コラム

『ポドルスキが語る。大量失点の理由はどこにあったのか?』Jリーグ浦和vs神戸【郡司聡の対戦相手から見た浦和レッズ】

今年より町田ゼルビア、浦和レッズを中心に取材するライター郡司聡さんによる「対戦相手から見た浦和レッズ」というコラムシリーズが浦議でスタート!
第6回はJリーグ浦和vs神戸戦になります。

 


 

▼準備不足だった神戸
これまでチームを率いていた吉田孝行監督が退任し、ヴィッセル神戸は新たにファン・マヌエル・リージョ監督の就任を発表した。ところが、リージョ監督本人は就労ビザの関係で指揮を執ることができず、この日の浦和レッズ戦は林健太郎コーチが暫定的に指揮を執った。浦和戦を迎えるにあたって、林暫定監督はシステムを従来の[4-3-3]から[3-5-2]にシフトチェンジ。中盤中央のポジションを務めることが多い三田啓貴を左ウイングバックに起用するなど、“林色”を多少なりとも打ち出したメンバー編成だった。

 

アンカーのポジションに入った藤田直之がチームの戦い方のプランをこう明かした。

 

「ボールをしっかりと握って、仮にボールを奪われたらしっかりとボールを奪い返すことを考えていました」

 

神戸の戦い方のベースはポゼッション。アタッキングエリアで貴重な仕事を果たせるイニエスタが負傷で欠場し、攻撃面の構築はルーカス・ポドルスキが担ったが、2トップにはウェリトンと長沢駿が並び、多少なりとも2トップの高さをシンプルに生かす意図があったかのように思われた。しかし、チームのプランは違ったようだ。さらに藤田が続ける。

 

「後ろからつないで2トップの高さを生かすというよりも、相手の5バックのワイドが攻め上がれば、そこのサイドが空くので、(2トップが)そのスペースに流れてキープする意図はありましたし、相手のワイドがプレスに来たところのギャップを突くことを_イメージしていました」

 

しかし、3バックのトレーニングを積んだ期間は4日程度。当然、ディーテールまで突き詰める時間はなく、3バックを中心にビルドアップしていく段階までしか練習できずに浦和戦に臨んだことで「アタッキングエリアに入ってから、どうやってゴールまでアプローチするかは着手できていなかった」(藤田)。攻守におけるポジショニングも整理されておらず、浦和にとっては、自由を謳歌できるスペースを与えられているようなものだった。

 

こうした隙だらけの神戸に対して、序盤こそ決定機を作れなかったが、浦和がジワジワと神戸を追い込んでいく。19分には柏木陽介のFKから槙野智章がヘディングで神戸ゴールに肉薄すると、23分に柏木のクロスボールを相手DFがクリアし、そのルーズボールを拾った長澤和輝が青木拓矢につなぎ、最後は青木が右足のミドルシュートを決めて、浦和が先制した。なお、青木の先制点は、右CB・渡辺博文によるパスミスが発端となっていた。

 

満員の観衆が作り出すホームの雰囲気の後押しを受けた浦和は、先制したあとも攻勢を緩めず、オズワルド・オリヴェイラ体制ではなかなか見られなかったワンタッチプレーやコンビネーションプレーを連発。「試合が進むにつれて全体が間延びし、プレスがハマらず遅れてボールを取りに行くことでカウンターを食らう場面があった」と神戸の藤田が振り返ったように、神戸にとっては思うに任せない時間帯が続いた。そして42分には柏木の縦パスに興梠慎三が反応し、チーム2点目を奪取。アシスト役の柏木は「本当に気持ちがいいアシストだった」とご満悦に振り返った。

 

▼浦和にとって相性が良い相手
2-0は危険なスコアとはいえ、この日の神戸が相手では安パイの部類に入る点差だったことは否めない。後半開始直後の53分、橋岡大樹によるシュート性のクロスボールが相手に当たり、一度高橋峻希がそのルーズボールを無難に処理したかに見えたが、エリア内で高橋が痛恨のパスミス。そのボールが武藤雄樹への格好のパスとなり、最後は武藤がGKキム・スンギュに当てながらもループシュートを流し込む。

 

3点を追う神戸は失点直後の54分、長沢に代えて、古橋亨梧を投入したことをきっかけに[4-2-3-1]へシフト。しかし、システム変更でテコ入れを施した神戸は、セットプレーでしかチャンスらしいチャンスを作れず。76分には長澤和輝に決定的な4点目を奪われて、神戸は万事休した。

 

キャプテンマークを巻き、孤軍奮闘したポドルスキは、0-4での大敗を喫した試合後、ミックスゾーンでこう言い放った。

 

「ミスをすれば失点につながるのは、サッカーでは起こり得ること。ミスが多かったことでこの結果が出た。0-4での敗戦はシステムとか、ボールにあまり空気が入っていなかったとか、芝生が長かったとか、言い訳をできることではない」

 

ベースとなるポゼッションスタイルは変えずに、システム変更など、林暫定監督は“突貫工事”でチーム作りを進めた。しかし、その影響は計り知れず、浦和にみすみす自由を謳歌されるスペースを与えることにつながった。むしろ、オリヴェイラ体制のレッズは、ボール支配率の高いチームと対戦したほうが、カウンタースタイルにハメやすい。自ら相手が得意とする土俵に潜り込み、チームが機能不全を起こしていた神戸は、スコア以上の完敗を喫した。少なくとも、この日の神戸は、5万5,000人の観衆を味方につけた浦和の敵ではなかった。

