基本システム〜
浦和は、前節からマルティノスを代えてナバウトを起用。左シャドーに武藤、右シャドーにナバウト。3-1-4-2(5-4-1)システムでした。
一方の鳥栖は豊田、クエンカが欠場。そのポジションに趙東建、小野を起用。松岡がトゥーロン国際大会で欠場の為、右SHは安を起用しました。4-4-2システムでした。
〜前半戦〜
•駆け引きからのキックオフ
豊田が欠場の為、鳥栖はキックオフの仕方をロングボールを前線に放り込むのではなく、繋いだところから始めました。浦和も鳥栖はキックオフは前線に放り込むと伝えられていたようで、前線から追うのではなく後ろに引きました。結果的に逆手を取られましたが、いきなり両チームの駆け引きが垣間見えた幕開けとなりました。面白かったです。
•両チームの攻撃と守備
浦和のボール保持時、最終ラインからビルドアップを構築すると、鳥栖は4-4-2なので、最前線は2vs3の数的不利になる為、2列目から内側(ハーフスペース)を基準点にポジショニングしているSHも前線にプレスに出て規制をかけました。ライン間はコンパクトに、最終ラインは下げ過ぎずのライン設定でした。
それに対して浦和はポジションは崩さずにロングボールも使いながら、リスクを冒さないようなパス回しを行いました。
一方の鳥栖のボール保持時は、浦和はこの試合は3-4-2-1というよりも、5-4-1をベースに、こちらも両SHともに内側(ハーフスペース)を基準点に鳥栖のビルドアップに対応してきました。
鳥栖の方がポジショニングや相手を動かしたところから空いたスペースを使うなどの前進の仕方は、上手かったと思います。
•ポジションの優位性から決定機
6分10秒のシーンは、この試合最初のビッグチャンスを浦和が作りました。
ゾーン2中央からマウリシオが運ぶドリブルでジワジワと前進してから、縦関係の柴戸へパス。柴戸は鳥栖の両ボランチの手前で受けたので、両ボランチとも柴戸に食いつきました。
柴戸はそれを認知してダイレクトで両ボランチの間を通す縦パスでナバウトへパス。ライン間で受けれたナバウトはCB間にポジショニングする興梠へラストパスを送り、ボックス内でシュートを打ちましたが、GK高丘がナイスセーブで防がれました。
3-4-2-1vs4-4-2の対決だとシャドーが中間ポジションを取れれば、噛み合わせ的に鳥栖は管理するのが難しくなるので、その特徴を浦和が生かせた一連の攻撃だったと思います。
映像で確認してみます。
J1第15節 鳥栖戦 レビュー動画①
① #urawareds #浦ビュー pic.twitter.com/mMMLcrF7XB
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年6月16日
•大きく変えた鳥栖の両ボランチのポジショニング
鳥栖目線で大きな変更点がありました。
プレビューを読んで頂いた方は分かると思いますが、鳥栖の両ボランチは右の福田がCBの前の中盤の底にポジショニングして、原川が左サイドのSHやSBとの関係性を重要視させる為に高い位置を取るポジショニングであることが、過去の試合からみて傾向としてありました。
しかし、この試合では反対でした。
福田が右サイドで高い位置を取りライン間でSHやFWと近い距離でポジショニングしていました。そして、原川が中盤の底でCBとの関係性を重要視している機会が多かったです。
何故、変えたのか。
①2週間で新たに習得した引き出し
②クエンカの欠場
③浦和対策
個人的には②の可能性が高いのではないかと思います。つまり、本来は左SHで起用のクエンカと三丸との関係性が良好に形成される為に原川を近くでプレーさせていたと思います。それが今節はクエンカ欠場により、小野が起用されました。小野の特徴を考えた時に、スペースを広く与えた方が生きる選手なので、人数をかけるサイドを左ではなく右に変えたという理由ではないかと思いました。
③である可能性もあります。それは次節以降の鳥栖の経過を見て、浦和戦限定でこの形を作っているのかを見てみたいと思います。
一方の浦和も武藤が左で、ナバウトが右でした。これはクエンカが起用されないと分かってから左右を変更したのか、元からこの左右だと決まっていたのか気になります。後者であるとすれば、鳥栖は左サイドから効果的な攻撃を作り出せるチームなので、その負担を武藤ではなくナバウトに任せたところにどのような意図があったのか聞いてみたいです。でも、攻撃面でシャドー初体験のナバウトを利き足と同サイドを起用させたと考えるのが普通の考えなんですかね。
