コラム

『異文化衝突だったACL。73歳までにもう一度この光景を見たい』ACL浦和vsアルヒラル【山中伊知郎の素人目線2017】

▼次はいつこの光景を見れるのだろう
私ももうすぐ63歳。仮にあと15年から20年生きられるとしても、また再び、この目でレッズ・アジア制覇の瞬間が見られるかはわからない。たとえ生きていても、もう体が埼玉スタジアムに来られる状態かどうかもわからない。

あるいは、この瞬間が生涯最後かも、なんて、選手たちが勝利の行進をしている間、ちょっと感慨にふけってしまった。

そうなった理由はある。

実は試合日の昼間、大学時代にお世話になった方のお墓参りに行って、昔の仲間たちとも再会してきたのだ。

「オレは真っ先に死ぬのもイヤだし、みんなを見送って最後に死ぬのもイヤだ」

なんて話をして、大いにヒンシュクをかった後、お墓のある西武線練馬から、午後4時すぎに埼玉スタジアムに向かう。

話はとぶが、このお墓参りは上海上港に勝って準決勝勝ち抜けする前から決まっていて、ACL決勝ホームが11月25日夜になるとわかった時、ちょっと慌てた。何しろ、私が年間シートで押さえているのは自由席だから、決勝当日なんて、試合開始直前に行ったって、たぶん座るところがない。

でもって、私は今回、年間シートホルダー優先の自由席チケットは買ったものの家族に譲って、別に指定席のチケットも取ることにした。指定席さえ持ってれば、お墓参りの後、いつ着いても座る席の心配しなくてもいい。

ただREX CLUB経由で買うにしても、当日午前10時になった途端にオーダ―が殺到して、パソコンからちっともつながらないのには弱った。なんとか知り合いに頼んで、スマホ経由にしてもらって、幸運にも正面スタンド側ロアーの席が取れた。

▼トイレの並びからわかる違い
通常、西武線練馬から東浦和までなら、まず池袋に出て、そこから埼京線で武蔵浦和、武蔵野線で乗り換えて東浦和。東浦和からは駅前駐輪所に置いていた自転車で埼スタに行くパターン。それで2時間もあれば確実に着けるはずだった。が、何を血迷ったか、こっちのほうが近いんじゃないのか、と秋津経由で、新秋津から武蔵野線で東浦和に向かうルートを選んでしまったら、これがもう大誤算。秋津に行くまでの西武線が、「非常停止ボタンが押された」だのなんだので、2度3度と緊急停車。もし人身事故でしばらく電車は動きません、なんてことだったらどうしようかと、もう冷や汗もの。

武蔵野線に乗り換えた後も、突然緊急停車されてビビったら、ただ閉まったドアに服が挟まっただけ、でホッとしたこともあった。

緊急停車されるたびに「人身事故とかでこのまま1時間も立ち往生になったら、試合に間に合わない」と、焦りまくり。

ドキドキして体に悪い。池袋経由の方が、もしどこかの線が止まっても代替のルートがあったし、所要時間も少なく済む。明らかに判断ミス。

とはいえ、そう大きな遅延もなく動き出し、どうにか6時くらいには東浦和の駅に着く。

駅前、もっとバスに乗って埼スタに向かうお客さんが多いかと思いきや、さほどの人数ではない。50~60人くらいがいた感じ。きょうの場合は、もうサポーターも気合入ってるんで、すでに行く人達はもっと前に行っちゃってるみたい。

自転車に乗り、所要時間30分あまりで、6時35分に埼スタに到着。たくさん並び過ぎて、自転車の置く場所がなかなか見つからないのと、スタジアムのゲート外のトイレが長蛇の列なのを見て、きょうの盛り上がりを実感。

コンコースに入っても、まだ試合開始30分以上前なのに、トイレに列が出来てる。こんなのも普段はない。

どうせ売り切れているだろう、と半ば諦めつつ、MDPの売り場に行ってみたら、そこもまた長い列。さっそく並んで待つと、係員が、「この後にお並びになっても、買えないかもしれません」と叫び始めた。つまり、ほぼ売り切れ寸前のところでMDPをゲット。いつもより、だいぶ増刷したみたい。

売り場に並んだり、トイレにいってたりしたのもあって、オープニングセレモニーはほとんど見てない。

▼二重人格なDF陣
今年、ロアーの指定席に座るのははじめて。行ってみたら、ゴール裏のすぐ横の前列。

ピッチとは距離が短いのはありがたいものの、きょうなんか、ゴール裏と一緒に最後まで立ち上がって応援するんじゃないかと、やや恐怖感。年取って立ちっぱなしはツラい。

さっそく試合開始直前は、みんな立ち上がってコレオ作りに協力だ。しかし、コレオっていうのは、スタンドで作っている観客にはよく見えない。あとで家に帰ってテレビで見て、ようやく全貌が分かった。

