コラム

『鈴木大輔、大井のコメントから見える両チームのメンタリティーの差とは?』Jリーグ浦和vs磐田【郡司聡の対戦相手から見た浦和レッズ】

▼磐田の思い通りに進んだ試合展開
3連敗中のジュビロ磐田は、主将の大井健太郎がコイントスに勝ったことでエンドの変更を選択。それは名波浩監督による指示だったという。
「チームとしての流れが悪かったので、変えようと監督からの指示でした。そう言われる時はたいていコイントスで勝てないものですが、ラッキーにもエンドを選ぶことができました」

 

運を引き寄せることに成功した磐田は、アダイウトンを頂点に置く[3-4-2-1]システムを採用。アダイウトン、ロドリゲス、山田大記の前線3枚で浦和のビルドアップにプレッシャーを掛けると、浦和は数的同数になることを嫌い、アンカーの青木拓矢が最終ラインに降りて“4枚回し”を選択していた。浦和戦が怪我からの復帰戦となった大井の目には、戦況が次のように映っていたという。
「攻撃では浦和がボールを取りに来なかったこともありますが、落ち着いて回せていましたし、意図する形でチャンスも作れていたと思います。守備ではしっかりとボールの出どころをケアできていました。またボールを持たれても焦らずに、ボールが入ってくるところにしっかりとプレッシャーを掛けることができていました」

 

90分を通じて、チャンスの数と質で上回っていたのはアウェイの磐田だった。26分、田口泰士のパスを右サイドで受けた山田がゴール前に折り返し、アダイウトンがヒールでゴールを狙った場面を筆頭に、前半だけでアダイウトンは3本のシュートを放ち、田口は後半だけで4本、計5本のフィニッシュに絡んでいる。対する浦和は前半終了間際の45+3分、山中亮輔がグラウンダーの直接FKで磐田ゴールを強襲した。

 

0-0で折り返した後半は、62分の田口による直接FKや、67分と72分にも磐田が決定機を迎えるなど、間違いなく、よりゴールに近づいていたのは、アウェイチームのほうだった。

 

▼勝敗を分けたメンタリティー
しかし、むしろ相手が決定機を仕留められず、拮抗した展開で試合が推移することは、「粘り勝ちを自分たちのベース」(西川周作)としている浦和にとっては、好都合の展開とも言えた。

 

事実、終盤が近づくにつれて、浦和もカウンターからチャンスを創出。終了間際の89分にはカウンターからエヴェルトンのパスに抜け出した山中がシュートではなく、興梠慎三への横パスを選択。懸命に体を投げ出した磐田の守護神・カミンスキーのブロックに阻まれたものの、山中が相手最終ラインの背後を突いた時点で埼スタのボルテージが最高潮に達するほどのビッグチャンスだった。

 

こうして試合は、4分と表示された後半アディショナルタイムへ突入する。5万3,361人が集った埼スタのピッチでホームチームとアウェイチーム、どちらが精神的優位性を持ちながらピッチに立っていたのか。一つのミスが命取りとなるポジションの選手のメンタリティーは、ある意味、コントラストがハッキリとしていた。

 

浦和の鈴木大輔と磐田の大井。二人の言葉を借りれば、こうなる。
「相手はアウェイだし、勝ち点1を持ち帰れば大丈夫みたいな空気感だった。心理的に崩れるとしたらウチのほうが先なのかなと」(浦和・鈴木)
「中でやっている選手の立場ではむしろ磐田ペースだと思っていました。流れが悪い時はなんとか守っての0-0ですが、今日はそうではなくて、うまいこと守れていました。まだ90分が終わらないのかな……という心理状態ではなく、強い気持ちで守れていました」(磐田・大井)

 

5万3,000人を超えるホームの大観衆の中、勝ち点1では終われない浦和と、勝ち点1でも御の字だった磐田では、勝負のアヤにつながりがちな、メンタリティーにほんの小さな差が生じていたのかもしれない。

 

