コラム

『中位同士らしい試合になったG大阪戦 チームにどのような刺激を与えられるのか』Jリーグ浦和vsG大阪【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼ACLのようにできないのは自然なこと
これが優勝を争う順位同士の一戦であれば、「白熱のゲーム」だとか「意地と意地のぶつかり合い」という評価をされるのだろう。しかし、中位同士の一戦となれば、それも浦和レッズとガンバ大阪という本来ならタイトルを争っているべきクラブの対戦であるからこそ、「だから今季は優勝争いできていないんだね」という印象を与えてしまったのではないだろうか。そんな思いに駆られる22日の3-3で引き分けた浦和とG大阪の一戦だった。

浦和はすでに前節の時点で完全に優勝の可能性が消滅している。これほど早く完全にリーグ優勝の争いから脱落してしまったのは、2011年の残留争いをしたシーズン以来ではないだろうか。それ以降は、現実的に厳しい勝ち点差であったとしても、残り3試合くらいまでは可能性が残っていた。そう考えると、こうしたゲームの扱いに慣れていない感は選手たちにも、あるいは取材をしている私たちにもあるように感じられた。この時期のプレスルームというのは、概ねライバルクラブの結果や優勝の条件などの確認で話に花が咲く。普段なら1人体制の媒体が2人、3人と取材に来ることで全体の混雑具合も増すものだが、顔を見るのは普段から浦和の取材をしている人たちばかり。そして、試合前に話題に上るのはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のことばかりで、どこかリーグ戦の試合前という空気がなく感じられたからだ。

確かに、G大阪戦の3失点は2つのセットプレーに、寄せの甘さが出てしまった流れの中からの1点と、その瞬間を切り取った守備戦術にエラーはある。3回に渡ってリードしながらその全てで追いつかれた、それも得点から4分後、4分後、アディショナルタイムという試合運びの拙さも言い訳ができない。では、ピッチ上でその現象を生んだ原因はなんだったのかとなると、どうしてもモチベーションの部分に触れざるを得ないだろう。

槙野智章は「大会が違うし、雰囲気も気候も違う中でモチベーションの難しさがあったのかなと思います」と、ACLの準決勝第2戦、上海上港戦からの落差を表現していた。槙野以外にも「ACLではできているのに」という言葉が、選手たちからも周囲からも聞こえてきたのがG大阪戦だったが、私にはむしろ「できなくて当たり前」という感覚がある。選手たちがいかにプロフェッショナルであるサッカー選手であっても、それ以前に一人の人間であることは変わらない。優勝まであとわずかとなったACLと、他チーム次第で来季のACL圏内に入れるかもしれないというレベルのリーグ戦では、状況という外的要因によってもたらされるエネルギーが違いすぎるのは事実だ。その差を、選手個々が自分の内側で作り出す内的なエネルギーで埋められる、あるいは埋めるべきだとは簡単に言えない気持ちが大きい。だからこそ、何か違うモチベーションを見つけることや生み出すことが必要なのだろう。

▼明らかにある外的要因の差をどう埋めるのか
堀孝史監督は、ACLの上海戦から1人しか入れ替えなかったスタメンについて「天候のことなど含めてトータルで考えて、スタートのメンバーを決めました」と話していた。一部に水たまりができるほどになったピッチ状態を考えれば、長澤和輝やラファエル・シルバ、ズラタン、遠藤航、槙野、マウリシオのように、地面を掴む力が強く安定感のあるタイプの選手を起用したいのは論理的だ。ピッチの上を滑るようにプレーしていくタイプの選手は、良さを出しづらいと判断したのだろう。また、興梠慎三には得点王が掛かってもいる。そうやっていった時に、最も勝てるであろうメンバーを選んだという理由には一定の納得はいく。それが、堀監督なりのG大阪戦を大切にするという思いの表現だったからだ。

その一方で、こうした状況に落差がある試合を戦うにあたって、最もメンタル的に刺激を与えられるのがスタメン交代であるのも事実だ。出番に対して空回りするくらいのプレーで入って、周囲を巻き込んでいくような存在をピッチに置いておく方が、こうした「ビッグマッチの後のデイリーワーク」と表現されるようなゲームでは好影響を与えることが多い。ヨーロッパでも、UEFAチャンピオンズリーグの大一番の後に迎える週末の中位相手の試合などでは、久々に出番が来たというような選手がスタメンに入ることが少なからずある。そうした形で、たとえピッチ状況などを考えればマイナスに見えるものでも、内的なもので埋めきれない部分に外的な刺激を与えるという手法は考えられても良かったのではないだろうか。