寒くなるかと心配していたものの、さすがに満員のスタンド、ちっとも寒くない。

立ち上がったままかとも危惧していたのが、試合が始まったら、みんな座りだして一安心。

ちゃんとルールはわかっていたのだ。

さーて、試合開始だ。

いや、まったく「ACLのレッズ」は、「リーグ戦のレッズ」とはまったく別。「ジキルとハイド」じゃないが、二重人格だ。

特にDFがシツコい。相手のチャンスになっても、出来るだけ複数で囲い込んだりして、

小まめに、そのチャンスの芽をつぶす。敵の右サイドの攻撃に対応できるか、なんていわれていたが、よく抑えてる。なぜこれがリーグ戦ではできずにボコボコ点を入れられていたのだろう。

ボルテージの強弱というのは、ここまで一人一人の人間の能力を変えてしまうのだなあ、という実験サンプルにしたいくらい。

中でも槙野の「二重人格」が際立ってた。この半分でもリーグ戦でやってくれれば、だった。

正直、攻撃力でいったら、誰がみてもアルヒラルの方が1枚上手だ。単純にカウンター狙いではなく、ちゃんとパスも回るし、一対一になっても強いし。いわゆるセカンドボールを取るのも早いし、スピードはあるし。

レッズのパスもだいぶインターセプトで奪われていた。もう前半10分くらいで、1点は取られるのは覚悟した。

しかし、最後までDFの集中が切れなかった。やるときはやるんだな。

▼途中まで寝ていたラファ
守りに比べると、攻めの方は、前半、さほど目立った動きはなし。長澤が孤軍奮闘していた印象だ。

もう私にとっても、この選手は突然噴火で島が出来た西之島みたいなイメージだ。
ある日、気が付いたら大きな島ができてた、みたいな。ホームでの上海上港戦、はじめてちゃんと見て、こんなによく動いて、いいポジションからシュートも狙える選手がいたんだ、とビッ
クリした。

ずっと25年レッズを見ていて、こんな選手は初めてだったと思う。たとえば昔、初めて岡野を見た時、そのスピードには驚いたものの、自分がキープしているボールでつまずくようなドジな一面があって、「完成された選手」には程遠かった。

その点で、長澤はあまり欠陥の見当たらない「完成された選手」なのだ。ああいう選手と出会えるのも、観客の楽しみではある。

最後に点を決めたラファエル・シルバに関していえば、前半は、わりかし眠っていた。前半突っ走ると、後半にガス欠になることもあるので、抑えていたのかもしれない。とにかくそんなに目立たなかった。

後半になってギアをチェンジしたものの、よく足がもつれて、コケまくっていた。
これは、きょうはちょっと期待できないかな、とガッカリしていたら後半の後半になって、俄然、歯車がかみ合いだし、時間的に間に合わないギリギリのところで爆発してくれた。

テレビのスポーツニュースでは、まるで彼はずっとフル回転みたいだったが、ありゃ違う。

途中まで寝てた。

心配していた宇賀神も、ボロはださなかったし、興梠や武藤も、「必死感」が伝わってくる動きだった。阿部勇樹も、まあなんというか、いつも通り、チームに穴ボコがあきそうなところに行っちゃその穴をうめてくる感の動きは見事だった。それと柏木の、感性に任せて上へ下へと行き来する動きが、いいハーモニーを醸し出していた。

ひとつのチームがいい流れで回っているときって、こうなんだな、と実感させられる。

一瞬、スキが出来ても、誰かしらが、それを埋めていって、結局、しっかりと固まっていく。

ACLではずっと、それが出来ていた。

▼やっぱりもう一度ACLに出たい
だが、後半30分を過ぎても、たとえ相手が一人減っても、このまま無得点で押さえられるとはまったく楽観できなかった。

強いよ、向こうは。Jリーグであんなに強いチームはない。唯一、見ていてわかるのは、最後に決められる選手が見当たらないこと。エースストライカーが途中交代してくれたおかげてだいぶ助かった。