 

※過去記事
・『甲府選手のコメントから見えてくる浦和レッズの強さと弱さ』ルヴァン杯 浦和vs甲府
『名古屋の選手達が「怖い」と言った攻撃の形とは?』Jリーグ浦和vs名古屋
『谷口が「強さを感じた」と認める浦和のストロングポイントとは?』Jリーグ浦和vs川崎
『前半多くのチャンスを作った磐田。ハーフタイムで的確な修正をした浦和。その要因とは?』Jリーグ浦和vs磐田
『仲川にやられ続けていた宇賀神を救ったピッチでの助け合い』Jリーグ横浜FMvs浦和

 


蹴球界のマルチロール・郡司聡

30代後半の茶髪編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスに転身。現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測しながら、編集業・ライター業に従事している。

コメント

  1. 1 匿名の浦和サポ(IP:1.75.198.137 )

    ポドルスキって走行距離が約8.5Kmってメッシ並みに走らないよね。
    しかも浦和戦では中盤で起用されながらも8.5Kmってサボり過ぎでしょう。
    その為、神戸のボランチは守備時に横の関係が出来ず常に縦に並びになり空いたスペースを柏木に散々使われていた。
    いくら世界的な選手であってもあれじゃ勝てなよ。
    国やチームが何処であれ献身的なプレーをしない傲慢な選手は世界的なプレイヤーであっても必要ないなと見ていたて強く感じた。

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    2018年09月26日 10:34

    • 1.1 匿名の浦和サポ(IP:175.132.137.183 )

      誤字すみません。
      見ていた→見ていて

      2018年09月26日 15:03

  2. 2 匿名の浦和サポ(IP:1.75.3.158 )

    暫定監督はこんなもんでしょ
    うちの組長はすごいな

    このコメントに返信

    2018年09月26日 10:45

  3. 3 匿名の浦和サポ(IP:126.236.33.186 )

    ポドルスキのどこが孤軍奮闘なんだよ。

    このコメントに返信

    2018年09月26日 12:31

  4. 4 匿名の浦和サポ(IP:49.98.137.220 )

    バクスタ アッパーから、観てたんたけど、神戸ベンチの前に立ってた人が、リージョ監督かと思ってて、家帰って録画見たら、林 健太郎だった。

    このコメントに返信

    2018年09月26日 14:48

  5. 5 匿名の浦和サポ(IP:49.98.17.254 )

    天皇杯 鹿島vs広島@カシマ、今日なのか

    このコメントに返信

    2018年09月26日 18:26

  6. 6 匿名の浦和サポ(IP:153.167.200.109 )

    神戸って日本人の質が低いですよね

    このコメントに返信

    2018年09月26日 20:19

  7. 8 匿名の浦和サポ(IP:49.98.17.254 )

    槙野、
    野球は広島カープのファンかな?

    このコメントに返信

    2018年09月26日 21:09

    • 8.1 匿名の浦和サポ(IP:118.158.236.223 )

      まあ、地元だしそうなんじゃないの

      2018年09月26日 23:21

  8. 9 匿名の浦和サポ(IP:113.154.212.164 )

    ポドルスキは後ろにいる日本人が下手だからわざわざ下りてボール回さないといけないから大変だね

    イニエスタ、トーレス、ポドルスキみたいな欧州の一流クラブに属せたクオリティの選手が日本サッカーに適応するのが難しいのは間違いない
    過去30年間で彼らが得て来たものはまず日本では得られないものだし

    jリーグレベルならそのへんのブラジル人引き抜いた方がよほど戦力になるだろうね

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    2018年09月27日 01:23

  9. 10 匿名の浦和サポ(IP:126.153.120.93 )

    神戸のメンバーで、イニエスタ抜きのポゼッションサッカーは無理がある。
    かといってクラブが目指している方向性(バルササッカー)を無視した戦術で戦うことも出来ないという林暫定監督の苦しい立場が垣間見える。

    このコメントに返信

    2018年09月27日 07:18

  10. 11 匿名の浦和サポ(IP:202.74.253.41 )

    たとえこのままJ2に落ちても、メディアの取り上げられ方は尋常じゃない。
    そろそろ獲得金ペイできるんじゃね?
    そこまで三木谷が読んでたら、すごい奴だよね。

    このコメントに返信

    2018年09月27日 08:00

    • 11.1 匿名の浦和サポ(IP:122.134.186.120 )

      複数年契約だから、まだまだだと思います

      2018年09月27日 10:42

  11. 13 匿名の浦和サポ(IP:106.171.78.146 )

    柏戦 台風🌀直撃らしい❓
    自然には勝てんか😩

    このコメントに返信

    2018年09月27日 13:44

    • 13.1 匿名の浦和サポ(IP:106.181.72.39 )

      降格圏のチームとの試合が後に残るのは怖いですね。落とせないプレッシャーもあり、相手も死に物狂いになるのもあり…

      2018年09月27日 14:21

  12. 14 匿名の浦和サポ(IP:49.98.152.195 )

    イニエスタ、
    怪我してるのに
    家族で水族館?
    仮病じゃないの?

    このコメントに返信

    2018年09月27日 16:23

  13. 15 匿名の浦和サポ(IP:126.199.75.229 )

    結局神戸の拙攻も要因であったので、これに慢心せず次節は気を引き締めて臨んでほしい。が、浮かれきっているので難しいだろう。

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    2018年09月28日 11:17