コラム

『梅崎司が語る誤審だけではない湘南の勝因』Jリーグ浦和vs湘南【郡司聡の対戦相手から見た浦和レッズ】

▼ハーフタイムで流れが変わる
“ターンオーバー”と言っても差し支えがない陣容だった浦和レッズは、22分に長澤和輝が、直後の25分にアンドリュー・ナバウトが連続してゴールを奪い、2点を先取した。

 

「自分たちがスタメンでプレーするに値することを証明するために試合に臨んだ」

 

そう振り返ったナバウトを筆頭に、先発出場の機会の少ない選手たちが奮起する形で、この日の浦和は絶好のスタートを切った。

 

2-0で迎えた31分。2点を追う湘南ベルマーレは、梅崎司の縦パスを受けた杉岡大暉が鮮やかなミドルシュートをポストに当てながらゴールを決めたかと思いきや、山本雄大主審がノーゴールの判定を下し、試合は再開。その後、ゴール前でチャンスを得たナバウトがGK秋元陽太との競り合いの中で負傷し、途中交代でピッチを去るアクシデントが起きた。主審の判定に猛抗議する湘南ベンチ。結局、判定が覆ることはなく、試合は再開され、前半のアディショナルタイムは6分を数えた。

 

迎えたハーフタイム。湘南の選手やコーチングスタッフにとって、判定は解せないものだったが、梅崎いわく、ロッカールームでの湘南は「ノーゴールの判定を反発力に変えて逆転しようと一致団結していた」。こうして意気上がる湘南は後半開始から大野和成に代えて、負傷明けの菊地俊介を投入。秋野央樹をアンカーに配し、システムを前半の[3-4-2-1]から[4-3-3]に変更して反撃に出た。

 

「前半はレッズのペースに飲まれていた」(梅崎)湘南は後半開始直後の47分、守から攻への切り替えを図る長澤に対して、猛然と松田天馬がアプローチし、ボールロストを誘発。ルーズボールを拾った杉岡が菊地に縦パスを展開すると、「ウォーミングアップでもシュートの感触が良かったので、一発思い切って打った」菊地の左足ミドルが決まり、湘南が反撃の狼煙を上げた。

 

▼湘南の土俵に引きずり込まれる
目まぐるしく攻守が入れ替わるオープンな展開は後半に入っても変わらず、開始直後から飛ばしていた浦和の選手たちは、チーム全体の運動量とインテンシティーが次第に低下していく。公式戦を90分フルに戦ったことがないメンバーが多くピッチに立っていたことも影響したのだろうか。彼らは公式戦でのゲーム体力が十分でなかったことも、そうした展開を助長していた。さらにこうした“行ったり来たり”の試合展開は、むしろ湘南が望んでいる戦況でもあった。山根視来が言う。

 

「前半の浦和は前から来ていて、最初はそれにやられましたが、サッカーは90分を通してのもの。いつかは落ちてくるだろうという中で、後半のスタートに点を取れたことが、大きかったと思います。オープンな展開になってしまえば、ウチに分があると思っていましたから」

 

途中出場のファブリシオが後半だけで4本のシュートを放ち、ゴールに迫ったかと思えば、対する湘南もトレーニングで鍛えた自慢の走力を駆使してスピーディーな攻守転換からのカウンターを、何度も浴びせた。ただし、シュートシーンの質という意味では、むしろ湘南のほうが上回っていた。

 

「そんなに相手を深い位置まで入らせなかったし、フィニッシュもミドルシュートが多かった。それは織り込み済みの中、前から圧力を掛けることができました」

 

梅崎がそう話したように、追いかける強みを発揮していた湘南が、精神的優位性を持ちながら時計の針を進めていく。そして2-1で迎えた79分。左サイドを崩される形から最後は菊地に冷静なフィニッシュを決められてしまい、スコアは振り出しに戻った。さらに後半のアディショナルタイムも4分を経過した頃、劇的なドラマが待っていた。

 

90+4分、ファブリシオのシュートをキャッチした秋元がパントキックで前方へフィードを展開し、山﨑凌吾が中央を駆け上がる山根につなぐと、ドリブルでボールを運びながらアタッキングエリアに進入した山根が右足を一閃。決死のタックルを試みた阿部勇樹のディフェンスを物ともせず、決勝点を叩き込んだ。殊勲の山根は「サポーターを含めた、クラブのために決めたゴールだった」と振り返る。

 

“理不尽”と形容されてもおかしくないようなノーゴールの判定から、不屈のメンタリティーを発揮し、2点差をひっくり返した湘南の逆転劇。その勝因は、もはや理屈では説明が不可能に近いように思える。しかし、梅崎の言葉を借りれば、湘南の勝因はこうなる。

 

「前からプレッシングを掛けて、ボールを奪ったらマークを捨ててでも、後ろの選手が連なって出て行く。それは日々練習していることですし、練習している成果が出ました。一人で二人を見ようと、厳しい練習を積んでいるので、そういう意味ではフィジカルで浦和よりも勝ったのかなと。ただ真ん中の選手は(松田)天馬も含めて、前掛りになり過ぎてバランスは崩さないようにと考えていました。でもチャンスがあれば、前へ出て行くのが僕たちのサッカー。そこの見極めは意識していました。後半は内容で上回ったし、内容を思えば、奇跡でも何でもないと思います」

 

決勝点の山根は「相手のことなので、何とも言えないですが……」と前置きしながら、こうも言っていた。

 

「浦和はチーム状況が良くない中、焦りがあったのかと。終わってみればうまく、僕たちの“土俵”に引きずり込めたと思います」

 

オープンな展開に引きずり込み、“カウンターの応酬”や“走力勝負”となれば、湘南はそれを制する自信があるーー。知らず知らずのうちに相手の土俵に引きずり込まれていた浦和にとっては、“奇跡のような逆転負け”も、必然の敗戦だった。

 

蹴球界のマルチロール・郡司聡

編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスに転身。現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測しながら、編集業・ライター業に従事している。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド・刊)。

コメント

  1. 1 ウラワ(IP:61.193.215.202 )

    ファブリシオは後半だけで4本放ちゴールに迫った?あの無理矢理撃ったシュートが?