翌週は残留争いのサンフレッチェ広島、その後は優勝争いの鹿島アントラーズと川崎フロンターレといった、外的要因による強いエネルギーを持つ相手との試合が続く。それが悪い方向に作用して勝手に自滅してくれる可能性もあるが、基本的には浦和がその部分で上回るのは難しい試合だ。だからこそ、「ACL決勝に向けて」などといった先のことではなく、目の前のプレーや勝利に100パーセントこだわり切れる刺激が必要になる。それを、堀監督を含めたチーム全体の中で生み出すことができるかどうかで、リーグ終盤戦が本当に何でもない試合の連続になってしまうのか、何か選手たちや見る人の心の中に残せるものがある試合にできるのかが変わってくるはずだ。

動画:【公式】ハイライト:浦和レッズvsガンバ大阪 明治安田生命J1リーグ 第30節 2017/10/22

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轡田哲朗

1981年10月30日生まれ、埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。

コメント

  1. 1 匿名(IP:119.10.216.138 )

    モチベーション保てなかったのはサポーターも同じかも。
    ガンバ戦にしては寂しいスタジアムだった。

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    2017年10月25日 09:34

  2. 2 匿名(IP:113.43.92.194 )

    風雨が強くて観戦には厳しい条件だったにしても(なんせSBの36列でもポンチョが要った)我々も
    テンションを上げ切れなかったよね。上海戦と同じ位のサポートが出来ていたら3失点のうち1点は
    防げたかも知れないと思った。悪条件にしては入った方だと思うけど。

    このコメントに返信

    2017年10月25日 11:58

  3. 4 匿名(IP:163.49.201.25 )

    福田さんも前に「全ての試合を最高の状態で戦うのは無理」って解説かなんかで言ってたからモチベーションやコンディションの調整って大変なんだろうな

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    2017年10月25日 14:14

  4. 5 匿名(IP:126.21.236.36 )

    何が優勝のかかっていないゲームに慣れてないだよ
    もともと慣れてなくて優勝できないくせに

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    2017年10月25日 15:16

  5. 6 匿名(IP:61.196.47.118 )

    普段、試合に出られない選手の方がモチベーション高く良いプレーをしてくれるんじゃない?
    やる気がないなら休ませればいい 監督が判断してチーム所属メンバー全員で戦っていくべき

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    2017年10月25日 17:07

  6. 7 匿名(IP:182.250.253.229 )

    やじしんとか、駒井とか、菊池とか、阿道とか、田村とか、はたまた橋岡とか。
    ところで、橋岡の昇格、どうなってしまったの?

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    2017年10月25日 17:38

  7. 8 匿名(IP:14.9.43.128 )

    先行しては追いつかれ、それでもつきはなす。
    そして追いつかれて終了。
    勝負強いのか弱いのか評価に苦しむ試合だった。
    それでも落ち目のガンバには勝ってほしかったというのが本音。

    このコメントに返信

    2017年10月25日 18:10

  8. 9 匿名(IP:218.42.170.65 )

    来季のACL出場権獲得に繋げる重要な試合にモチベーションが低くなるのも無理はない?そんなだから無冠なの。鹿島にはぜったいありえない話。

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    2017年10月25日 18:55

  9. 10 匿名(IP:60.76.218.52 )

    ほんとにプロとして言ってはいけない言葉だろ。サポーターの熱も低かったというが、サポーターは客だろ?順位を落として客の熱を下げてしまったそ原因はそもそもどこにあるんだ。人数が少なくたって着ている人は荒天の中同じ金額の入場料を払って観に来てるんだろうが。それに少ないとはいえ他のクラブの同等以上の集客があるのにだ。こいつらリーグの順位が下がれば当然減棒だよな。そういう危機感もないからこんな気の抜けたコメントが残せるんだ。観客と選手を一緒に論じるんじゃないよ!

    このコメントに返信

    2017年10月25日 19:09

  10. 11 匿名(IP:219.194.247.16 )

    トヨタ自動車災難だなプリウスの問題が多すぎる会見をして再発防止に務めてほしい

    このコメントに返信

    2017年10月25日 19:20

  11. 12 匿名(IP:182.251.247.18 )

    まったく、このコメンテーターはサポーターの気持ちがわかっていない。浦議に記事を書く資格なし。

    このコメントに返信

    2017年10月25日 21:08

  12. 13 匿名(IP:122.30.12.194 )

    選手だって生身の人間だということは理解してるが、サポーターの前で弱音を吐くことだけは勘弁してほしい。

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    2017年10月25日 22:33

  13. 15 匿名(IP:27.133.153.81 )

    12
    いや、だから、サポーターもテンション足りてなかったじゃん。。応援はACLより控えめだけど選手はモチベーション保てよってどんなモンスターだよ。それをインタビューで言っちゃう選手は気持ちの問題じゃなく、倫理、モラルの問題だから論外として。

    このコメントに返信

    2017年10月26日 01:24

  14. 16 >15(IP:211.14.61.164 )

    サポは試合毎個々のテンションじゃなく今の浦和そのもののつまらなさに冷めてんの。まだわからん???