•ボックス内での対応
9分55秒からは、鳥栖の小野と福田の決定機でした。
詳しく言及してみます。
▶︎浦和が相手陣深くでスローインを行ったところからです。
▶︎ナバウトがシュートを放ちましたが、ブロックされて鳥栖の前線の選手にボールが入ってしまいました。
▶︎収められて、上手く外されて、サイドの安へスルーパスを送られました。
▶︎マウリシオはスライディングで潰せると踏んでスライディングを行なっているはずですが、交わされてしまいました。
▶︎安に深いゾーンに侵入された現在の状況はこのように。浦和は戻りながらの守備です。
▶︎次の瞬間のシーンがこのようになっています。スローインのスロワーの宇賀神が一生懸命戻ってボールホルダーに対応。ボックス内の人数は足りています。
▶︎趙東建にニアサイドを狙わせた金崎は、今度は小野と交差して浦和にエラーを起こそうとしました。
▶︎この瞬間で金崎と小野が交わって…
▶︎金崎と小野が交差しました。岩武は最初は小野をマークしていたのですが、金崎に留められた格好となりました。小野には青木が追いつけそうになく、柴戸はボールウォッチャーなので、小野はフリーになりました。
▶︎そして、安が小野へマイナスのクロス。小野は完璧なフリーでした。決めなければいけませんでした。更には大外の福田も余っています。安への対応を見ると宇賀神と槙野の消すコースが被っていて、槙野が意味を成していないことになっていたと思います。
最後は小野がミートしきれずに大外の福田へ流れてもう一度シュートを放ちましたが、西川がセーブという展開になりました。
以上振り返ると、
①マウリシオはスライディングで対応で良かったのか?遅らせる守備でも良かったのか?
②安に対する宇賀神と槙野の対応はどうなのか?
③ボックス内ではマークの受け渡し、そのままついていくのか、ボールウォッチャーになり過ぎずに周囲を認知できていたのか?
など。
これまでに言及しているように、やはりこのシーンを見てもボックス内での対応は悪いと思います。マークに対する約束事のようなものは作った方が良いと思います。約束事というよりも、マイナスのクロスでドフリーでシュートを打たれる回数が圧倒的に今季は多いので、改善した方が良いですね。3日後に控える相手は、その部分を突くのが得意なチームなので改善は早い方が良いかもしれませんね。
なんとか失点は許しませんでした。
では、スロー映像で確認してみます。
J1第15節 鳥栖戦 レビュー動画②
② #urawareds #浦ビュー pic.twitter.com/u5o7jSLVgj
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年6月16日
•弱点を突かれたところから失点まで
次は鳥栖の巧みさから失点シーンまでです。
16分30秒のシーンからです。
前章と同様に写真を使えば1発なのですが、構成上使わない方が面白いので、細かく言語化しますので想像を膨らませて欲しいです。
ゾーン2での鳥栖の最終ラインでのビルドアップからです。
このシーンでも原川は中盤の底に、福田は高めの位置というポジショニングでした。
福田は最終ラインの槙野の前まで上がり、目の前に立ち影響を与えました。ボール状況は鳥栖が最終ラインから前進を伺いつつパスを回し、最後は高橋祐治が武藤のプレスを交わして前を向きました。
そして、金崎が槙野の内側から槙野の背後のスペースを狙う動き出しをして、高橋祐治も金崎にロングパスを送りました。槙野は福田にピン留めされて身動き取れずに背後を取られてしまいました。
金崎に背後を取られた時に、鳥栖は金崎含めて前線は3人。一方の浦和はボールホルダーの金崎を追いかけたマウリシオと岩波の2人のみの最終ラインでした。なので、金崎がクロスを上げるタイミングでボックス内は浦和は1vs2の数的不利でした。鳥栖はニアサイドとファーサイドに分散すれば、金崎のクロスの質さえ良ければ楽々ゴールを奪える状況でした。
実際に金崎のクロスの上げるタイミングも質も最高だったと思います。つまり。ニアサイドの小野へクロスを送りました。小野は惜しくもミートすることができずに反対サイドのスローインへ流れてしまいました。
では、
•何故浦和がボックス内で1対2の数的不利を作られたのか?