アルヒラルだけじゃない。上海上港も済州も、みんな、強かった。よくこれらのチームと戦って勝ち抜いてきたものだ、と改めて驚かされる。

実力的にはベスト8くらいで負けても不思議じゃなかった。運と、ホームでのサポーターの後押しで力は10割増しくらいいってる。

試合終了の瞬間は、嬉しかったというより、ホッとしたかな。どうにか、まだ60代前半で、レッズACL優勝の時を再び迎えられたことで。前回が10年前。としたら、この次の3度目は10年後で、私が73になる年。年齢的には、まだ埼スタに来られそうだとしても、今のアジアの状況を見ていたら、そんなに甘いものではないのはよくわかる。

中国ももっと強いチームが出てきそうだし、韓国だって侮れない。オーストラリアもいるし、東南アジアもどんどん強くなっている。私も先日、バンコク行った時、地元でのムアントンFCあたりの人気の高さを知って、こりゃそのうち日本もやられかねない、と本気で心配になった。その上、西アジアもあるんだから。

こりゃアジア制覇は並大抵のもんじゃない。

試合後のセレモニー、アルヒラルの選手が、首にかけられたメダルを悔し紛れにすぐにはずしている姿を見て、勝利の実感があった。サッカー協会の田嶋会長が、メダルを渡しつつ、レッズの選手に嬉しそうに抱き着いている姿にも感じた。

女性の英語での場内放送は、何言ってるかわからなかったが、勝利の余韻であまり気にもならなかった。

だが、セレモニーも終わり、表に出て、自転車に乗るころ、急激に寒さを感じる。

人間の体って、こんな具合に出来てるのか、と改めて思った。アドレナリンが上昇してる時って、ぜんぜん寒さを感じないのに、一歩そこから出て冷静になると、現実が迫ってくるのだ。

「あ、こんなに気温低かったのか・・・」

なんて。

と同時に、来年はレッズがACLに出られない寂しさもこみあげてきた。

ホントに今年はリーグ戦よりもACLで盛り上がったもんなぁ。他国の、まったく異質のチームと戦う面白みというのは、日本チーム同士で戦うリーグ戦とはぜんぜん違うエキサイトがある。中には、突然控え選手からエルボーをくらうようなムチャクチャなシーンもあったものの、これも広い意味でとらえれば「異文化交流(いや、異文化衝突か?)」なのだ。

何が起きるかわからないハラハラドキドキ感は、ACLならではであった。
そうか、来年はこれがないのか・・・。やはり、寂しい。

まずはクラブワールドカップ。そして、来年は、もちろん優勝目標だが、必ずACLの出場が出来る順位を確保してほしい。

リーグ戦の残り2試合、「消化試合」ではなくて、レアルマドリードを倒せるチームにするための「準備試合」としてとらえたい。

それと平日の川崎戦、最低でも3万、できれば4万は集まってほしいな。

寒いんで、家に戻って、煮込みラーメンを食いつつ、夜中はスポーツニュースのハシゴ。

事前のACL関連のコーナーはほとんどなかったものの、きょうはどこでもわりに長時間やってた。だったら、試合前ももっと報道しろよ、とすこし憤慨。

地上波ナマでACL決勝の中継をやらなかった日本テレビにはムチャクチャ憤慨。多くの人も感じたように、あの局はとっととサッカーから手を引くべきだと思う。

動画:【公式】ハイライト:浦和レッズvsアルヒラル AFCチャンピオンズリーグ 決勝 第2戦 2017/11/25


山中伊知郎

昭和29年生まれ。93年のJリーグ開幕時から、シーズンチケットでレッズを見続けている。職業はライター。山中企画という会社を作って、自分が制作費を投下して本も出版している。山中企画の4月新刊が『目が見えない演歌歌手』。生まれつきの全盲で、『NHKのど自慢』のグランドチャンピオンになったのをキッカケにプロ入りして今年10周年の演歌歌手・清水博正さんの本だ。 売れ行き好調で、5月に増刷。6月にもまた、作詞家・たきのえいじ氏の『生かされて』と、オタク業界の重鎮・高橋信之氏の『オタク稼業秘伝の書! デラックス・ア・ゴーゴー!』を出した。『生かされて』は、数多くのたきの氏のファンの支援もあり、これも増刷。11月下旬には、東洋医学と漢方薬に関する『長崎発★東洋医学医師 田中保郎の挑戦は続く! 「病名医療」で漢方薬は使うな!?』を出版した。ずっと続けているお笑いライブ『ちょっと昭和なヤングたち』(MC・イワイガワ)の69回目は来年1月22日。場所はお江戸上野広小路亭。

コメント

  1. 1 匿名(IP:121.110.95.87 )

