コラム

『点差以上の差を感じた鹿島戦 打開するために考えたい一列飛ばしのパス』Jリーグ鹿島vs浦和【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼鹿島のプレスをいなしたものの、そこから先につながらず
カシマスタジアムでの鹿島アントラーズ戦は、引き締まったゲームになったものの1点が勝負を分ける形で、浦和レッズは0-1で敗れた。悪いゲームをした印象は無かったが、シンプルに相手との差が感じられるゲームだったのも事実だ。

浦和は鹿島が前線からプレスを掛けるスタイルに出てきたゲームで、それ以上の数的優位を作って相手のプレスをいなすことには成功した。もっとも、柏木陽介が「いなしてるけど、いなしてるだけになってしまった」と話したように、それを前線の有効な攻撃につなげることはできていなかった。シュートが3本に終わったことは、この試合に関していえば「打てる場面でパスばかり出していた」というよりも「打てるような場面そのものが恐ろしく少なかった」ということの方が色濃いものだ。

「オレと(長澤)和輝まで下がってボールを動かして、そこから斜めのパスでやっと前にいける感じが多い。チャンスを作っているのは、ボールを取った時にパッと前を向けている時で。高い位置に行ったときに裏だけじゃなくて、ボールを足下に入れて、そこで時間を作って厚みを作ることをしないと難しいと思う」

柏木はこう話している。GK西川周作からアンカーの青木拓矢までの6人でプレスをはがし切れないからこそ、柏木と長澤までが参加してボールを前に運んだ。しかし、そこから前に進んだ時に、縦に急げば当然のように押し上げは間に合わない。結果、ラスト30メートルほどのところでまともに崩しに掛かるような場面は作れなかった。

例えば、ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督の指揮時代に生まれた「またぎのワンツー」という言葉で表現される、斜めのクサビを1人目がスルーして走り込み、2人目の選手がフリックして合わせるという浦和の攻撃でのストロングポイントだった形は、前半終了間際の1回しかなかった。これは、敵陣で選手同士がそれなりに近い距離にいることができて、なおかつボールホルダーにいくつかの選択肢がないと簡単には発動できない。柏木が言うように、後ろでは一生懸命つないで、前に進むと一本調子の形になっていることを象徴する一つの事象だと言えるだろう。この形が自然に復活するようになれば、後ろからのボール運びもうまくいっていると見ても良いのではないだろうか。

そのビルドアップ時のボールの動かし方を見ていて気になるのは、一列飛ばしのボールが少ないことだ。例えば、センターバックから青木にボールを入れるのではなく、柏木か長澤に当てて、前向きになっている青木に落とすプレー。数字で言えば、1-2-3とボールを動かすのではなく、1-3-2と動いていくような場面が少ない。前者だと、ボールを受けた選手が相手による背後からの気配を感じれば、前を向けずに下げることが増えてしまうのは自然であり、1と2や2と3の往復になりがちだ。後者を織り交ぜていくと、3の選手は見えている2の選手に下げる形なので、無理が少ない。それによって、柏木と長澤が高い位置をキープできれば、興梠慎三の孤立感も多少は改善される可能性がある。

プレスに対する対処法としては、前にロングボールを蹴ってしまうことも挙げられるが、現状の前線のメンバーの特性を考えると、あまりそれが効果的に働かない可能性は高いだろう。そうなると、どれだけ人数的なコストを掛けずにプレスを突破するかという点が重要であり、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝のサウジアラビア遠征の前に整理しておきたい部分だ。その一方で、リーグ戦ラスト3試合の、それも鹿島戦をこういった次への改善点を見つける場として考えることに終始しがちな状況を残念に感じる思いも拭えなくはあるのだが。

▼5人代表招集の日程問題の根本は・・・
この試合を終え、浦和はACL決勝に備えることになる。その中で5人の選手が日本代表に招集されたことが話題になっている。こればかりは、浦和目線で言えば色々とタイミングが悪かった感が否めない。その一方で、解決策がないのもまた実情だ。

2015年から18年のインターナショナルマッチウィークが発表された時点で、10月と11月に組み込まれた日程がシーズン終盤戦に影響を与えてきた。14年には浦和が、勝利すればリーグ優勝というガンバ大阪戦を前に週末2回分の空白期間が生まれ、調整に苦慮したこともある。ルヴァン杯の決勝によって週末2回を連続して潰していることも1つあるが、根本的な部分は春開幕のシーズン制であることに行きついてしまう。

現在のサッカー界の中心がヨーロッパのクラブにあることは明白で、秋開幕である彼らのシーズンが佳境に入る4月と5月には代表活動の期間がないようにできている。そのため、例えばUEFAチャンピオンズリーグの決勝戦の前や、リーグ優勝の懸かる大一番を前に代表招集が問題になることはない。その反面、彼らにとっては大した問題にならない時期である秋に代表活動期間を連続して設けることになる。

