コラム

『狙われていた武藤。宮本監督の策略をコメントで振り返る』Jリーグ浦和vsG大阪【郡司聡の対戦相手から見た浦和レッズ】

今年より町田ゼルビア、浦和レッズを中心に取材するライター郡司聡さんによる「対戦相手から見た浦和レッズ」というコラムシリーズが浦議でスタート!
第10回はJリーグ浦和vsG大阪戦になります。

 


 

▼今野が気をつけていた選手
“出る杭は打たれる”ということだろうか。

 

前節の鹿島アントラーズ戦で2ゴールを奪い、“ベストバウト”とも言えるパフォーマンスで浦和レッズを勝利に導いていた武藤雄樹について、元日本代表のボランチ・今野泰幸は、試合後にこう言っていた。

 

「調子の良さは知っていましたし、浦和は武藤選手がキーポイントになるかなと思っていました」

 

鹿島戦に続き、武藤自身のパフォーマンスは好調を維持。クサビを受けてのターンやドリブルでボールを運び、相手を剥がすプレーをガンバ大阪戦でも時折披露できていた。0-1で迎えた49分にはマウリシオ・アントニオのクサビを相手に寄せられながらも巧みに長澤和輝へつなぎ、エリア内に進入した長澤のシュートがGK林瑞穂輝に弾かれたところを興梠慎三が押し込むなど、武藤自身は同点ゴールにも絡んでいる。「早い時間帯に追いつかれたし、簡単に点を取られて焦りました」と今野。武藤が絡んだ同点ゴールは、少なからずG大阪の動揺を生んでいた。

 

▼宮本監督の狙い通り
しかし、この同点ゴールを境に、かさにかかって逆転まで持ち込みたかった浦和だったが、むしろG大阪にカウンターを食らう展開が次第に多くなっていく。その原因について、武藤自身はこう語る。

 

「しっかりとブロックを作って、守備をすることはオリヴェイラ・サッカーの基本ではあるのですが、そのあたりが今日はボールを持てる展開でしたし、前からボールを奪いに行ける分、特に後半は前から奪いに行ったので、相手に剥がされてしまうシーンが多かったと思います。また相手はFWの一枚(アデミウソン)がポジションを下げながら、中盤で数的優位を作ってきたことで中盤を制圧されて、球際の勝負もほぼ相手に行く形でした」

 

G大阪を率いる宮本恒靖監督が「守備の甘さもあって難しかった」と評した前半を経て、後半のG大阪は数多くの決定機を作られた前半の局面におけるインテンシティーを見直すことでディフェンス面を修正。特に後半は最終ラインを高く保ち、コンパクトな陣形を築くことでセカンドボールワークでも優位に立っていた。「相手は背後の怖さがあった」と三浦弦太は話したが、背後のケアに多少目を瞑ってでも、ハイラインを保ち、G大阪守備陣はハードディフェンスが実践できる状況を作り出していた。こうして、試合の潮目とも言える、G大阪の勝ち越し点が生まれた。

 

1-1で迎えた62分。岩波拓也の縦パスを受けた武藤に対して、藤春廣輝と今野が猛然とアプローチ。藤春がボールを引っかけて、それを回収した今野が遠藤保仁へ展開し、遠藤が左サイドのファン・ウィジョへフィードを供給する形でカウンターを発動した。そしてそのカウンターはファン・ウィジョンが得意な角度から右足のシュートをブチ込むことで完結している。

 

さらに1-2で迎えた69分、浦和のゴール前からカウンターを仕掛けようとした武藤に対して、今度は藤春と遠藤が強烈なアプローチを行う。遠藤に武藤がボールを奪われると、浦和は右サイドでのG大阪のパスワークから、最後はアデミウソンに痛恨の追加点を決められてしまった。「(後半の2点は)練習してきた守備のハメ方を良い形で出せた」と三浦。鹿島戦の活躍が鮮明に残っている段階での対戦となったことで、G大阪の選手たちは武藤に対して、相当な“アラート状態”であったことも、武藤が2失点に絡む遠因となっていた。

