コラム

『興梠、武藤をイライラさせた柏の守備プランとは?』Jリーグ浦和vs柏【郡司聡の対戦相手から見た浦和レッズ】

今年より町田ゼルビア、浦和レッズを中心に取材するライター郡司聡さんによる「対戦相手から見た浦和レッズ」というコラムシリーズが浦議でスタート!
第7回はJリーグ浦和vs柏戦になります。

 


▼明確だった守備での狙い
台風24号の影響で試合開催も危ぶまれていたJ1第28節の柏レイソル戦は、当初の予定どおり14時に埼玉スタジアムでキックオフされた。敵地に乗り込んできた柏はオーソドックスな[4-4-2]を採用し、チーム全体がスライドしながらボールサイドにアプローチする戦い方で浦和レッズに挑んできた。

 

先制したのはアウェイの柏。0-0で迎えた35分、右サイドで青木拓矢が大谷秀和にパスをカットされると、そこからカウンターを食らい、最後は江坂任のシュート性のボールをオルンガに押し込まれてしまった。

 

「全体のスライドを早くして、取るべき位置でボールを取れたことは良かった」と柏の鈴木大輔。「奪ってショートカウンターを狙っていた」(大谷)柏のプランに、浦和はまんまとハマってしまった。試合開始から柏の最終ラインは、武藤雄樹と興梠慎三の2トップが柏木陽介からの一発のパスで背後を突く形を警戒していたという。たしかにオリヴェイラ体制の浦和は、背後への一発のパスでゴールを陥れることを一つのパターンとしている。浦和のそうした狙いを察知していた鈴木がこう振り返る。

 

「以前の浦和ならば、たしかにコンビネーションで崩す形はありましたが、今日であれば、柏木選手がボールを持てば、裏を狙ってきました。間でボールを受けられても、裏を突かれないポジションを取っておいたほうが、相手は嫌だったと思います。試合をやっている中でも浦和の2トップが裏を狙えず、イライラしていることが伝わってきましたし、『2トップが後ろに下がって、ゲームを作られる分にはいいよ』と話していたので、プランはある程度悪くなかったのかなと」

 

元キャプテンの大谷やスペイン帰りの鈴木が“ピッチ上の監督”と化したような立場で戦い方を定めていた柏は、背後への警戒以外にも、浦和攻略の網を張り巡らせていた。3バックでビルドアップしてくる浦和に対しては、「ウチのサイドハーフがいつCBにプレッシャーをかけに行くのか。そこがわりとうまくハマっていた」(鈴木)。しかし、2連勝中の浦和は頑なに一つの戦い方に縛られてはいない。背後を突けないのであれば、別のアプローチでゴールへの道筋を探ればいい。興梠がこう振り返る。

 

「相手も研究して引いていたので、裏を狙うことも警戒されていました。たしかにチャンスはなかったですが、その分落ちて組み立てに参加することで2列目の選手が飛び出していく形を作れるのかなと思っていました」

 

背後が警戒されていると察知した興梠は、ポジションを下げて組み立てに参加することで攻撃の糸口を探ろうとしていた。自分が空けたスペースには、3ボランチの青木や柏木、長澤和輝が飛び出す形でアタッキングエリアに侵略していく。こうした“ボディーブロー”が効いたシーンが、38分の同点ゴールの場面である。

 

右サイドで橋岡大樹がポジションを落としていた興梠に縦パスを入れると、興梠が右サイドの武藤へ展開。その瞬間、長澤がアタッキングエリアに侵略し、武藤がクロスボールをその長澤に供給すると、そのボールに対して柏の3選手がアプローチする中、柏DFに当たったルーズボールが長澤の下に転がってきた。最後は長澤が冷静に柏ゴールを射抜いている。

 

ポジションを下げて組み立てに参加した興梠、アタッキングエリアにはボランチの位置から飛び出した長澤が走り込む。柏の大谷は「1失点目は人数もいた」と失点シーンの対応を悔いていたが、追いついた浦和にとっては、狙いどおりの形だった。