今年がワールドカップの2年前や3年前のシーズンであれば、無理に浦和の選手を招集しないという選択はあったのかもしれないが、本大会まで残り8カ月で、浦和がACLを制すれば12月の東アジア杯はクラブワールドカップと重なり招集できなくなる。選手たちにとってワールドカップというのはキャリアの中で大きなものであり、浦和の選手たちが一人でも多くそのチャンスをつかんでほしいという気持ちは大きい。むしろ、代表期間の直後にACLの決勝戦を放り込んだアジアサッカー連盟(AFC)の日程構成の方に、議論の余地があると言えるのだろう。

いずれにせよ、繰り返しになるがラスト3試合の佳境に入っている鹿島戦に敗れた試合単体での無念さよりも、次の事象に目が行きがちになるシーズン終盤戦にしていることは、トータルで見ればうまくチームの今季が成功と言い難いことの証明ではある。だからこそ、リーグ優勝を目前にしている鹿島に現実を見せつけられたことを前向きに捉え、タイトル獲得に全精力を注いでいくしかない。

※関連リンク
「一生懸命やっているけど・・・」 柏木陽介が不完全燃焼になってしまった理由とは【轡田哲朗レッズレビュー/明治安田生命Jリーグ第32節鹿島戦】


轡田哲朗

1981年10月30日生まれ、埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。

コメント

  1. 2 匿名(IP:111.103.243.157 )

    選手の前に監督の交代でしょ?
    それからその監督が必要な選手。
    出ていく選手も多そうだけど。

    このコメントに返信

    2017年11月08日 13:19

  2. 3 匿名(IP:126.205.192.125 )

    欧州中心でまわっているサッカー界を考えれば、極東の国、日本もそこに合わさざるを得ない。でないと、世界標準のサッカーの一つにすらなれない。

    このコメントに返信

    2017年11月08日 13:34

  3. 4 ウラワ(IP:220.213.20.39 )

    とりあえず退団選手 GK福島(期限付き放出の可能性あり)DF森脇、菊池、李、ズラタン
    去就未定平川、槙野、柏木、駒井かな?

    このコメントに返信

    2017年11月08日 13:45

  4. 5 匿名(IP:124.86.164.110 )

    選手だ監督だの前に強化部の刷新が急務なんだよなぁ
    多分、1ミリもメスは入らないんだろうけれど

    このコメントに返信

    2017年11月08日 14:16

  5. 6 匿名(IP:126.247.5.75 )

    何が言いたいのかよく分からなかったけど、髭を剃ったマウリシオと、去年のチャンピオンシップ第二戦と同じ佐藤主審だった件解説ぜひ下さい。

    このコメントに返信

    2017年11月08日 15:09

  6. 7 匿名(IP:27.143.73.181 )

    長年ミシャサッカーをして来た選手達の第一選択は「安全なパス」で、ドリブルなどの個人技を織り交ぜる事などしない。だからどんな戦術にしようがどんな監督にしようが相手にブロックを作られると何も出来ないんだよ。この停滞感を払拭するにはミシャサッカーを知らないある選手の入れ替えが絶対に必要。それと堀の采配にも疑問がある。ラファと武藤のサイドはチャンスすら作れず共に良さが完全に消えている。4-1-4-1は格上とやるACL様でありリーグでは機能しいるとは言い難い。

    このコメントに返信

    2017年11月08日 15:58

  7. 8 匿名(IP:153.229.146.247 )

    李は今の扱いでいいんだろうか?スタメン張るレベルの選手だと思うけど。あと駒井と菊池は試合に絡んでないけどなにか問題があるのか。駒井はサイドで使えそうだけど、前半無理して試合に出ていたからお休みか?なんにしろ5年間やったサッカーを変えたわけで、そんなすぐにうまくはいかないだろう。何を変えるかって難しいけど鹿島に勝つには前線に、ハイボールが強い選手が欲しいとこだな

    このコメントに返信

    2017年11月08日 17:07

  8. 9 匿名(IP:115.162.72.126 )

    4-2-3-1で柏木トップ下 右梅崎 左高木 ボランチが青木長澤 の方がいい気がする

    このコメントに返信

    2017年11月08日 20:24

  9. 10 匿名(IP:1.72.2.95 )

    前監督の可変3-6-1で守備を相手や時間帯よってハイプレスかリトリートで使い分けするだけでいいと思うのだけどなぁ。

    このコメントに返信

    2017年11月08日 22:44

  10. 11 匿名(IP:222.150.212.251 )

    メンバー固定しているのがいただけない。これじゃやっていることは全く同じだよ。菊池はどう見てもきつかったが、駒井、李、高木、宇賀神、森脇、那須あたりはもっと試合に出られて良いのではないかと思うんだけど。青木の怪我だって防げたでしょうに。

    このコメントに返信

    2017年11月09日 00:28

  11. 12 匿名(IP:183.74.192.77 )

