コラム

『「中の上」で終わったリーグ戦 上げられなかった普通のクオリティー』Jリーグ浦和vs横浜FM【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼あらためて、浦和の戦績を確認する
浦和レッズは2日の横浜F・マリノス戦に0-1で敗れ、7位で今季のリーグ戦を終えることになった。シーズンを通してみれば、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)を制してアジア王者のタイトルを獲得したことは、様々なマイナス面を補うほどのインパクトを与えたかもしれない。しかし、チームにとって根幹になるのが年間を通したリーグ戦であるのは事実であり、昨季に年間で最も多くの勝ち点を取ったチームによるこの結果は、決して今シーズンが上手くいったと言えるものでないことを示している。

試合後に矢島慎也は「下位チームにはしっかり勝ったと思うんです。それはポジティブなことだけど、中位や上位のチームに対して、良い試合をしながらもうちょっとのところで競り負けてばかりだった。悪い試合をしたとしても、セットプレー一発で勝ってしまうような強さを身につけないといけない」と話した。戦績表を見ても、その印象はあまりにも正しいものであることが分かる。リーグ戦が終了した今、確認の意味でその中身を見てみたい。

18チームのJ1リーグを、6チームずつ上位、中位、下位と分けた時に、浦和は中位の中で最も上の順位という見方ができる。そこで、それぞれのグループに対してどのような結果だったのかを見れば、今季の順位があまりにも妥当であることが見えてくる。

上位チームとは12試合を行っているが、1勝1分10敗の勝ち点4という散々な結果と言うしかない結果が残った。そのうち、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の指揮下で1勝6敗、堀孝史監督の指揮下で1分4敗であるから、必ずしもどちらの監督の問題であるとも言い切れない。シンプルに、今季のチームは上位に入るには値しなかったというだけの結果が残っている。

先に下位チームとの戦績を確認すると、12試合で9勝2分け1敗だった。大宮アルディージャに対する1分1敗という成績が非常に勿体ないが、勝ち点29を稼ぎ出したと考えれば悪くないどころか合格点の成績だ。実は、このゾーンから得た勝ち点だけを比較すれば、浦和を上回るのは鹿島アントラーズの勝ち点31だけだ。これは、本来リーグ戦を勝ち抜くためには非常に重要な要素になっておかしくない。過去の浦和を見れば、むしろこういった順位からの取りこぼしが最終的に影響を与えてきたシーズンがあったのだから、今季の戦いの中でポジティブに評価できるのは、この勝てる相手にしっかりと勝利したという部分だ。

中位チームとの10試合では、4勝4分2敗で勝ち点16だった。優勝争いをするためには基本的に試合数の2倍くらいの勝ち点が必要になるから、その8割程度しか取れていない。中位チームを完全に凌駕するだけの強さはないが、その中では上の方にいる。まさに「中の上」という言葉がピッタリくるものだった。

▼良くも悪くもない試合でどれだけ勝てるか
今季は、ACLではあれだけのゲームができるのに、リーグ戦では・・・。という、見方をされて仕方のないシーズンだった。その原因を求めるとするならば、「普通のクオリティー」を上げられなかったことにあるのではないだろうか。

決勝トーナメントに入ってからのACL、特に全てが第2戦をホームで戦うという抽選結果を得たことで、勝利条件がハッキリしてそれに向かって全力で尽くす姿を多くのサポーターに見せてきた。こうしたゲームは少し特別であり、むしろ昨季までは苦手にしていた印象すらある。しかし、スタジアムの空気も相まって持てる力の100%に近いものが発揮できる試合が続いた。そうした状況で、浦和は間違いなく強いチームであると言えた。

問題は、そうした強烈な外圧のない試合だ。ある程度、どのような仕事にも共通するのではないかと思うが、直面するすべての事柄に対して全力でぶつかり、それが発揮できるというのは理想であり、幻想でもあるだろう。手を抜くわけではないが、恐ろしく力が入るわけでもない。そんな「普通」の状態において、今季の浦和は高いレベルを出せなかった。言い方は悪いが、アベレージが低くて一発のあるチームという言い方もできるかもしれない。ACLにその一発を並べて勝ち抜いたのは評価されるべきだが、リーグ戦はアベレージがものを言う。過去数年とは、少し逆の傾向のチームになっていた。

来季に向け、淵田敬三代表は「2019年のACLにJリーグ王者として参戦する」という宣言をした。補強などの動向はこれからになるものの、リーグ戦で優勝し得る陣容が整えられると仮定した上で、実現するためには、「普通」の試合のクオリティーが高いことが絶対に必要だ。そのためには、困った時の武器と言えるものや、大崩れしないための戦術的な共有なども必要になる。それを堀監督はシーズンオフと来季のキャンプの間に構築していかなくてはいけないだろう。

最終戦のマリノス戦、その一つ前の川崎フロンターレ戦も、ものすごく良い試合ではなかったが、悪い試合でもなかった。この「普通」の2試合で連敗したことが、今季のチームを象徴していると言えるのではないだろうか。