•何故鳥栖がボックス内で2vs1の数的優位を作れたのか?
浦和の最終ライン5人の状況を確認してみます。
前述の通り岩波はボックス内で対応しました。マウリシオはボールホルダーでクロスを上げる金崎に対応しました。槙野は福田にピン留めされました。
3CBの状況は把握しました。
では、両WBはどうだったのか?
宇賀神は高橋祐治が武藤のプレスを交わしたときの時点で最終ラインに並んでいましたが、大外に右SHの安がポジショニングしていて、こちらもピン留めされている状況でした。
そして岩武です。
そもそも、単純に考えると鳥栖の2FW+2SH+槙野をピン留めした福田の合わせて前線の5人に対してマンマークしていたとしたら、浦和は最終ライン5枚なので足りているはずです。そして、恐らく左SH小野の担当が岩武ということになると思います。
では、岩武はどこで何をしていたのか?
それは、この章の最初のシーンまで遡ります。
つまり、鳥栖の最終ラインからのビルドアップのシーンです。
鳥栖はSBを高い位置に上げずに4枚で最終ラインのビルドアップを構築していました。岩武はそのビルドアップに対して前線に出て、先に動いて左SBの三丸を牽制してパスを出させない対応を行いました。
5-4-1vs4-4-2なので、SBにはプレスをかけづらい噛み合わせになっています。それに対して前線からWBがプレスに出ることは世界各地、定番で行われています。しかし結果的に、岩武の目論見通り三丸へパスを通させませんでしたが、岩武は本来のポジションから飛び出している格好となり、その次の瞬間に高橋祐治が武藤のプレスを交わして金崎が背後を取っています。なので、前線まで先に動いた岩武は本来のポジションまで下がりきれない状況でクロス&シュートまで完結させられていたという訳になりました。
こうして、ボックス内で鳥栖は数的優位、浦和は数的不利という状況が生まれました。
ただ、岩武が責められる筋合いはありません。チームとしてやられたと思います。槙野や宇賀神がピン留めされたことや、高橋祐治にプレスを交わされて前を向かれたことや、WBが前線にプレスに行くことのデメリット面を突かれたことなど各スペースでそれぞれエラーを起こされました。
今後、この状況を作られたくないなら、後ろに引くところから守備した方が良いですし、継続してWBが出るなら、このシーンのような状況は作られることを想定しながら後ろの選手は対応しなければいけないですね。
この一連の流れは、圧倒的に鳥栖が素晴らしかったと思います。何にも関わっていないように思いますが、SBの三丸のポジショニングが効果的だったので、惜しいシュートまで辿り着けていると思います。更には福田が浦和の最終ラインをピン留めするほどクリエイティブなポジショニングを取れたことも良かったと思いますし、金崎の動き出しはまさに伝統芸です。
全員が一体となって攻撃することの象徴的なシーンだったと思います。鳥栖のボールを前進させるデザインの巧みさを感じられました。
では、ここまでのシーンをスロー映像で振り返ってみます。
J1第15節 鳥栖戦 レビュー動画③
③ #urawareds #浦ビュー pic.twitter.com/jOutWhR6Wj
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年6月16日
話を先に進めて金崎のクロスを小野が合わせようとしましたが、スローインへ流れてしまったシーンからです。
声を大にして言いたいのは、このスローインは本来は浦和ボールでは?と思いませんか。岩波は触っていないように見えました。
と、結果論言っても仕方ないですが、そのスローインは鳥栖から始められて、同サイドで浦和は人数をかけて守れていたものの、ボールを奪えず、コースも消せずに福田へスイッチのパスが入って、斜めのクロスを送り、安がゴールを決めました。既視感のある失点だなと思ったら広島戦の先制点ですね。同サイドに人数をかけられていましたが、奪えず、消せずに川辺をフリーにしてボックス内にスルーパスを送られたところからの失点を喫したものと同じ流れでした。
そして、2試合連続槙野と宇賀神の間でゴールを許す結果ともなりました。