 

さらに同点直後の41分。パク・ジョンスのビルドアップを興梠が引っ掛けて生じたルーズボールの展開から、武藤、興梠とつなぎ、最後は興梠が巧みな左足のループシュートで逆転に成功する。序盤からどこか攻めあぐねていた浦和だったが、狙いどおりの形と相手のミスを的確に突く狡猾さであっさりと逆転した。

 

▼興梠ゴールを振り返る
しかし、残留争いの渦中にある柏は簡単には引き下がらなかった。2-1で迎えた60分、左サイドからクリスティアーノにクロスボールを入れられると、浦和DFのポジションの間隙を縫った瀬川にヘディングシュートを決められてしまった。「練習していた中でやられてしまった」と柏木。しかし、たとえタイスコアに持ち込まれても、この日の浦和には“突き放す力”があった。

 

終盤の81分、浦和の右サイドでクリスティアーノが横パスを味方に当てて、ボールロスト。そのルーズボールを拾った李忠成が中央の阿部勇樹に展開し、右サイドから左サイドへボールが移行する中で左サイドから宇賀神友弥がクロスボールを入れた。しかし、宇賀神のクロスが精度を欠き、右サイドに流れると、すかさずルーズボールを拾った武藤がゴール前の興梠に再びクロスボールを供給。フリーで待っていた興梠がダイレクトで押し込み、勝負を決めた。

 

決勝点のシーンについて、柏木は「ゴール前に人数をかける形を作れていたからゴールにつながった」と振り返れば、その一方でゴールを奪われた柏の鈴木は「人数は足りていたから対応はできた」と失点シーンを悔いていた。相手のミスを突き、“勝負所”を見極めて一気にゴールを陥れる。3連勝達成となった浦和の柏木は、連勝中のチームの原動力をこう語る。

 

「試合の流れの中でみんなが感じ合えてサッカーをできていることが、3連勝をできている要因だと思う」

 

柏を中盤の底で引っ張った大谷は「下位にいるチームは、ミスが失点に直結することが非常に多い」と試合後に振り返っている。敗れた柏にとっては、ミス絡みの失点が多く、残留争いを強いられているチームが陥りやすい“負の連鎖”が悪循環を生んでいる感は否めない。しかし、浦和の立場に立てば、ゴールシーンのバックグラウンドには、それだけの理由がある。

 

序盤は相手の策略にハマっても、さまざまなアプローチで相手を攻略する道筋を探し出す。もちろん、2失点を喫している反省点はある。それでも、相手のミスを確実にゴールに結びつける狡猾さを含めて、シーズン終盤の浦和は、勝つための最適解を見い出す“柔軟性”を身に付けつつあるのかもしれない。

 

※過去記事
・『甲府選手のコメントから見えてくる浦和レッズの強さと弱さ』ルヴァン杯 浦和vs甲府
『名古屋の選手達が「怖い」と言った攻撃の形とは?』Jリーグ浦和vs名古屋
『谷口が「強さを感じた」と認める浦和のストロングポイントとは?』Jリーグ浦和vs川崎
『前半多くのチャンスを作った磐田。ハーフタイムで的確な修正をした浦和。その要因とは?』Jリーグ浦和vs磐田
『仲川にやられ続けていた宇賀神を救ったピッチでの助け合い』Jリーグ横浜FMvs浦和
『ポドルスキが語る。大量失点の理由はどこにあったのか?』Jリーグ浦和vs神戸

追伸>内容を一部修正しました。


蹴球界のマルチロール・郡司聡

30代後半の茶髪編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスに転身。現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測しながら、編集業・ライター業に従事している。

コメント

  1. 2 匿名の浦和サポ(IP:219.127.83.34 )