    このコメントに返信

    2017年10月26日 04:18

  15. 17 匿名(IP:27.143.73.181 )

    相変わらず内容の無い誰も思っている事を長ったらしく文書化しただけの作文。批判的になって申し訳ないが、ホント毎回そう感じる。

    このコメントに返信

    2017年10月26日 04:33

  16. 18 匿名(IP:126.245.85.158 )

    そのモチベーションを自分自身でコントロールできて波の無い選手が一流選手になる条件でもある。
    心を整えてリーグ戦も必勝を期待してます!

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    2017年10月26日 11:31

  17. 19 匿名(IP:126.245.85.158 )

    残りのリーグ戦はACLの無い来季に向けての選手選考にもなってくる。ACLが無いと今の2チーム分の戦力は明らかに余剰戦力。武藤、森脇、宇賀神、李、ズラタン、平川、那須辺りはアピールしないと。個人的には両サイドバックに二億かけるなら、サイドから中に入ってゲームも作れて点も取れるポンテみたいな助っ人外国人が補強ポイントかと。

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    2017年10月26日 11:45

  18. 20 匿名(IP:126.245.85.158 )

    GKも川島、権田辺りを引き抜けないかな。西川はセットプレーからの失点が多い気がする。

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    2017年10月26日 11:57

  19. 21 匿名(IP:219.66.235.121 )

    サポーターのテンションが~とか言ってる奴すげーな
    サッカー観戦におけるサポーターは言葉は悪いが遊びであり娯楽、レジャー
    選手はプロであり仕事なんだよ 
    やる気のない選手のプレーを金を払って見せられる客の気持ちを考えてみろ

    このコメントに返信

    2017年10月26日 16:52

  20. 22 匿名(IP:126.245.20.64 )

    本来なら注目カードとして組まれたと思うが、今年度の両チームを象徴するように1日遅れのため天の禍に翻弄。観客はそんなやるせなさは充分にわかってるのにパンドラの箱(まあそこまでもないけど)を開けてしまう祝男とそのご丁寧な解説文か。

    このコメントに返信

    2017年10月26日 19:09

  21. 23 匿名(IP:182.250.250.200 )

    サポーターのモチベーションは高かったでしょ。あの天候の中でスタジアムに足を運んだ人のなかに、引き分けや負けでいいなんて思ってた人はほとんどいないと思う。

    このコメントに返信

    2017年10月26日 23:19

  22. 24 匿名(IP:111.103.243.157 )

    無いな、絶対にこの記事に対して同意は出来ない。この記者さんは?何なの?
    中位同士の対戦。だから何かしら。相手は鹿さん、お隣さんと同等の決して負けてはいけない、いや負けたくない相手ですから。
    大体ね選手もいつもサポーターと一緒にとか、サポーターの為にとか言わなくていいし、思わなくていいからな‼︎
    俺は浦和レッズの為にサポートしてる。レッズの勝利の為にサポーターしてるから。選手もレッズの勝利の為に戦っていればいいのよ!
    レッズサポの為に戦ってくれなくていいからさ。レッズの勝利の為だけに戦ってくれよ。
    悲しくなるわ、浦和関連の記者のレポートとして最悪…
    あの悪天候の中、自分自身にテンションかけてレッズの勝利の為に精一杯の声出し、応援した方々の思いは、何なのか?選手のモチベーションを上げることができるわけないと。スタジアムのサポーターの声援ぐらいでは上がらないってことかな?
    だけど、脚さんは追いついたよ。アディショナルタイムで追いついたよね。アウエーだよ。
    冷めるなァァ(`_´)ゞ

    このコメントに返信

    2017年10月26日 23:41

  23. 25 匿名(IP:112.139.125.146 )

    来年もACLに出たいって気持ちがないからあんな試合になるんだろう。それだけだ。

    このコメントに返信

    2017年10月27日 03:43

  24. 26 匿名(IP:219.105.5.163 )

    最近選手がサポーターという語をよく使うようになった。クラブが言わせてるのだろう。おかしな違和感あり。あああ薄っぺらい薄っぺらい。

    このコメントに返信

    2017年10月28日 09:04

  25. 27 匿名(IP:153.214.111.67 )

    確かに、相対的にはモチベーションは劣るだろうが、ウチってパフォーマンスに差が出すぎじゃない?
    ウチの監督含めたメンバーって負けず嫌いじゃないのかな?
    強いクラブってトップレベルの負けず嫌い集団だと思う。
    ウチの負けず嫌いってリーグ中の下レベルにしか感じられない。それ前提で行くならやっぱり若手を活用して欲しい、刺激になると思う。
    今季は最近では一番冒険しやすいシーズン後半だと思う、来季への先行投資を切望する。

    このコメントに返信

    2017年10月28日 23:33

  26. 28 匿名(IP:101.128.162.21 )

    色々な条件で難しいのは事実だし古今東西よくある事ではあるけど・・・。  この記事含めて、いろんな意味でレベルが下がってきてる。

    このコメントに返信

    2017年10月29日 15:33

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