槙野と宇賀神の距離間が広がっていたのは一目瞭然ですが、マウリシオは余っている状態だったので、ボール側に近づく金崎を槙野はマウリシオにマークを受け渡して、槙野は宇賀神との距離間を修正させた方が良かったと思います。このシーンもボールウォッチャーと言われかねない守備対応だったと思います。ボールを見ることが最優先ではありますが、槙野の中でもう少し背後を気にすること、ボールの反対サイドも気にすることをしてみた方が良いのかなと思います。
宇賀神がもっとスライドできていたら良かったのかもしれません。立ち方や身体の向きもどうだったのかな?とも考えることができると思います。
しかし、個人的にこの失点はボールサイドの選手の方が問題があったと思いますね。
失点したシーンなので様々な視点から議論されて、修正することができれば良いなと思います。
では、失点シーンをスロー映像で振り返ってみます。
J1第15節 鳥栖戦 レビュー動画④
④ #urawareds #浦ビュー pic.twitter.com/Zfo2BETrmx
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年6月16日
先制点が決まってからは鳥栖はSHを前線までプレスに行かせることはなく、4-4-2のブロックをしっかりと形成して、浦和の最終ラインにボールを持たせることを許容しました。
浦和もゾーン3まで侵入することができて27分35秒などのシーンを筆頭に、相手に影響を与えて動かしてシャドーの2人を上手く使いながらシュートしたい狙いは感じました。
•先制ゴールの伏線?
25分CKの流れから天皇杯決勝戦を彷彿とさせる宇賀神のロングシュートが生まれました。惜しくも入りませんでしたが、5分後に同じく右足で抑えの効いたゴールを決めていることから、このときのシュートが先制ゴールの伏線になったかもしれませんね。
J1第15節 鳥栖戦 レビュー動画⑤
⑤ #urawareds #浦ビュー pic.twitter.com/GPcNEKNqnu
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年6月16日
•浦和の同点ゴール
29分50秒から浦和が同点ゴールを決めました。
GK高丘のロングボールを槙野が趙東建に競り勝ち浦和ボールにしてから一気に前進して、右サイドの岩武へパス。岩武はクロスを上げ損ないましたが、ボックス内へ武藤を狙った斜めのパスを送りました。しかし、武藤、興梠が流石で、スルーの連続で大外の宇賀神まで届けてゴールを決めました。
ナバウトには三丸、青木には高橋秀人、武藤には高橋祐治、興梠には小林と鳥栖の最終ラインは全員浦和の選手に影響を与えられていて、大外の宇賀神までケアすることができませんでした。
結果論でいうと高丘のロングボールが問題であったと個人的には思います。絶対的に競り負けない豊田がいない中で、ターゲットは趙東建になりましたが、趙東建が槙野やマウリシオたちに競り勝てる勝算は、豊田ほど高くないはずです。更にアウェイで1-0でリードしている展開だったので、例えロングボールを送るにしても中央で競らせるのではなく、サイドに趙東建を移動させて競らせた方が負けた場合のカウンターのリスクも半減だったと思います。更に更にアウェイで1-0でリードしている展開で、五分五分のロングボールを送ったにも関わらず、両SHはとても高い位置を取り4-2-4のようなポジションバランスになっていました。それにより、浦和が競り勝ちマイボールになった時にSHが下がりきらずにWB岩武、宇賀神が浮きました。
浦和目線で考えるとしっかり競り勝てたところから、鳥栖が危うい守備をしてくれたとはいえ、最終ライン4枚全員に影響を与えた上にWBのアシストでWBが決めるという理想的なゴールを決めれたのではないかと思います。
では、スロー映像で確認してみます。
J1第15節 鳥栖戦 レビュー動画⑥
⑥ #urawareds #浦ビュー pic.twitter.com/Gzd3VavAJq
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年6月16日
同点以降再び前に出てきた鳥栖をひっくり返して、34分30秒のシーンはナバウトの武器を考えれば、興梠には是非早めにスルーパスを送って欲しかった惜しいカウンターのチャンス。
39分55秒のシーンは、後半戦で詳しく言及しますが、片方サイドにボールがあるときの反対サイドのシャドーのポジショニングが、この試合ではポイントになるとプレビューした通りの展開で、武藤の効果的なポジショニングでパスを受けてから宇賀神との関係性から枠を捉えるシュートまで完結させました。