    10さんに同意。
    攻撃のアイディアなくなりすぎだし、今のメンバーは4バックは無理だよ。

    このコメントに返信

    2017年11月09日 07:51

  12. 13 匿名(IP:126.245.73.117 )

    アンカー1人の場合、サイドバックが起点にならないと厳しい。
    槇野は守備が良くてもサイドバックのタイミング良い攻撃参加ができてない。
    攻撃は森脇の方が上。攻守に存在感出せる本職のサイドバック補強しないと。

    このコメントに返信

    2017年11月09日 09:27

  13. 15 匿名(IP:126.245.73.117 )

    今のシステムだと、サイドの選手の突破や中に入っての組み立てが無いと攻撃の形を作るのは難しい。
    もっと左サイドのラファが一対一になる状況をチームとして作るか、ゲームメイクできる選手をサイドに置きたい。
    例えば、矢島、駒井辺りを右サイドに置いたらどうかな?

    このコメントに返信

    2017年11月09日 12:58

  14. 17 匿名(IP:119.106.103.193 )

    前の橋本社長に「強化部を強化する!」って言わせるんだから 山道と北野は仕事をしないんだろ このシロアリが辞めない限り鹿島との差は開き続けるな。

    このコメントに返信

    2017年11月09日 15:55

  15. 18 匿名(IP:153.164.50.33 )

    中央突破の選択比率が低すぎる。サイドが中に送っても、受け手が安易に逆サイドに運ぶだけ。プレス受けたら無理せずバックパス。セカンドトップが下りてきてステーションパスに加わってるようじゃ全く怖くない。下りて来たら何故そこのスペースを使わないんだい?興梠に行かせて、もう一人のセカンドトップが裏を取るよう動けば中央けっこう空くぜ。

    このコメントに返信

    2017年11月09日 18:48

  16. 19 匿名(IP:106.72.194.128 )

    5年半も1ボランチないし0ボランチ状態のサッカーを続けてきた弊害やね。
    攻守に優れた組み立てのできる選手が少ない。
    そして大前提がこのサッカーは対策とられて通用しなくなっているってこと。
    そこで修正したいだけども
    今いる選手で一番ボランチできるのは青木かな・・・。
    阿部ちゃんはちょっと馬力がなくなってる感がある。
    遠藤は守備はいいけど組み立てが?。
    長澤はセンスがいいけど前目のほうが生きる気がする。
    柏木は組み立てはいいけど守備はもうご存知のとおり。
    矢島は守備がダメだしやっぱり前目。
    うわっいないわ・・・。
    あとサイドバックの穴か・・・。
    一人もいない・・・。
    橋本は今怪我らしいけど今いたら使われてるだろうな~と思う今日この頃。
    てかさ得点にも失点にも即直結するセンターラインを疎かにするサッカーなんて長続きしないってことだな。

    このコメントに返信

    2017年11月09日 19:11

  17. 20 匿名(IP:222.150.212.251 )

    横幅が取れていないのが一番の問題。代名詞だった斜めのサイドチェンジのパスが全く見られなくなった。言うまでもないことだけど、中央を使うからサイドが空く。サイドを使うから中央が空く。対戦相手からしてみれば、目の前の選手をマークしてりゃことが済む。一人が二人を見なきゃいけない状況とか、バイタルを使われて中央に絞らざるを得ない場面とか、サイドが引っ張られてギャップを作らざるを得ない場面とか、今までできていたことが一切見られなくなった。攻撃だけで見たら2011年に逆戻りしたようなレベル。

    このコメントに返信

    2017年11月09日 21:26

  18. 21 匿名(IP:60.76.218.52 )

    競った展開の中で一瞬の隙を突かれたように見えた。1点取れば試合の終わらせ方は清清しいほど汚くずるい。堀さんのサッカーの究極は守備的サッカーなんだろう。堀さんは自らの理想形に舵を切リ、今回は熟成度で負けた。この先勝てるかどうかは未知数である。前任の指向した究極は「攻撃は最大の防御」だった。戦術の弾力性のなさツメの甘さからリーグを制することはできず、選手起用の固定化や補強の失敗から今期の低迷を招いた。その部分にテコ入れをするとともに基本的技術の精度を高めて保持率を上げる方向性もあったと思う。守ってショートカウンターのスタイルを望む人も多いと思うが、個人的には、浦和には鹿島の対極をもって最強を目指してほしい。

    このコメントに返信

    2017年11月10日 01:20

  19. 22 匿名(IP:182.22.132.233 )

    堀はACLをとることを第一に考えているように感じる
    そのためにはまず失点しないことが大事だということはわかるし、そういう考えは前任者には希薄だった
    ただ、4-1-4-1である必要はないと思うね

    このコメントに返信

    2017年11月10日 09:22

  20. 23 匿名(IP:101.128.162.21 )

    まあ、とにかく社長と強化責任者をプロに替えない事にはどうしょうもない。

    このコメントに返信

    2017年11月14日 04:12

匿名 へ返信 (or Cancel)