コラム

開幕の特別感とチームの流れ セットプレーの数は成績のバロメーターに(Jリーグ仙台vs浦和)【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼川崎戦からの流れは仙台戦の振る舞いに影響も
浦和レッズは23日のリーグ開幕戦ベガルタ仙台戦を0-0で引き分け、アウェーゲームでの勝ち点1で今季のリーグ戦をスタートした。もちろん16日のゼロックス・スーパーカップも公式戦であり、シーズンの始まりを感じないわけではなかった。ただし、やはりリーグ戦のスタートはまた別ものだ。その勝ち点は9カ月か10か月後に出るリーグ戦の結果につながり、その得点や失点は得点王などの個人タイトルや、もしかしたら何かの明暗を分ける得失点差につながる。そのイエローカードは、大事な試合での出場停止につながるかもしれない。全てが1試合で完結するスーパーカップとは違うものだ。Jリーグでは全試合で国歌が流れるわけではなく、青空の下での君が代もまた、特別な試合であることを感じさせて、その場にいられる幸福感を与えてくれるものになる。

 

その一方で、チームには流れがある。キャンプでフィジカルの強化に多くの時間を割き、対外試合を1試合だけ、実質的には各選手に30分から60分のプレータイムが与えられただけのもので終えた。そして、ゼロックス杯では川崎フロンターレに0-1という点差以上に圧倒される試合になった。川崎を長年にわたって取材している人たちに聞けば、キャンプ中に5試合のトレーニングマッチを組んだこと以上に、キャンプの過ごし方が「例年以上に上げ気味」ということだったから、仕上げ方の方向性の違いがピッチ上に大きく表れた。

 

とはいえ、そうした試合を終えた後だったから、川崎戦で最も手を焼いたマイボールの安定という部分に必要以上の力を割いてしまった感は否めなかった。柏木陽介は頻繁にエヴェルトンとマウリシオの近くまで下がって組み立てに参加し、相手の1トップ長沢駿の周囲に3対1の状況を作ってボールの安定化を図っていたし、試合後に多くの指摘があったように杉本健勇は中盤まで下がってボールを受けた。そのことで、川崎戦のようにボールを奪っては回収されて、また攻撃を受けるというスパイラルには陥らなかった。反面、攻撃的な部分での減退を招いたのも事実であり、仙台もまた勝ち点3以外は許されないというスタンスで臨んだ感もなかった。両者が後方に必要以上の力を割いたことで、オズワルド・オリヴェイラ監督が試合後に「勝ったかもしれないし、負けたかもしれない試合」と話す、要は内容に対して公平な引き分けに終わった。

 

▼宇賀神vs関口の元浦和対決
その中で、少し目を引いたのは浦和の右サイド宇賀神友弥と仙台の左サイド関口訓充のやり合いだった。知っての通り関口はミハイロ・ペトロヴィッチ監督が指揮していたころ浦和に在籍した選手で、古巣対決であり、完全な元チームメート対決だった。前半には宇賀神が少し足の長いスローインを入れようと助走を取って投げようとした時、前に立っていた関口が足を振り上げる場面があった。そのプレーの流れでボールが高く上がった時、先に落下点に入っていた関口に、宇賀神はドスンと体を当てた。ファウルを取られたが、何もなかったようにして関口に目もくれずに自陣に戻っていく姿を見て、ある種のプロサッカーらしさとでも言える、互いに目の前の相手に負けたくない、なめられるわけにはいかないといった対抗心が垣間見えた。

 

試合後に関口や宇賀神がミックスゾーンに引き上げてきた時、マッチアップについて少し聞いてみた。関口は「浦和にいた時も紅白戦でウガとはずっと対峙したりしていたので」と、当時の記憶がピッチの中にあったことを話してくれた。一方の宇賀神もまた「彼のドリブルは本当に素晴らしいし、やらせないと。厳しくする部分は誰とやっても同じだけど、一緒にやってきた選手とピッチに立てるのは楽しかった」と、そのやり合いの時間を過ごした。仙台とは天皇杯決勝のことがあったので、開幕前から色々とピッチ外の話題もあったけれども、純粋なマッチアップという点で少しの懐かしさと面白さを感じさせてくれた「意地の張り合い」だった。

 

ただ、今この瞬間の浦和に欠けているものという点では、関口と話したことが実情を言い表していたように感じる。それが連動性の中にも「速さ」が必要だという部分だ。

 

「全然違うと思いますよ。ミシャの時のチームは“速い連動”だったんですよ。1トップ・2シャドーのところが良さだったけど、今のサッカーは2トップで違うものになっていると思う。決定的に違うのは連動性の部分で迫力を欠いていることだなと、やってみて感じましたね」

 