90+3分。左サイドでボールをキープした青木拓矢は、右からアプローチに来た中山仁斗の寄せを嫌い、左へ反転しながらバックパスを選択。しかし、その先にはロドリゲスが待ち構えており、ロドリゲスにバックパスをかっさらわれると、西川の対応も及ばず、痛恨の決勝点を奪われてしまった。試合後、敗戦の責任を背負った青木は、言葉少なにミックスゾーンを後にしている。

 

もちろん、磐田の決勝点は偶然の産物ではない。敵将の名波監督は、浦和のバックパスの質を認めた上で、「なかなかバックパスを食えるタイミングはない」と認識しつつも、パックパスを奪い取ることは狙いの一つとしていたという。終了間際に相手のミスでチャンスが転がり込んできたのも、指揮官の意図を選手たちが忠実に実践した成果でもあった。試合後の会見で名波監督は、「相手のミスが自分たちに転がり込むというゲームは、われわれにはなかなかなかった。そういったミスを呼び込めたのかな」と言って、選手たちに賛辞を送っている。

 

なお、前節のコンサドーレ札幌戦で3連敗を喫した磐田は、浦和戦に向けた準備期間において、名波監督が選手たちの意識を変えるためのアプローチを施していたという。その一端について、右ウイングバックの松本昌也はこう話していた。
「札幌戦が終わったあとに、練習から声を出して、意識を変えようとのことでした。監督も言っていたことですが、いいプレーをしたら褒め合うとか、単純なことだけどやっていこうと。いい時は勝手にいいものですし、悪い時こそマイナスな声が出ることもあります。今日の試合の中では前向きな、ポジティブな声を出すことで、たとえ攻められても精神的に落ち込むことなく、前向きに戦うことができました」

 

キックオフ時のエンド変更を含めて、連敗脱出に執念を見せた磐田のポジティブなメンタリティーが、少なからず勝敗に影響を及ぼした側面は否めない。サッカーはメンタルスポーツーー。浦和にとっては、それを印象付ける、無念の敗北だった。

 

 

蹴球界のマルチロール・郡司聡

編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスに転身。現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測しながら、編集業・ライター業に従事している。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド・刊)。

コメント

  1. 1 匿名の浦和サポ(IP:49.98.160.70 )

    ほんとにメンタル弱い連中だからね。選手のメンタル強けりゃリーグ優勝2回はしてるよ。弱いからことごとく逃していま低迷

    このコメントに返信

    2019年05月05日 12:07

    • 1.1 匿名の浦和サポ(IP:60.121.244.122 )

      今低迷なの?
      今は群雄割拠かと思うのですが。

      2019年05月06日 08:12

  2. 2 匿名の浦和サポ(IP:125.12.46.84 )

    札幌vs神戸観たら、あらためてミシャのすごさを感じるよ。
    見ていて面白かった。
    羨ましいね。

    このコメントに返信

    2019年05月05日 12:22

  3. 3 匿名の浦和サポ(IP:124.39.224.146 )

    磐田も名波の解任が長引いてそんな良い勝ちではない気がするよ笑笑

    このコメントに返信

    2019年05月05日 13:07

  4. 4 匿名の浦和サポ(IP:124.39.224.146 )

    レッズ相手に相手が対策するのなんてセットプレーだけやろ。あとは興梠抑えときゃ点取られないもん

    このコメントに返信

    2019年05月05日 13:07

  5. 5 匿名の浦和サポ(IP:119.104.46.121 )

    メンタルってやっぱり大事だよな。
    2006年に優勝したときは都築、闘莉王なんかが後ろから喝をいれて、中盤の長谷部、啓太もきっちり締めてたし、前線でポンテ、ワシントンが攻撃を牽引して勝とうという姿勢が見られた。
    今のレッズの選手でそこまでの選手は興梠、阿部ちゃんくらいなのでは?

    このコメントに返信

    2019年05月05日 14:02

    • 5.1 匿名の浦和サポ(IP:1.75.251.176 )

      都築が2006年シーズンでスタメン張ってたのは最初の数試合だけで、そのシーズンは山岸がほとんどレギュラーだったかと。
      後ろから渇を入れてってのが、ベンチ含むって話なら別にいいが、イメージだけで意見するのは控えてもらいたい!