    そっか今年のACLのスローガン
    絶対突破だったんだ

    このコメントに返信

    2017年11月27日 22:54

  2. 2 匿名(IP:114.177.37.86 )

    >地上波ナマでACL決勝の中継をやらなかった日本テレビにはムチャクチャ憤慨。多くの人も感じたように、あの局はとっととサッカーから手を引くべきだと思う。
    激しく同意。日テレはCWCからも手を引いてくれよ。

    このコメントに返信

    2017年11月27日 23:03

  3. 3 匿名(IP:49.98.146.8 )

    相変わらず、どーでもいい内容だが、最後の一行には全面的に同意。

    このコメントに返信

    2017年11月27日 23:07

  4. 4 匿名(IP:126.253.98.137 )

    埼スタの雰囲気最高でした!
    あの雰囲気の中で、力出せる相手はいないですよね!
    来年はホーム無敗で行ける様に、後押ししていきましょう!

    このコメントに返信

    2017年11月27日 23:11

  5. 5 匿名(IP:180.28.31.76 )

    じいさん、これからも長生きして浦和を見守ってくれよな!

    このコメントに返信

    2017年11月27日 23:26

  6. 6 匿名(IP:1.75.242.156 )

    いつも自転車往復は凄いことだけど、武蔵野線には慣れて無いみたい。

    このコメントに返信

    2017年11月27日 23:37

  7. 7 匿名(IP:126.94.246.7 )

    乱脈杜撰で支離滅裂なことも多いこのコラムだが、最後のパラグラフは正しい。
    他サポが、浦和頑張れとも、浦和負けろとも思ってくれて構わない。
    だが、世界基準のサッカーを広めるんだろ、だからCWCもあるのだろう。
    だったら、最後までやれよ。
    サッカー見る人増やす気がないなら、放映権持つな。

    このコメントに返信

    2017年11月27日 23:49

  8. 8 匿名(IP:126.94.246.7 )

    でだ、この駄文、これからも書き続けてくれ。
    73?いーや83まで。

    このコメントに返信

    2017年11月27日 23:51

  9. 9 匿名(IP:106.156.160.78 )

    腹たった事、BSも阿部ちゃんがトロフィー掲げるまでやれよ!あと関係ねーけどNHK実況、久保がゴールしたとか嘘言ってんじゃねーよ、

    このコメントに返信

    2017年11月28日 00:09

  10. 11 匿名(IP:202.3.154.223 )

    ”とっととサッカーから手を引くべき”は言い過ぎかな。
    日本サッカー不毛の時代から、トヨタカップ・高校選手権・全日本少年サッカー大会など、日テレには多々世話になってきた。
    しかし、そんな局だからこそACLの価値はよく解って然るべき。今回の浅慮はとても残念。

    このコメントに返信

    2017年11月28日 01:27

  11. 12 匿名(IP:211.14.61.70 )

    一番の理由は視聴率。いくら他サポの一部も日本頑張れといったところで代表戦ではなからとれないんだよ。

    このコメントに返信

    2017年11月28日 06:04

  12. 13 匿名(IP:124.140.212.89 )

    やつぱ
    ニツテレは 野球 この試合は NHK 生放送 で!

    このコメントに返信

    2017年11月28日 09:28

  13. 14 匿名(IP:1.66.99.91 )

    浦和とレアルが当たらない限り、地上波ライブは無いでしょうね。CWC初戦、開催国枠をナメたら痛い目に遭いますよ。

    このコメントに返信

    2017年11月28日 09:49

  14. 15 匿名(IP:182.250.250.200 )

    上田のフリに応えた槙野はさりげなく日テレを批判していたね。上田はカンとアンテナがいいから槙野の真意を感じてアタフタしてたようにも見えた。

    このコメントに返信

    2017年11月28日 12:31

  15. 16 匿名(IP:1.75.242.156 )

    巨人戦も放送しない御時世だもんね。しょうがないでしょ。

    このコメントに返信

    2017年11月28日 19:29

  16. 18 匿名(IP:222.224.223.25 )

    鹿島もなんとか予選突破して決勝トーナメントでは一回戦敗退してるくらい、アジアのレベルは高い。
    韓国テコンドーサッカー、チャイナマネー、オイルマネーを相手に本当によく勝てた。
    本当にアジア王者を誇りに思う。

    このコメントに返信

    2017年11月29日 15:30

  17. 19 匿名(IP:61.245.39.132 )

    なんつーか、この人が無邪気に喜んでるのが腹立つ

    このコメントに返信

    2017年11月30日 19:01

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