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    2019年05月20日 10:04

    • 1.1 匿名の浦和サポ(IP:183.74.205.88 )

      周りがバテバテで動かねーからファブリシオは怪我で迷惑かけたが自分が決めてやるって気持ちでピッチに入ったんじゃないかな。少なくとも他の選手が入るより脅威であったことは事実。ナバと交代させたのは失策だと思うけど。それより俺は攻守に絡んだ柴戸、前半はキーマンになったマルティノス、後半はバテたが気持ちは入っていた荻原などを褒めたいかな。ファブリシオもそのうちコンディション上がってくるだろう。脱線するが織部と選手は敗因をしっかり認識し、繰り返さないことを約束した上でACL、何が何でも勝ってほしい。もちろん織部にはこれ以上酷い試合を見せていたら選手のみならず監督のくびも危ういってことを自覚してほしい

      2019年05月20日 16:37

  2. 2 町谷の浦和サポ(IP:42.146.112.197 )

    もういいって梅ネタも誤審ネタも。
    湘南見て指咥えてんじゃねーよ。
    とにかく北京勝って広島にも勝てるよーに
    対策しろ。勝てないなら監督切ってキャプテン換えろ。柏木出すなら結果も出させろ。

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    2019年05月20日 10:20

    • 2.1 匿名の浦和サポ(IP:218.33.163.15 )

      誤審のせいと済ませずに、2-0でリードした試合の後半にどう入りどう戦うか、きっちりと敗因分析しなければまた同じようにひっくり返される試合が出てくると思う。

      2019年05月20日 15:19

  3. 3 匿名の浦和サポ(IP:219.102.68.159 )

    梅﨑はもういいよ。OBではあるが今は敵だ。

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    2019年05月20日 11:28

    • 4.1 匿名の浦和サポ(IP:61.194.119.94 )

      べつにウメがしつこいわけじゃないだろ。いろんなライターがウメに取材して、そのコラムが時間差を置いて掲載されているだけの話だろ。そのくらい理解しろよ。

      2019年05月20日 21:09

  4. 5 匿名の浦和サポ(IP:106.132.86.37 )

    梅ネタを引っ張るわけではないが、どうして35歳にもかかわらずあれだけの運動量を保てるのに、30歳の柏木は動けてないように見えるんだろうね?

    このコメントに返信

    2019年05月20日 12:01

    • 5.1 匿名の浦和サポ(IP:126.182.197.58 )

      10代後半〜20代でどれだけサボらずにトレーニング(食事等も含む)をしてきたかの差だと思う。
      周りの環境もあるだろうけど、柏木はセンスだけでやってきた感じだし、年齢を重ね、身体が劣化したらこんなもんかと、、、

      でもみんながみんな阿部ちゃんとか平さんみたいになれないだろうし、ホント特別なんだと思う。

      2019年05月20日 12:12

    • 5.2 匿名の浦和サポ(IP:118.21.137.91 )

      某ジャーナリストも彼の不摂生(飲酒)には苦言を呈してましたね。
      闘莉王みたいに飲んでも結果を出せていれば周りも文句言えないでしょうけど。

      2019年05月20日 12:56

  5. 6 匿名の浦和サポ(IP:219.111.52.127 )

    梅崎に一つ言えるのは湘南に行って幸せだね。
    だけど俺は正直浦和で何年も給料泥棒でしかない選手だよ。
    輝いた時間が在籍していた時期に比べて短すぎるただの選手。

    これからは湘南で今まで以上に輝いてね。ただ浦和に関わらないで良いよ。

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    2019年05月20日 12:31

    • 6.1 匿名の浦和サポ(IP:61.194.119.94 )

      船種へのリスペクトのかけらもない最低な言葉。知的レベルが低すぎる。

      2019年05月20日 21:13

    • 6.2 匿名の浦和サポ(IP:61.194.119.94 )

      選手ね。

      2019年05月20日 21:14

  6. 7 匿名の浦和サポ(IP:118.238.212.131 )

    浦和では腐る選手が多いのに、移籍すると生き生きとプレイ出来るのはなぜなのでしょう?

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    2019年05月20日 13:34

  7. 8 匿名の浦和サポ(IP:210.165.199.218 )

    浦和で怪我していた時、どれだけ浦和の世話になったか、考えてな梅崎。普通浦和をもう少しリスペクトしてな。

    このコメントに返信

    2019年05月21日 00:13

    • 8.1 匿名の浦和サポ(IP:219.100.239.98 )

      『どれだけ浦和の世話になったか』これやくざの師弟関係みたいですね 浦和関係者に失礼だと思います 

      2019年05月22日 12:48

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