※関連リンク

自分を生かす方法を痛感した矢島慎也 積極プレーの理由は深い【轡田哲朗レッズレビュー/明治安田生命Jリーグ第34節横浜戦】(浦レポ)


轡田哲朗

1981年10月30日生まれ、埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。

コメント

  1. 1 匿名(IP:126.152.8.91 )

    アントラーズに負けるパターン。
    フロンターレに負けるパターン。
    マリノスに負けるパターン。
    その典型をそれぞれ見たかんじ。
    こういうの直さないと、また中位でしょ。
    KLMのハマりももうないし、ズラ高木はイマイチ。ラファと興梠に任せて、あとは引くしかないんじゃない。
    で、守備に重きを置いた補強。
    来年優勝するなら、世代交代は、ポジション乗っ取れる若手でないと使えない。
    経験を積ませる、の猶予はない。
    橋岡あたりも、レンタルやむなしでないの?今の槙野マウ阿部遠藤に割り込めないなら。

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    2017年12月05日 11:10

  2. 2 匿名(IP:126.247.194.77 )

    ACLとの並行で中2日、中3日でターンオーバーしてれば、ACLで14試合やってるから、勝ち点20位は取りこぼしてるでしょ。実際に中3日で負けてる試合が6試合と消化試合が2試合あるから。

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    2017年12月05日 11:41

  3. 4 匿名(IP:182.251.242.47 )

    ACLの時ゎ中の選手もカウンターサッカーを割り切れてた印象があるけどJではシステム変更してから距離感が遠くなってるのにポゼッションサッカーが抜けてない印象があると思いました
    今のシステムで攻撃時にミシャサッカーをするのに無理があると感じています

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    2017年12月05日 12:14

  4. 5 匿名(IP:210.148.21.241 )

    シーズンダブルくらったのが鹿島。横浜、川崎、柏の4チームもある。
    ACL王者でこの問題をチャラにしたらツケは来シーズン必ず帰ってくる。

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    2017年12月05日 13:18

  5. 6 匿名(IP:49.106.188.174 )

    今の4-1-4-1システムの場合、ミシャサッカーよりも選手間の距離が遠くなる。
    ミシャサッカーは選手のパスワークで崩していたけど、読まれ始めて苦戦することになった。
    これからは相手を押し込む際にサイドハーフが中に入り中央で連携して崩したり、サイドの空いたスペースにサイドバックが上がるべき。
    カウンターの際には距離感が遠いので個人で運べる選手が必要になる。

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    2017年12月05日 13:19

  6. 7 匿名(IP:126.247.194.77 )

    6
    横浜との開幕戦もACLから中3日、柏戦もターンオーバーして主力温存したし、川崎戦も主力休ませた消化試合、鹿島戦は青木の怪我というアクシデントが無ければ負けなかった。
    ACLを優先してきたから、しょうがないでしょ。

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    2017年12月05日 15:26

  7. 8 匿名(IP:1.75.215.246 )

    2003~2009の6年間で『上昇、ピーク、下降』
    を体験したけど、2017は下降オンリーだったのでは?確かにACLは何とか獲れたけど。
    2018シーズンが過去の体験からも、とてつもなく大事な1年になるのは間違いないね。またACL獲るのに10年かかるのか?それとも10年以上かかるのか?はたまた、短期スパンで2019や2020に返り咲くのか?未来を占う上でも2018シーズンは大事だね!解体しながら再構築。
    難しいミッションを課せられる堀レッズをサポートしなくては!

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    2017年12月05日 17:02

  8. 9 匿名(IP:182.250.253.231 )

    まあ、これが現在地。今年の実力。来年は、キャンプから4バック体制を確立するのが一番大事かと。マウリシオと槙野が軸で良いかと。攻撃は、4141とか4231とか442とか、オプションはいろいろできると思うので。左SB、補強して下さい。

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    2017年12月05日 17:50

  9. 10 匿名(IP:60.46.237.119 )

    ゾーンディフェンスすらろくに指導できない日本人監督の気持ちサッカーはもう十分だろ。なんでスペインやドイツといった欧州先進国の監督を招聘しない、ウチに限らずJクラブのフロントは日本がサッカー後進国であるという認識がないとしか思えない。欧州先進国に学ぼうとする謙虚さが全くない。このままでは欧州先進国の監督を招聘している中国と差がどんどん開くだけだ。

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    2017年12月05日 18:25

  10. 11 匿名(IP:118.0.242.73 )

    来季は武藤と駒井(残ってもらえたら)にすごく期待します!
    ラファを興梠の控えにする位やって欲しいです

    このコメントに返信

    2017年12月05日 18:46

  11. 13 匿名(IP:60.46.237.119 )

    ゼリコは監督に向かない。仮に優れた指導理論を持ってたとしてもマネジメント能力がない。デン・ハーグでの失敗がそれを物語ってる。

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    2017年12月05日 19:05

  12. 14 匿名(IP:60.46.237.119 )

    ACLマネー使ってトゥヘルにオファーしろ。マインツで年俸8600万だったから3億ぐらい出せば可能性はあるだろ。

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    2017年12月05日 19:17

  13. 15 ウラワ(IP:220.213.21.69 )