では、この2つのシーンを映像で確認してみます。
J1第15節 鳥栖戦 レビュー動画⑦
⑦ #urawareds #浦ビュー pic.twitter.com/twWQl8265d
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年6月16日
お互いにチャンスを作りながら決めきれずに前半を終えました。
〜後半戦〜
•鳥栖の特徴を短所に変えることができた後半に…
後半は青木と柴戸が左右交代させたように思います。それにより青木の武器が生きるようになりました。
46分30秒のシーンでは、まさにプレビューで理想図として描いた形とほぼ似ている前進でシュートまで完結しました。
岩波がボール保持のところからです。
後半に入り再びプレスの強度を高めた鳥栖は岩波に小野がプレス。岩波は岩武にパスを送ってすぐに三丸がプレス。前からプレスを感じた岩武は青木に横パス。青木はダイレクトで同サイドのスクエア間(CB-SB-DM-SHの四角形)にポジショニングしている興梠へ縦パス。興梠もダイレクトで青木へリターンパスを落とします。
プレビュー通り鳥栖の傾向として片方のサイドでボールを保持された時は2ボランチはスライドしますが、反対のSHはボランチと同じ間隔ではスライドしませんでした。
興梠からのダイレクトの落としを受けた青木は更にダイレクトで瞬間的に広く空く反対サイドのSHとボランチのライン間を貫通させる斜めのパスを送り宇賀神へ届けました。武藤が反対サイドのスクエア間にいたことも素晴らしかったと思います。武藤のポジショニングがあったからこそです。
そして、パスを受けた宇賀神は自分で仕掛けて最後はシュートまで完結しました。
更に49分30秒のシーンでは、浦和がゾーン2で左から右へ展開したパスに対して、連動したスライド最中の鳥栖の逆を取る反対サイドの宇賀神へのロングパスを青木が送り、最後はナバウトに合わせそうな惜しいクロスまで送りました。
以上の2シーンの通り、後半に入り青木が右側にポジショニングするようになったことで意識的にサイドチェンジを使い始めたと思います。更には鳥栖も前半に比べて横の距離間を狭くさせようと、圧縮させたようにも見えました。この2つが重なり浦和ペースで後半序盤は進みました。
今の2シーンを続けてスロー映像で確認してみます。
J1第15節 鳥栖戦 レビュー動画⑧
⑧ #urawareds #浦ビュー pic.twitter.com/l2g6SO6BYW
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年6月16日
大槻監督は動き、50分にナバウトと長澤が交代しました。「人生初めてのポジション」と語るように、シャドー起用のナバウトはポジショニングやボールの出し入れは効果的ではなかったと思います。ナバウトもマルティノス同様に前を向かせてプレーさせたい選手なので、ライン間をコンパクトに守ることから始める鳥栖相手だと、初体験では中々難しかったと思います。興梠と近い距離でプレーするように言われていたようですが、もう少し中間ポジションで影響を与えてみても良かったと思います。それでは、ナバウトの良さが出ないのでは?と思うならば、ナバウトが頂点で興梠がシャドーでも良いと個人的には思います。1週間しか経験してないシャドーなのでここからの積み上げをとても楽しみにしたいです。
その後はお互いにカウンター合戦やどちらの主導権ではない状況が長く続きました。55分30秒では、岩波のスーパーシュートブロックでゴールを阻止しました。
鳥栖はデータとして後半初めの15分のハイプレス発生率が高く、この試合でも後半15分間、前線からのプレスの強度を上げたと思います。その特徴を上手く外せたり、ハマってしまったりを繰り返しながらでしたが、決定的なチャンスは作れませんでした。
66分に趙東建に代えてトーレス、68分に岩武に代えて森脇を投入しました。この2つは、試合前からある程度想定していた交代だったと思います。
岩武もそれほど体力が落ちていた訳ではなかったと思います。
鳥栖は最終ラインから足元で繋いで前進させることも継続しながら、前線にワールドクラスの選手が入ったことで早めにロングパス等で前進させる機会も増やしました。