      2019年05月05日 14:38

    • 5.2 匿名の浦和サポ(IP:60.121.244.122 )

      リーグは山岸、カップは都築だよね。

      2019年05月06日 08:13

  6. 6 匿名の浦和サポ(IP:106.130.48.30 )

    ニューキャッスルvsリヴァプール戦観たけど面白い!
    バルサに大敗してのリーグ戦。残留も決めて何のプレッシャーもないニューキャッスル。取って取られてのシーソーゲーム。残り時間わずかでFKからのリードする得点。この精神力は凄い!一方のマンチェスターCも上位のトッテナム戦、マンチェスターU戦を乗り切ってチャンピオンズリーグ準決勝アヤックス戦は0-1での敗戦だけどこちらもリーグ戦同様負けられない試合が待っている。両チームの精神力は見事しか言いようがない。こんなギリギリの勝負をしているチームがあるんだよ。うちも甘ったれてないでプロとしての気迫を見せろ!

    このコメントに返信

    2019年05月05日 14:04

  7. 7 匿名の浦和サポ(IP:1.75.251.176 )

    都築が2006年シーズンでスタメン張ってたのは最初の数試合だけで、そのシーズンは山岸がほとんどレギュラーだったかと。
    後ろから渇を入れてってのが、ベンチ含むって話なら別にいいが、イメージだけで意見するのは控えてもらいたい!

    このコメントに返信

    2019年05月05日 14:37

  8. 8 匿名の浦和サポ(IP:175.132.137.183 )

    何故ホームで勝てないのか。
    それはね、近年の埼スタは「浦和選手には試合中にブーイングはしない」という甘い雰囲気があるから。
    つまらないミスや不甲斐ないプレーにはブーイングをそして素晴らしいプレーには惜しみない拍手をするのが本来あるべき姿でそれが選手に喝を入れ戦う気持ちにするのだと思う。
    しかし今の埼スタは良いプレーをしてもが安易なミスや消極的なプレーをしてもサポはただ声を出して応援しているだけで試合中のメリハリが全く無いんだよ。
    それは多く人が嫌う宇賀神がミスをしても笑っていると状況を同じだよ。
    それで試合が終わってからブーイングでしょう。これ無責任だわ。
    試合終了後にブーイングをするならば試合中に静観などせずサポはもっと気持ちを伝えるアクションを起こすべき。
    近年の埼スタの雰囲気はホームの利を活かすほどの雰囲気をサポが作れないのが大きな要因だと感じる。
    時には厳しさも必要!

    このコメントに返信

    2019年05月05日 17:00

  9. 9 匿名の浦和サポ(IP:126.33.107.86 )

    監督クビにする金とスーパー外国人ガチャ引き当てる金とどっちの方がかかる?

    このコメントに返信

    2019年05月05日 17:32

  10. 10 かくばりけんせい(IP:116.64.133.146 )

    直近5年の各チームのGKのバックパスを比較してみてください。断トツ浦和ではありませんか?青木に限りません。宇賀神はボールが足元に来たときから選択肢その一はバックパスです。怖いのです。相手選手が向かってくると。 浦和の名物です。平川、啓太、槙野のバックパス、キーパーからゲームを作るパスサッカーの名前の下に甘えがいつまで続くでしょうか。流石、サポートチームを変えます。だって行ってもつまらない。

    このコメントに返信

    2019年05月05日 19:53

    • 10.1 匿名の浦和サポ(IP:14.8.2.224 )

      それはほんと思うわ。

      2019年05月05日 20:42

    • 10.2 匿名の浦和サポ(IP:1.75.229.68 )

      ミシャの時はキーパーにバックパスすると客席から拍手が起こったけど、今思うと不思議だよな。

      2019年05月05日 21:21

    • 10.3 匿名の浦和サポ(IP:49.106.192.149 )

      キーパーへのパスを拍手するのが通だと思ってる奴が確実に居るよね。
      いつぞやの記事で。
      仕方ないのも解るけど、バックパスにはブーイングの方が攻撃は良くなるのでは?