▼練習の成果を発揮できる場面を増やせるか
ペトロヴィッチ監督はトレーニングの中で、流れの中での攻撃に多くの時間を割いた。ある種のパターン化があることで、関口の表現する「速い連動」を実現していた部分はある。では、オリヴェイラ監督が多くの時間を割いていることが何かといえば、流れの中での攻撃ではなくセットプレーだ。だから、その流れの中での武器が減退するのは仕方がない。それを補って余りあるレベルに他のことが引き上げられるかどうかだ。

 

では、そのセットプレーをどれほど獲得できたか、練習の成果を発揮する場面をどれだけの回数にできたかという点では、ゼロックス杯のコーナーキックが4回で仙台戦が2回と明らかに物足りなかった。両者の振る舞いやジャッジの傾向から、浦和のファウル18回、仙台のファウル21回とかなり試合はぶつ切りになったが、直接シュートを狙えるような位置、トレーニングで止めて実施しているような位置からのフリーキックが何度もあったわけでもない。

 

そうした意味では、時間をかけて練習してきたことを発揮する場が少ないことが、結果を出しにくくしているとも言えるし、その状況が増えれば得点が期待できるとも言える。ただ、コーナーキックや良い位置でのフリーキックは、基本的に浦和の攻撃が良いところまでいったから得られるものだ。だから、もう少し流れの中での精度、それこそ「速い連動」を繰り返すことにフォーカスした方が、結果的にこれまでの蓄積を生かしやすくなるとも言えるのだろう。そして、個々に目を向ければ大胆なプレー、ゴールライン方向に迫る選択が増えなければ難しい。そうやって獲得するセットプレーの数が増えてくるかどうかは、浦和の成績に対して1つのバロメーターになり得るだろう。

動画:【公式】ハイライト:ベガルタ仙台vs浦和レッズ 明治安田生命J1リーグ 第1節 2019/2/23

※関連リンク
双方ともに「負けたくない」が上回ったか 開幕アウェー勝ち点1の捉え方【轡田哲朗レッズレビュー/J第1節 仙台戦】(浦レポ)

 


轡田哲朗

1981年10月30日生まれ、埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。

 

コメント

  1. 1 匿名の浦和サポ(IP:126.245.65.203 )

    怪我人無しのオリヴェイラがチョイスした
    ベストメンバーを見てみたい

    このコメントに返信

    2019年02月27日 13:19

  2. 2 匿名の浦和サポ(IP:210.142.120.85 )

    必ずしもセットプレー偏重というわけでもないだろう。オリヴェイラも連動を構築しようとしているはず。ミシャの時とは異なる形での速い連動を、今後のトレーニングで、形にしていってもらいたい。

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    2019年02月27日 15:56

  3. 3 匿名の浦和サポ(IP:27.114.60.213 )

    アホみたいな点取られた時が一番ムカつくからな。以前はそれが多すぎた。

    このコメントに返信

    2019年02月27日 18:16

  4. 4 匿名の浦和サポ(IP:49.98.163.127 )

    今夏、マンチェスターシティ 来日
    横浜F・マリノスと対戦
    うちはACLあるから無いでしょう?

    このコメントに返信

    2019年02月27日 19:27

  5. 5 匿名の浦和サポ(IP:175.132.137.183 )

    オリヴェイラは試合をしていけば連動性は身につくと考えているのでは?
    だから連動性の練習に多くの時間を割かず、セットプレーも練習に取り入れているのだと思う。
    それにセットプレーも練習をしなければ点が取れないのはミシャ時代に実証済みでしょう。
    連動して得点してもセットプレーで得点しても同じ1点なんだからセットプレーの練習は必要不可欠だと思うけどね。

    このコメントに返信

    2019年02月27日 19:34

    • 5.1 匿名の浦和サポ(IP:211.15.235.105 )

      セットプレーの練習も連動の練習も必要ということだよ。サッカーには両方とも必要。連動しなければ攻め込めない。攻め込めなければ良い位置でのセットプレーの機会は減る。連動して攻め込んで良い位置でのセットプレーの機会が増えれば、練習してきたセットプレーの威力を発揮させることが出来る。オリヴェイラは、その機会を確実にものにすることが勝利に繋がると考えているから、セットプレーを重視しているのだろう。連動とセットプレーが両輪であることは、オリヴェイラさんなら当たり前に考えているだろうと思う。

      2019年02月27日 22:48

  6. 6 匿名の浦和サポ(IP:106.130.50.103 )

    セットプレーの練習も大切だけどタイミングが合わなければ点は取れない。それに比べて連動性は何度も同じ練習を繰り返して身につくもの。連動性は攻守に必要なんだよ。これが出来るチームは強い。崩れない。
    いまだに連動性がないのが現実だ。だから相手が強いと手も足も出ないんだよ。

    このコメントに返信

    2019年02月27日 19:43

  7. 7 匿名の浦和サポ(IP:126.75.136.214 )

    全然関係ない話だけど、ホームの神戸戦が先行販売だけでほとんど席が無い。
    なんでだ?
    あっても、アッパーの上のほうだけ。

    このコメントに返信

    2019年02月27日 20:26

    • 7.1 匿名の浦和サポ(IP:126.141.240.188 )

      ただ、そのチケットを買った皆さんに
      勘違いして欲しくないのは、
      それは、浦和対神戸のチケットであり、
      ポドルスキーイニエスタビジャ観賞券ではないこと。

      2019年02月27日 21:33

    • 7.2 匿名の浦和サポ(IP:211.15.235.105 )

      チケット転売サイトで沢山売っていたりするからね。転売目的の人っているんじゃないの?