74分00秒は、右SH長澤のお得意の先に動く守備を見せてしまい、柴戸がサイドまで釣りだされて中央にスペースを与えてしまって前進を許しました。
後半途中になると、反対のSHの武藤もスライドを前半ほどできなくなるので、長澤が先に動いて柴戸が釣りだされたとなると、2列目の中央は青木のみという状況になります。
長澤の「途中出場でフレッシュ&元々の特徴で先に動く」が重なってしまい、自らスペースを与えて致命的な失点を招きかねない状況になってもおかしくなかったと思います。ここは、鳥栖の最後の質に助けられた部分もありました。
78分に鳥栖は小野に代えて安在、浦和は柴戸に代えてマルティノスを投入しました。
柴戸は守備はいつもながら安定感があったと思いますが、パスの出し手としてはこの試合では中々奮わなかったと思います。湘南戦での長澤のアシストのように本来はできる選手なので、試合を重ねるごとにできることを増やしてくれることを期待したいです。
この交代により、マルティノスが左シャドー、武藤が右シャドーにコンバート。柴戸のポジションに長澤が降りたと思いますが、青木と長澤はほぼ縦関係になっていました。この縦関係のポジショニングは、後半終盤での最終ラインから効果的に前進する攻撃を見せられなかった一因だと思います。
一方で鳥栖は左SHに安在を投入して、失われかけていた前線からのプレスを復活させたい姿勢が見えました。早速、安在は列を上げて岩波へ勢いよくプレスに出ていました。
その鳥栖の狙いを上手くひっくり返せたのが86分40秒の岩波からの右サイドでの前進したシーンだった思います。
87分に疲れが見えた安に代えてリーグ戦デビューの石井が投入されました。
展開的には鳥栖に得点が生まれそうでしたが、93分に興梠の決勝ゴールが生まれました。
鳥栖の攻撃を封じたクリアをマルティノスがゾーン1で受けたところからでした。
マルティノスのワントラップ目と「後ろに収めるよ?」という誘惑した身体の向きに福田は騙されて、見事に逆を取れたと思います。
マルティノスは運び、小林祐三とのマリノス対決も制して、鳥栖としては原川に当たったボールが最も不運な選手に渡ってしまったと思います。
興梠は左サイドに展開してクロスが上がることを予測して大外で駆け引きしていたのでしょうね。予想しないボールが自分のところに来ると余計な緊張が起こるものですが、当然のように決めてくれました。流石は興梠様です。
試合は2-1で終了しました。
〜総括〜
鳥栖目線で考えると失点シーンよりも、アウェイで1-1の状況でチーム順位や怪我人の事情を考えれば、引き分けでも悪くない結果だったと思いますが、最後までラインを引かずに前に出たプランニングが正しかったのかを考えた方が良いですね。
今回は結果として最後に失点しましたが、引き分け狙いではなく、勝てると勇気を持って前に出ることができるほどの実力が、自分たちにはあると踏んだ上での金明輝監督の決断だったと思うので、鳥栖の今後は明るく輝しく伸びてくると個人的には思いました。
いくつか言及したように鳥栖のボールの前進の仕方、ポジショニングの良さ、豊富さはJリーグの中でもトップクラスに値するものだと過去の試合を通しても感じていたので、是非とも明輝さんと素晴らしいチームを作り上げて欲しいです。
さて、浦和レッズです。
見事な逆転で久しぶりにリーグ戦の勝利を収めることができました。
非ボール保持では、鳥栖の前進の巧みさからプレスを外されるシーンは散見しました。そして、ボックス内での対応です。そこまで運ばせる機会を作らせたくないなら、相手陣内で即時奪回できるポジショニングを目指すなどのやりようはあると思います。ボール保持では前半はシャドーを狙いに、後半はサイドチェンジを狙いにシステム上の噛み合わせを狙った攻撃を作れていたと思います。機能していたのは前半だと思います。相手に影響を与えること、連続性のあるプレーを増やすことは、これから上積みして欲しいですね。
キャンプで70試合分を戦える基礎強化を仕掛けたオリヴェイラ監督の狙いと交代選手を含めて最後までゴールを強く求め続ける大槻監督の狙いが、気温が高くなり、体力調整が難しい季節の変わり目に効果が出てきて、2試合続けてのアディショナルタイムでのゴールを生んだのではないかと思います。いい意味でオリヴェイラ監督の仕掛けたキャンプの狙いは引き裂きたくても引き裂けないはずなので、効果的に作用する夏場になることを期待したいですね!
