コラム

上位相手に2連勝、チームを支える途中出場のベテランが光る(Jリーグ浦和vs川崎)【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼日程のハンデを乗り越えて奪った勝利
浦和レッズは1日の川崎フロンターレ戦を2-0で勝利した。前節に首位のサンフレッチェ広島に4-1で快勝し、今節は開始前に暫定3位だった川崎を撃破した。しかも、この酷暑の中、3日間のインターバルだった浦和はオズワルド・オリヴェイラ監督が「すごく暑い中で広島と戦った後、私たちが選手に発した言葉は『リカバリー』、回復というものばかり」とコメントしたほどの状況だった。一方の川崎は、前節の湘南ベルマーレ戦が台風12号の影響で中止になり、本来なら試合が予定されていた日に練習をしたのみ。予定されていたものが敵地とはいえ同じ神奈川県内で大した移動もなく、日程に余裕があった川崎を撃破したことには大きな価値があると言える。正直なところ、守備の技術に問題があって、激しく当たることを履き違えて足を蹴るような行為を繰り返した挙句に、フェアプレー精神が欠如した部分すら見せた川崎を相手に、よく我慢した試合をしたことも称えたいところだ。

 

この試合のスタメンは広島戦と同じ11人であり、途中出場した3選手もまた同じ顔ぶれだった。そして、試合内容を見れば途中出場の3人はチームの勝利に大きな貢献をしたと言える。阿部勇樹、森脇良太、李忠成に共通するのは、直近の数シーズンではレギュラーで出場していた30歳を越えたベテランであるということだ。

 

▼指揮官が示す3人への信頼
オリヴェイラ監督に、この3人が素晴らしい仕事をしているということを川崎戦後の記者会見で問いかけると、2011年まで鹿島アントラーズを指揮していた時のことを引きあいに出して「李が柏にいたときの対戦を覚えていますし、森脇は広島でプレーしていました。阿部とは100回ほど対戦したのではないかと思います」と、冗談交じりにも7シーズンぶりにJリーグに戻る前から熟知している選手であることを話した。そして、彼らの仕事ぶりをこのように評している。

 

「彼らの経験が、非常に重要です。彼らにはゲームのビジョンがある、視野が広いということが言えると思います。ですので、彼らを信頼し、若い選手が頑張っている中で、緊急事態が起こったらしっかり役割を果たしてくれる。私の選択肢になっています」

 

彼らは現在のチームでスタメンを外れることが多いが、決して信頼度が低いわけではない。例えば阿部に関しては、柏木陽介の状態に不安がある時には「彼にゲームメークを託す」というプランがあることが明かされているし、広島戦の後には「(相手の攻撃を)止めるセンスのある阿部選手を入れて、柏木選手をもう少し前目の位置に入れた」と、その守備能力に対する信頼も話した。実際に、阿部はこの川崎戦でも守備を安定させただけでなく、左サイドでボールを奪った後にファブリシオに高い技術を必要とするパスを通して、ゴールチャンスまで演出している。

 

また、森脇は中断前のルヴァン杯ヴァンフォーレ甲府戦や広島戦では、3ボランチの一角で途中出場した。しかし、この川崎戦では疲労が明らかで決定的なミスまでしてしまった橋岡大樹に代わって右のウイングバックに入った。森脇自身も「今年に入って、ワイドは1回もやっていなかった」と、スクランブル感の強い出場であったことを明かした。それでも、4月に32歳の誕生日を迎えた森脇は、こうした言葉で経験値の持つ力を語っている。

 

「僕自身、年齢を重ねての成長を感じています。以前だったら慌てていたことが、今は慌てない。そういう向上を日々感じていますからね。どの時間帯、どのポジションであっても、やることは監督が求めることですから」

 

今や森脇は、3バックの右サイド、右のウイングバック、3ボランチの右サイドという複数のポジションで戦術的な選択肢を与える交代カードになっている。そして、橋岡の疲労が顕著な今、スタメンで出場させる決断をオリヴェイラ監督が下したとしても、問題のないプレーを見せられるだろう。

 

▼PKキッカーを譲った李忠成の真意
また、この試合の2得点目になるPKを奪ったのが途中出場の李忠成だった。数シーズン前は興梠慎三や武藤雄樹と合わせて「KLMトリオ」と名を馳せたが、昨季の後半からベンチスタートが多い。その中で、後半アディショナルタイムには素晴らしい突破を見せた。

 

中盤の左サイドでボールを受けると、ハーフライン近くでファウルを受けるも、倒れることなくプレーを継続。さらに敵陣の半分あたりで再びラフなチャージを受けても、跳ねのけてドリブル突破した。そして、3回目のラフな当たりとなったところで倒されてPKを獲得した。しかし、そのPKはキッカーをファブリシオに譲った。今季、1回PK失敗があったものの、それが「キャリアで初めて」と話していたほどにPKは得意な選手だが、自ら蹴らなかった理由もまた、チーム全体を見据えたものだった。

 