      2019年02月27日 22:51

    • 7.3 匿名の浦和サポ(IP:126.245.0.209 )

      このコメント見なきゃ完全に忘れてた
      ありがとうございます😇

      2019年02月28日 00:49

  8. 8 匿名の浦和サポ(IP:49.98.163.127 )

    土曜日、ホーム開幕戦
    新しいチャントの時
    発煙筒、焚きますか?

    このコメントに返信

    2019年02月27日 21:51

    • 8.1 匿名の浦和サポ(IP:60.41.112.102 )

      この、たどたどしい日本語で連投する方は
      他サポじゃないかと前々から思っているのだがどうだろう。

      2019年02月27日 22:53

  9. 9 匿名の浦和サポ(IP:126.35.86.102 )

    神戸戦は浦和ファンでも神戸ファンでもないミーハー層がかなり居ると思う。転売屋も買い込んでいるだろうし、すぐに完売するだろうと思う。

    このコメントに返信

    2019年02月27日 23:33

    • 9.1 匿名の浦和サポ(IP:223.218.182.6 )

      去年の神戸戦のアウェー自由席上部ほとんど私服だったの忘れられない

      2019年02月28日 03:19

  10. 10 匿名の浦和サポ(IP:126.233.212.55 )

    連動性は捨てたらダメ。両ストッパーが上がりカバーするのも連動。後ろは後ろだけ、前は前だけでやるのは時代遅れ。カバー誰するの?って言う人いますがカバーすら出来ない選手が浦和にいるとでも?連動性という今までのいいところは完全に捨てるようなことはしてほしくないです。

    このコメントに返信

    2019年02月27日 23:42

  11. 11 匿名の浦和サポ(IP:218.33.230.245 )

    「ミシャサッカーを継続し修正すべきところを修正する」とか言いつつ、広島と違って実質的にミシャ時代の蓄積を捨てる決断を下したんだから、今さらミシャ時代の連動性を持ち出されても。
    オリヴェイラのもとで1からのチーム作りは今季が初めて。即効性を求めてまずは流れの中でのハイプレスからのショートカウンターやロングカウンター、引かれた時のセットプレーに磨きをかけて、時間のかかる連動性の構築は後回しになっても仕方ないかな。
    セットプレーを武器にするのなら、ボールロスト時のリスクが少ない両サイドの高い位置で早いサイドチェンジから1対1を作って、もっと積極的な仕掛けが見たいかな。押し込まれた川崎戦はともかく、仙台戦のCK2本はほんとに残念だった。

    このコメントに返信

    2019年02月28日 10:53

  12. 12 匿名の浦和サポ(IP:126.35.147.164 )

    オリベイラは相手を崩しきるようスタイルじゃないよね。まずはしっかり守り、攻撃はそれぞれのポジションで個の力を発揮してしれっと勝つ感じ。相手はやられた感がないけど死んでるみたいな。基本よい選手がいないと勝てないサッカー。でもよい選手が揃えば誰でも勝てるよというのはまた違う。モチベーター型の監督だからタレントの力を発揮させるのもうまい。つまり、レッズには合ってるし期待してる。

    このコメントに返信

    2019年02月28日 16:12

  13. 13 匿名の浦和サポ(IP:210.142.121.67 )

    オリヴェイラが鹿島の時の埼スタでの試合。浦和にさんざん攻めさせておいて、ボールを奪ったらカウンターを発動。それも選手が中央と左右に綺麗に展開して、理詰めのパスワークの、勢いだけでない練られたカウンターでズドン。つまり、カウンターであっても連動していた。今の浦和には、まだそういうところは足りないだろう。オリヴェイラが、今後の浦和にそういう要素を植え付けてくれることを期待する。

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    2019年02月28日 19:07

    • 13.1 匿名の浦和サポ(IP:218.33.230.245 )

      自陣でボールを奪ってからのカウンターのトレーニングはすでに時間をさいて着手してると思うけどな。
      川崎戦ではカウンターの起点でプレスをかわしてスペースへボールを供給するのがまだ課題だったし、仙台戦みたいにボール持たされる展開になってしまえばトレーニングの成果を発揮しようがない。

      2019年03月01日 09:50

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