相手チームの特徴に合う選手を起用すると大槻監督がコメントした通り、プランニングや個々のタスクでも川崎戦と鳥栖戦では変わっていた部分も多かったので、「あくまで相手ありきのスポーツ」であることをよく理解している指導者なんだなと思いました。まだどんな色があってとか監督としての評価云々は早すぎると思うので、もう数試合経過を見てみたいなと思います。が!結果を出さなければいけない試合がすぐそこに控えていますね。
さいごに
ホームで勝ててホッとしています。
後半は相当アバウトに書いてしまい申し訳ございません。
いよいよACLベスト16、蔚山現代戦がやってきます。
約1ヶ月毎日欠かすことなく蔚山を追ってきたプレビューを是非1人でも多くの浦和サポーターに読んで頂きたいです。
今回も長文読んで頂きありがとうございました。
面白ければTwitter上で、リツイートや引用リツイート等々で #浦ビュー とつけて拡散、宣伝して頂けると嬉しいです。
浦ビュー
初めて浦和レッズを見た方にも読みやすく分かりやすい内容にしつつ、長く浦和レッズを応援して頂いてる方にも満足して頂ける内容を目標に2019年より浦和レッズの公式戦のプレビューとレビューをTwitter上でスタート。
Twitter:@ux1JmiTaYbsMArM
1 匿名の浦和サポ(IP:211.15.235.105 )
やっぱり、宇賀神、槙野のところの守備は気になりますよね。この二人だけでなく、チームとして修正してほしいところですね。
2019年06月17日 16:32
1.1 匿名の浦和サポ(IP:122.103.208.58 )
たしかにそうですね。 特に相手が2トップの場合右サイドで保持されるとマウリシオと槇野がスライドします。このときに槇野のポジショニングがかなりアバウトというか何を意図しているかわからないことが多くあります。(スペースケア? マーキング?)これらに引きずられるように宇賀神のポジションも曖昧で、相手SHなどに入られます。 ここはこれからも要注意だと思います。 でも監督も話していた通り、後から同じ場面をつくられたときに宇賀神がしっかりと修正して、一度クリアしたボールを更に追ってスライディングでクリアした場面は非常に良かったと思います。 猛拍手でした。
2019年06月17日 22:13
2 匿名の浦和サポ(IP:1.170.246.124 )
武藤選手のポジショニングの良さや青木選手のサイドチェンジの巧みさ、
そして金崎選手の動きとその質の高さ、鳥栖というチームの良さ、
浦和に不足している要素等など、ホントに分かりやすいわ~!
2019年06月17日 17:55
3 匿名の浦和サポ(IP:219.100.29.90 )
9分55秒からは、鳥栖の小野と福田の決定機でした。
ってところのマウリシオが交わされたあとの宇賀神の対応ってどうなの?
相手は最初ライン際にいたのに相手のドリブルに合わせてずるずる下がってペナルティエリアにいれさせちゃってるじゃん?
個人的にはこの守備の仕方がもうだめだと思うんだけど。
槙野とかもそうだけど浦和の選手はみんなこういう守備するよね。
一発で取りに行って交わされるのが最悪だけど、うまく間合いとって味方戻るまで遅らせられないものかね?
宇賀神がボールを取ろうというプレッシャーも与えず簡単にズルズル下がっていくから前に進まれちゃうんじゃないか?