「スタメンで出てないので、切羽詰まってないわけではないんですけど、ファブリシオも途中から入ってまだ数試合。彼自身がノッた方が、もっともっと浦和レッズとして強くなると思いました。長年いるので、僕はいつでもノれるし、もうチームになじんでいますから。彼がトントンと連続で点を取ることが良いことだと思ったので、彼にPKを譲りました」

 

▼世代交代の流れにある浦和で必要なベテラン
ここ最近の日本サッカー全体の話題として「世代交代」という言葉がある。それは、ワールドカップ(W杯)ロシア大会を終えて就任した森保一監督が、東京五輪の代表チームと兼任することや、そのロシアで戦ったメンバーの平均年齢が歴代最年長だったこともある。

 

浦和も、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の時代にレギュラーを務めていた選手が、30歳を越えるようになってきた。鈴木啓太が引退し、那須大亮や梅崎司もチームを去った。そして、広島戦や川崎戦のようにスタメンからベンチスタートになりつつある選手がいる。

 

そうした中で、橋岡や荻原拓也といった選手が少しずつチャンスを掴み、負傷離脱からの復帰が近づく長澤和輝もオリヴェイラ監督の信頼が厚い。こうした流れが、浦和もそうした時期にあることを示している。

 

それでも、チームの勝利のために与えられた役割を果たし、若手にプレッシャーを与えつつも安定したプレーができるベテランが輝いている。この2試合は、そうした「いぶし銀」の選手たちが勝ち点3を奪う大きな力を果たすものになった。


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川崎の守備ミスを突いて先制、危険な場面を耐えて連勝に成功【轡田哲朗ゲームレビュー/明治安田生命Jリーグ第19節 川崎戦】(浦レポ)

 


轡田哲朗

1981年10月30日生まれ、埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。

コメント

  1. 1 匿名の浦和サポ(IP:182.250.243.48 )

    ボール出さないのはまぁ良いとして返さないのは中国韓国と同じ。いろいろ文句言うくせに自分には甘い。その辺含めて川崎は甘ちゃんクラブ。

    このコメントに返信

    2018年08月03日 07:54

    • 1.1 匿名の浦和サポ(IP:182.251.253.36 )

      長崎が直近の2試合で戦えるチームになってきている

      帯を締めなおして、必ず日曜も勝とう。
      次負けたら2連勝の意味がない。

      2018年08月03日 08:16

    • 1.2 匿名の浦和サポ(IP:182.251.253.36 )

      なぜか1さんへのリプライになってしまいました。
      申し訳ございません。

      2018年08月03日 08:17

  2. 2 匿名の浦和サポ(IP:43.228.245.164 )

    なんか、いつもいつも、事実をなぞってるだけのような文章だね。。
    試合前後の監督や選手の言動をチェックしてれば、こういう平均的な認識に至るんじゃないかな。。
    おそらく、この人よりより多く浦和に関する情報に触れてるサポが多いはずだから、そういう人にとっては物足りなさすぎだろうね。。

    このコメントに返信

    2018年08月03日 08:19

    • 2.1 匿名の浦和サポ(IP:123.230.120.136 )

      独自取材したネタも目新しい視点や分析も何もない残念なコラム。

      2018年08月03日 13:32

    • 2.2 匿名の浦和サポ(IP:1.66.97.130 )

      なんだかんだ言われても、山中氏のほうが愛されているようだ。

      2018年08月03日 18:07

  3. 3 匿名の浦和サポ(IP:122.214.0.97 )

    橋岡君は一回休ませよう、菊池も良い選手だしね。

    このコメントに返信

    2018年08月03日 10:22

  4. 4 匿名の浦和サポ(IP:211.1.73.166 )

    「いぶし銀」か。硫黄で燻した銀の化学反応ですよね。
    輝きはないが、趣深い。
    そのものが感じさせる風情、深く心に染みた味わい。
    ベテランではありますが、まだまだ、光沢を感じる3人です。
    期待を込めて、
    「いぶし銀」は、もうちょっと燻すまで、もう少し先にしませんか?

    このコメントに返信

    2018年08月03日 11:06

  5. 5 匿名の浦和サポ(IP:118.151.148.208 )

    途中から入る阿部ちゃん、めちゃめちゃ効いている。やはり連続出場の際は疲労がたまっていたんだね。

    このコメントに返信

    2018年08月03日 11:21

  6. 6 匿名の浦和サポ(IP:27.94.24.163 )

    でもこの酷暑の中だから、メンバー固定は勘弁だな。
    ミシャほどではないにしろ、うーむ…。

    出てない選手たちの奮起に期待です!

    このコメントに返信

    2018年08月03日 22:36

  7. 7 匿名の浦和サポ(IP:126.233.74.108 )

    橋岡はさすがにキツイでしょ。プレわスタイル的に、疲労が溜まりやすいはず。
    体より、思考に影響が出ている感じがした。2週間くらい外しても良いのでは無いかと思う。森脇も居ることだし、終盤戦に向けて休ませるのも1つの手。

    このコメントに返信

    2018年08月04日 00:13