      2019年05月05日 22:41

  11. 11 匿名の浦和サポ(IP:210.198.188.154 )

    それでも俺たちは浦和レッズだ!

    このコメントに返信

    2019年05月05日 20:14

  12. 12 匿名の浦和サポ(IP:1.66.99.89 )

    健勇、
    タイへ帯同?
    日本で留守番?

    このコメントに返信

    2019年05月05日 20:58

    • 12.1 匿名の浦和サポ(IP:202.214.198.80 )

      オフィシャルにファブリシオっぽい選手が写ってる。ぼやけすぎてて健勇がいるかわからないです。長澤、荻原、興梠、岩波あたりは確認できましたが、、、

      2019年05月05日 22:21

    • 12.2 匿名の浦和サポ(IP:153.162.242.37 )

      因みに、アンドリュー、マウ、マキノ、山中、西川、福島、阿部ちゃん、鈴木、モリ、柴戸、ウガ、青木、武藤、イワダテ、 あと、確信はありませんがエヴェ、汰木っぽい選手もいました。

      2019年05月05日 23:34

  13. 13 匿名の浦和サポ(IP:118.152.136.224 )

    92のナビスコから、我らの街のチーム。
    どんな選手が来ようと、我らの街のチームは変わらない。
    こんな老体が爆心地にいることに、何ら不思議はない。

    このコメントに返信

    2019年05月05日 21:41

  14. 14 匿名の浦和サポ(IP:126.33.75.62 )

    92のナビスコから、パス回しが下手でソワソワしていた記憶がある。26年経っても変わらない。選手は変わっているのに。

    このコメントに返信

    2019年05月05日 22:35

  15. 15 匿名の浦和サポ(IP:202.215.165.133 )

    メンタルが弱いんじゃなくて
    自分らのサッカーに自信がないんだろ
    鈴木の言葉も
    うちの攻撃陣では点は取れないってことだ
    点が取れないのに変えない
    ポンコツ爺さんをクビにしたいとこだが
    結果はそこまでじゃないから違約金が高いかもな
    だったら一年我慢して組長が連れてくるいい外人に金払った方がいいかもね

    このコメントに返信

    2019年05月05日 23:45

  16. 16 匿名の浦和サポ(IP:27.121.13.5 )

    大原の練習ぬるいんかい。
    やっぱ大槻さんが居たほうがいいな。

    このコメントに返信

    2019年05月06日 04:04

  17. 17 匿名の浦和サポ(IP:219.16.6.156 )

    確かに西川のキック精度落ちてきてるのは分かる

    このコメントに返信

    2019年05月06日 08:12

  18. 18 匿名の浦和サポ(IP:60.61.241.164 )

    重心が低いサッカー(バックラインが低いサッカー)で守備重視の割りにFW(興梠、武藤)スピード&単独での突破力が無いのが問題。ミシャの時の様にボール支配時に生きるプレーヤー。
    汰木、マルティノス、ナバウドはスピード&突破力があるけど守備や技術力不足。
    ゴールがないのは、これが原因!

    このコメントに返信

    2019年05月06日 13:06

  19. 19 匿名の浦和サポ(IP:210.142.123.249 )

    相手の様子を見るための意図バックパスならいいんだけど、2人だけで意味なくパス交換を繰り返す事かあるでしょ?あれはやめてほしい。

    このコメントに返信

    2019年05月07日 09:02

  20. 20 匿名の浦和サポ(IP:210.162.50.3 )

    ホンマ、それな!
    前を一切見ずに二人でただただ5~6回横パス交換するの止めて。
    マジむかつく。
    サポの感情を無視したこの無意味な横パス、バックパスのやり取りを、攻撃に変えたら一試合くらい攻撃に時間のを回せるのでは??

    このコメントに返信

    2019年05月07日 17:30

  21. 21 匿名の浦和サポ(IP:210.162.50.3 )

    すみません。
    年間で一試合分くらい攻撃に時間をまわせっるのでは??でした。
    これほど各試合ごとに、無意味なパスが多いということ!

    このコメントに返信

    2019年05月07日 17:35

コメントを書き込む