そんでペナルティエリアまで侵入されちゃうともうファールできないし。しかもプレッシャー与えられてないから簡単にクロスもあげさせちゃってるんだよね。
いつもこの守備でクロスまたはシュート浴びまくりな気がする。
2019年06月17日 19:23
3.1 匿名の浦和サポ(IP:1.75.242.224 )
相手の攻撃を遅らせ、味方が帰る時間を作ることはできてたと思うけどね
すでにマウリシオが一発で交わされてるし相手の突破力も考えたら無難な対応かと
2019年06月18日 06:18
4 ストロベリームーン(IP:219.102.64.254 )
読むと、サッカー偏差値が上がった気になります。
2019年06月17日 19:32
5 匿名の浦和サポ(IP:106.130.41.188 )
失点シーンはクロスが入る予測対応が出来ていない。
塞げる失点は減らしていかないと。攻撃もボックスまで持っていったなら守備が整ってない間にフィニッシュまで持っていかないと上位チームは仕事をさせてくれないよ。予測対応や早いフィニッシュは選手の意識だろうね。
2019年06月17日 19:43
5.1 匿名の浦和サポ(IP:61.125.192.154 )
最近エリア内で槙野のボールウォッチャーになってる事が多過ぎ。1vs1の競り合いに強くても人を捕まえられなければ意味ない。
2019年06月17日 21:58
5.2 匿名の浦和サポ(IP:1.75.242.224 )
というよりほぼフリーでクロスあげられてるのも問題
2019年06月18日 06:05
5.3 匿名の浦和サポ(IP:211.15.235.105 )
うん、そうだよね。フリーでクロスを上げられる前に何とかしないとね。相手への組織的なプレスとか、もっとやらなければいけないのだろうね。分析に長けた大槻さんなら、わかっていると思うが。
2019年06月19日 06:26
6 匿名の浦和サポ(IP:111.89.72.118 )
確かに相手にドリブルされながらズルズルとpaに侵入される事が多いが、なんとかならないかね。
2019年06月17日 22:53
6.1 匿名の浦和サポ(IP:211.15.235.105 )
これは最近に始まったことではなくて、前からそう。浦和の悪い時の守備だよね。イチかバチか飛び込んで買わされてはいけないと思うが、少なくともPAの手前で阻止するとか、せめて遅らせるとか、できないものかね?
2019年06月19日 12:57
7 匿名の浦和サポ(IP:49.98.145.23 )
宇賀神ならあたりまえ
2019年06月17日 23:14
8 匿名の浦和サポ(IP:1.75.239.21 )
南千里クリスタルホテル
俺、アウェイ・ガンバ大阪戦の常宿
もう 泊まれないじゃん
2019年06月18日 00:43
9 匿名の浦和サポ(IP:114.158.67.8 )
ナバウトをシャドーで使ったのはかなりの賭けだったと思います
結果、守備面ではほとんど使い物にならないことがわかりました
大槻サッカーだとスタメンにはなれないでしょうね
2019年06月18日 02:11
9.1 匿名の浦和サポ(IP:61.125.192.154 )
攻撃でも浮いてた。使うなら1トップかな
2019年06月18日 04:03
10 匿名の浦和サポ(IP:175.132.137.183 )
浦和の失点パターンとして低くて早いクロスに対しての中のディフェンスが散漫になる傾向がある。
低くて早いクロスは対応が難しいのにクロスに対しての寄せも甘くコースを限定されていないのも原因なのだろうね。
とにかくサイドの選手が安易にクロスを上げさせない、上げられてもコースを絞るディフェンスをする、これが重要だよ。
2019年06月18日 05:02
11 匿名の浦和サポ(IP:60.71.37.195 )
39分の興梠がナバウトに出さなかったのは、それまでのナバウトの前線からの守備への報復なんじゃないかなぁ、なんて無粋なこと考えてしまう
ナバウトだけ連動した守備に参加していなくて興梠が不満を持っているように現地だと見えた
まぁプロだしそんなことはあり得ないと思うけどね
2019年06月18日 09:09
12 匿名の浦和サポ(IP:118.22.100.108 )
クエンカが居なくてよかったよ。ほんとに。鳥栖は何であの順位にいるのか分からない。大分も良い戦いをしているけど、鳥栖も毎試合良い戦いをしてる。本来もっと上にいても良いと思う。紙一重の厳しいリーグだよ。
浦和はここから連勝して欲しい。東京は間違いなく落ちてくる。やはり今年も川崎が優勝候補筆頭。でも勝ち切れない状況が続いているし、浦和にもまだまだチャンスはある。
2019年06月18日 23:08
12.1 匿名の浦和サポ(IP:211.15.235.105 )
うんうん、鳥栖の監督交代直後のガンバ戦をたまたまテレビで見たんだけど、どの選手も出足が良くて、攻守にガンバを圧倒していて、「え?これが10試合1得点で最下位のチームか?」と正直思った。チームのことを理解していてきちんと分析できている優秀な人が監督になると、こうも変わるものかというのが正直な感想。大槻さんも同様だと思う。浦和を良い方向に変えて、勝ち続けてくれると信じている。
2019年06月19日 13:05
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