    今年のJリーグアウォーズ発表
    優秀選手賞に槙野、柏木、ラファ、興梠が
    ベストイレブンに興梠が
    ベストゴール賞に関根が選ばれました

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    2017年12月05日 20:07

  14. 16 匿名(IP:121.110.82.126 )

    珍しくとても的を射た、数字としても納得の出来る分析だと思いました。

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    2017年12月05日 21:34

  15. 17 匿名(IP:153.192.6.27 )

    数字、統計として納得できる記事ではあるけれど、状況を客観視しただけで、原因の分析は書いてないんですよ。

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    2017年12月05日 22:06

  16. 18 匿名(IP:114.162.238.112 )

    去年の最後に鹿島に負けた試合でミシャサッカーは完全に攻略された。ウチが最終ラインでボールを持っているとき連動したプレスでボールを奪いそのままショートカウンターそして点を取る。それができるチームはウチが負けたチーム。堀監督になってから最終ラインからだけの組みたてだけではなくなった。だがその分攻撃力が減った感は否めない。つまり今のシステムでどう攻撃力を上げるかってのが問題もう少しドリブルで崩してもいいと思うけど

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    2017年12月06日 00:05

  17. 19 匿名(IP:27.143.73.181 )

    ACLでは相手にボールを持たれ逆にリーグでは浦和がボールを持つ。この展開の違いと相手のレベルの違いに監督の戦術を含め選手が対応できずリーグ戦では苦戦をしているのでしょう。あと選手のモチベーションからくる慢心ね。リーグ戦では前線からの守備も甘いし点を絶対に取るという気迫が足りない。堀の戦術も引かれた相手に対応する術がないのも大きな要因。来季は戦い方の幅を広げないと中位で終わり下手をしたら掘のシーズン中の解任もあり得るでしょう。

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    2017年12月06日 06:10

  18. 20 匿名(IP:1.75.239.151 )

    19確かにトラップひとつとっても前を向ききれてないんだよね。ゴール方向に向かずにワンタッチのパスなんて、その場しのぎだし、狙われやすい。アルヒラルや川崎はちゃんと誘いのパスを使い分けて相手が食いついたらドリブルやワンツーで剥がす。ドリブルが少ないです。サポートの距離感が遠いです。なんとかしないと。

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    2017年12月06日 09:11

  19. 21 匿名(IP:126.186.161.46 )

    監督がギド、コーチにチキ、ワシントン、鈴木啓太、GKコーチに都築

    このコメントに返信

    2017年12月06日 11:44

  20. 22 匿名(IP:1.75.228.105 )

    ユースから上がってもJ2レンタルだと、所詮J2留まりの選手に育つだけ。層が厚くても後半残り20分位には出してJ1を体感しないと育たない。それをカバーするのもベテランの仕事!

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    2017年12月06日 12:14

  21. 23 べらちゅー(IP:126.186.161.46 )

    来期は俺が中心になってチームを引っ張って行くんでヨロシク❗

    このコメントに返信

    2017年12月06日 16:07

  22. 24 匿名(IP:126.34.26.207 )

    サイドバック補強してね。宇賀神じゃヤバイよ

    このコメントに返信

    2017年12月06日 16:52

  23. 25 匿名(IP:119.224.188.54 )

    淵田と山道がフロントを牛耳ってる限り、浦和は強くなれない

    このコメントに返信

    2017年12月06日 17:13

  24. 26 匿名(IP:126.34.26.207 )

    山道だろうね 一番のガンは!こいつが、いる限りは どーにもならんね。補強もできないし、至福肥やしてるだけだね。なんかあると人のせいにしてるし

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    2017年12月06日 17:18

  25. 27 匿名(IP:126.237.140.48 )

    2007年はACL優勝して、リーグ優勝はやっぱりできなかったけど、2位だったな。。。

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    2017年12月06日 17:57

  26. 28 匿名(IP:126.212.147.241 )

    淵田と山道が牛耳っているというか、実際は自工の傘下的位置付けが変わってないのが問題。
    この二人が辞めてもまた似たり寄ったりの人罪が左遷されくるだけ。今までだってそうだったでしょう。
    金庫番が許さない。ACL優勝賞金、いくらプールするよう指示が出たのかね。

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    2017年12月06日 22:30

  27. 29 匿名(IP:126.212.147.241 )

    億単位の営業利益に対して金庫番が補強を許さない。
    フロント(親会社)の目的は安定した経営(営業粗利の一定額プール)でありタイトルは二の次。
    ある程度の利益が見込めるまでは、騙し騙し行くはず。

    このコメントに返信

    2017年12月06日 22:46

  28. 30 匿名(IP:119.106.105.163 )

    レッズが上位のチームと対戦する時、いつも感じるのがレッズのパスの意図の無さ。行き当たりばったりで緩い。迷いが感じられる。無駄なバックパスも多いので、攻めていてもカットされてピンチに陥る。今年は、特にそういう試合が多かったと思う。

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    2017年12月07日 08:12

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