    慎三、武藤
    アウェイ仙台戦
    ゴール頼むぞ
    台風の進路が気になる

    このコメントに返信

    2018年10月04日 09:48

  2. 3 匿名の浦和サポ(IP:49.98.146.5 )

    それよに2失点目よ。あーゆー気を抜いたプレーやめてくださいを

    このコメントに返信

    2018年10月04日 10:18

    • 3.1 匿名の浦和サポ(IP:123.230.118.50 )

      柏木曰く「練習していた中でやられてしまった」らしいから、サイドからのクロスは練習中でも対策してたんだろうね。神戸・柏戦は相手ミスもあって複数得点できたけど、上位チームはそう簡単にミスはしないだろうし安易な失点は命取りになりそう。
      興梠復調やナバウト復帰でファブリシオの穴埋めもなんとか目処が立った気もするし、本気でACL圏を目指すなら、1失点目みたいなカウンター対策も含めて守備をもう一度しっかり見直してほしい。

      2018年10月04日 11:09

    • 3.2 匿名の浦和サポ(IP:49.98.128.133 )

      サイドからのクロスもそうだけど
      スローインなどリスタートからの対応を練習してたんじゃないかな?まあ、しかしスローした瞬間見てない選手が何人かいたし、目を切るなんてありえない。マウリシオも、細やかなラインコントロール出来ればね。スローインでマイナスにボール入ったんだから、ライン上げれたよな?

      2018年10月04日 12:34

  3. 4 匿名の浦和サポ(IP:49.98.129.62 )

    ユアテックチケット、新幹線往復乗車券確保済み。
    結構金かかるんだから、必ず勝て❗

    このコメントに返信

    2018年10月04日 10:38

  4. 5 匿名の浦和サポ(IP:218.222.48.127 )

    細かいことだけど「侵略」って言葉の使い方とか「簡単には食い下がらなかった」とかたまに日本語おかしいですよこの記事

    このコメントに返信

    2018年10月04日 12:34

  5. 6 匿名の浦和サポ(IP:49.98.153.188 )

    槙野智章、代表選出おめでとうございます
    遠藤航、原口元気 代表選出おめでとうございます
    ウルグアイ戦@埼スタ、参戦じゃなく観戦に行きます
    久しぶり日本代表戦生観戦

    このコメントに返信

    2018年10月04日 14:23

    • 6.1 匿名の浦和サポ(IP:110.163.216.13 )

      浅野より久保だろう。

      2018年10月04日 14:39

  6. 7 匿名の浦和サポ(IP:106.171.71.1 )

    最近好調なレッズから槙野以外にも何人か選ばれるかなと思ったけど、やはり海外組に席を取られてしまうね…

    このコメントに返信

    2018年10月04日 14:59

  7. 8 匿名の浦和サポ(IP:126.212.133.5 )

    柏の守備に、イライラしてるようでは、鹿島からは得点できない。
    浦和戦で、いつも得点してたキム崎が居ないのは、ラッキーだね。

    このコメントに返信

    2018年10月04日 15:22

    • 8.1 匿名の浦和サポ(IP:106.132.132.200 )

      西や土居がいるだろう、去年の天皇杯を忘れるな‼️

      2018年10月04日 20:16

  8. 9 匿名の浦和サポ(IP:49.98.153.188 )

    ウルグアイ戦@埼スタ
    観戦に行く
    スアレス来るの?

    このコメントに返信

    2018年10月04日 16:00

  9. 10 匿名の浦和サポ(IP:126.21.148.252 )

    カウンターからの失点は仕方ない部分もあるのかな〜。
    ある程度リスクを負わないと点取れない感じするし。

    でも柏戦の1失点目は、最初のパサーをアフターでも良いから柏木に潰してほしかったな〜。
    日本の審判ならカード出るレベルで潰せば、相手ボールでもゲーム止めてくれる可能性が高いし。

    このコメントに返信

    2018年10月05日 11:51