 

こうして2点のビハインドを背負った浦和は、3失点目直後の70分、森脇良太に代えてアンドリュー・ナバウトを投入。森脇が退いて空いたポジションに武藤をスライドさせ、ナバウトと興梠の2トップで反撃を試みた。しかし、用兵は空転。百戦錬磨の今野も相当警戒していた武藤がよりゴールから遠ざかるポジションに移ったことで、今野本人は「楽になった」と正直に吐露した。

 

3-1の快勝で浦和を退けたG大阪の宮本恒靖監督は、試合後の会見で「守備のスイッチを入れて相手ゴールに迫る形は練習でトライしていたもの」と語り、胸を張った。特に後半の2得点は、まさに指揮官の狙っていた形が結実している。この二つの失点シーンに、前節の鹿島戦で最高のパフォーマンスを披露していた武藤が関与していたのは、なんとも皮肉な結果だった。

※過去記事(最新5件)
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蹴球界のマルチロール・郡司聡

30代後半の茶髪編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスに転身。現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測しながら、編集業・ライター業に従事している。

 

コメント

  1. 1 匿名の浦和サポ(IP:49.98.153.106 )

    土曜アウェイ札幌戦、
    向こうがWe are SAPPOROって言ってきたら
    対抗で
    We are REDS We are REDS
    We are We are We are
    We are REDS

    このコメントに返信

    2018年11月07日 01:11

  2. 2 匿名の浦和サポ(IP:123.198.180.133 )

    柏木の位置に武藤を下げても面白そうな気がするけどな〜、2列目から飛び出してきた方が相手もつきにくいだろうし。
    ファブが帰ってきたらぜひとも試してほしい。

    このコメントに返信

    2018年11月07日 06:41

  3. 3 匿名の浦和サポ(IP:182.251.77.47 )

    ガンバはナバウトをわかってないな。来季しっかり借りを返してあげろナバウト!俺は応援し続けるぞ!

    このコメントに返信

    2018年11月07日 07:48

  4. 4 匿名の浦和サポ(IP:1.75.246.167 )

    土曜、出発東京は晴れ
    到着札幌の天気
    曇り雨か…
    晴れてくれ❗

    このコメントに返信

    2018年11月07日 08:31

  5. 5 匿名の浦和サポ(IP:126.194.148.255 )

    天皇杯は全力でやればいいけどリーグはもう来年見据えてオリヴェイラの好きにやらせたら。

    このコメントに返信

    2018年11月07日 08:52

  6. 6 何といったって浦和(IP:49.98.154.156 )

    かなた北国迄ご苦労様、恐れる事何も無いとにかくボールを奪いシュートする事、勝ちに拘り最高の気持ちでお帰りなさい…

    このコメントに返信

    2018年11月07日 08:56

  7. 7 匿名の浦和サポ(IP:219.111.52.127 )

    武藤はやっぱりゴールに近い場所で能力を発揮する選手だな。
    中盤を制するためのFWないしはDFの試合中のスムーズなスライドが行えるかで
    更に1ランク上の試合運びが出来て支配率もあがるんだろうなぁ。

    このコメントに返信

    2018年11月07日 10:37

  8. 8 匿名の浦和サポ(IP:202.212.77.51 )

    来年4−4−2に移行するとして、サイドハーフの候補として現メンバーでは長澤、武藤、萩原、柏木あたりかな?
    どんな補強があるのか楽しみ。

    このコメントに返信

    2018年11月07日 11:44

  9. 9 匿名の浦和サポ(IP:153.154.170.189 )

    うちは442はやらないんじゃね
    サイドが足りないだろう
    今野にマークされちゃ厳しいな
    バージョンアップを期待

    このコメントに返信

    2018年11月07日 18:20