コラム

『頑張りどころを整理できた上海戦 苦い経験を大一番で生かす』ACL浦和vs上海上港【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼初戦の優位を間違えないために生きた昨年の経験
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間に、一気に肩から力が抜けるような感覚を味わう緊迫感のある試合であり、勝利だった。18日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の準決勝第2戦、上海上港(中国)戦で浦和レッズは1-0で勝利し、2戦トータル2-1で決勝への切符を手に入れた。

これまでにグループステージを突破し、ラウンド16の済州ユナイテッド(韓国)戦、準々決勝の川崎フロンターレ戦と勝ち上がってきたチームだったが、特に決勝トーナメントに入ってからの2カードと大きく違ったのは、初戦で多少なりともアドバンテージを得たことだった。アウェーゴールを奪っての1-1の引き分けは、概ね55対45くらいのパワーバランスになるアドバンテージだと考えられる。それまでの2カードは30対70か、それ以下と言えるようなところから逆転してきただけに、注目ポイントの一つはそこだった。

守りに入っておかしな試合をしては意味がないが、かといってオープンな撃ち合いをする意味は全くない。西川周作は「相手を前に置いての守備というのはハッキリできたと思う」とした上で、「去年のチャンピオンシップの経験は生きたと思う。一番、危険な状況が何なのかを把握できていたというのは、今日につながったと考えれば無駄ではなかったと思います」と話した。初戦を有利な状況で終えて逆転された苦い経験は、このゲームを迎えるにあたって適度な緊張感と危機感を選手に与えていたのだという。

そこでチームの戦い方を見ると、守備ブロックの作り方をかなり整理してきたことが窺われた。それを実現するための要素として最終ラインがズルズル下がらないで保つことができたのは、インサイドハーフの柏木陽介と長澤和輝が労を惜しまない上下動を繰り返したことにあったのではないだろうか。

▼神戸戦をスタンドから見た槙野が話した修正ポイント
相手の最終ライン中央にボールがある時に、興梠慎三を頂点に、柏木と長澤が2列目にいて、ラファエル・シルバと武藤雄樹は早い段階で青木拓矢と同じラインまで降りるようになっていた。俯瞰して見れば「クリスマスツリー」と呼ばれる4-3-2-1のような形で、そこからボールの動きに合わせて柏木と長澤のどちらかが前に出て、どちらかが青木のラインまで下がる。そうやって4-4-2のような形に変化しながら守っていた。上海のアンドレ・ビラス・ボアス監督は、「浦和は隙間が空いたらそれをすぐに封じ込めるような対策を取っていました。その戦術は私から見ても、すごく良かったと思います」と話したが、まずは簡単にスペースを明け渡さない整理というのがしっかりできていたと言えるだろう。

また、槙野智章は時間帯によって守備の整理をしっかり意思統一できたことを話した。そこには、前週末のヴィッセル神戸戦をメンバー外として上からの目線で見た反省点と修正点があったと話している。

「神戸戦を見て、(狙った守備が)できている時とできていない時があるのはフィードバックしました。バラバラになっている時間帯は、前が取りに行きたくて、後ろがブロックを作りたがる。今日のように個がある相手に対してバラバラになると、一人が抜かれた後のカバーの距離が遠くなる。それを近くするのが修正ポイントでした。前の選手のボールを取りに行きたい気持ちを抑えて、守備のスタート位置をハッキリさせることですね。60分以降、体力的に厳しくなった時に興梠選手のスタート位置を下げること。それによって全体のコンパクトさを保てたと思います。堀監督になって守備の練習に時間を割いているので、うまく対応できたんじゃないかと思いますよ」

この日の上海が、フッキとオスカルという元ブラジル代表の2人と、ウズベキスタン代表MFオディル・アフメドフに攻撃の組み立てから仕上げまでのかなりの割合を依存しているチームだっただけに、注意すべきポイントがハッキリしていたのは事実だろう。その依存された選手が強烈だったというだけで、それこそ前週末の神戸や今週末に対戦するガンバ大阪などJリーグのクラブの方が、的の絞りにくさだけで言えば上だ。柏木も「6番とセンターバックはほうっておいていい」という意思統一があったことを話した。選手の高い集中力と局面での”頑張り”が勝利を引き寄せたのは間違いないが、頑張りどころをハッキリさせることができた、あるいは依存する部分がハッキリした相手だったことが、より選手の能力を引き出させたのではないだろうか。

決勝の相手はアル・ヒラル(サウジアラビア)になるが、確認したところでは、その初戦をマウリシオが累積警告で出場停止になってしまった。上海戦でも最終ラインで絶大な信頼感のあるプレーを見せていただけに痛手なのは間違いない。とにかく、ホームに良い形で戻ってきさえすれば、埼玉スタジアムのACLには負けるイメージがない。リーグ戦の中で、マウリシオ不在を想定したテストをしておくことも、堀孝史監督の頭の中にはあるのではないだろうか。それだけ周到に、考えられるだけの準備をしておくだけの価値があるタイトルまで、後一歩のところまで来た。

動画:【公式】ハイライト:浦和レッズvs上海上港 AFCチャンピオンズリーグ 準決勝 第2戦 2017/10/18

※関連リンク
決勝進出を導いた”両足” 柏木陽介による上海対策の「ほうっておいていい」の意味【轡田哲朗レッズレビュー/ACL準決勝第2戦上海戦】


轡田哲朗

1981年10月30日生まれ、埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。

コメント

  1. 1 匿名(IP:126.233.136.247 )

    アジアを獲るためなら、
    あのインチキCSはちょうどいい経験だったわな。

    このコメントに返信

    2017年10月21日 13:15

  2. 2 匿名(IP:27.143.73.181 )

    前から思っていたのだが、この人のコラムって選手のインタビューを交えて試合を時系列に文書化しているだけでコラムというよりニュース記事に近い。いつも読み終わった感想が「だろうね・・・」としか思わない。

    このコメントに返信

    2017年10月21日 13:51

  3. 3 匿名(IP:1.66.99.31 )

    堀は本当に守備練習してるの?
    賭博か?ってほど毎試合、キレイに開始早々に失点するが、

    このコメントに返信

    2017年10月21日 15:09

  4. 8 匿名(IP:126.44.204.133 )

    >3
    いつもの方か?釣られるのもシャクだけど、ここで言うことじゃねーだろ

    このコメントに返信

    2017年10月21日 19:14

  5. 9 匿名(IP:121.80.245.120 )

    しっかし、マウリシオのイエローの元になった上海の行為、ありゃないよな!
    と、強硬に文句を言って、イエローを取り消しさせるわけにはいかないか⁈
    ダメ元で。

    このコメントに返信

    2017年10月21日 19:21

  6. 10 匿名(IP:126.44.204.133 )

    マウリシオのイエローはフッキとやりあったから?それともホイッスル後に大きく蹴り出したから?ビデオで見てもイマイチわからなかった

    このコメントに返信

    2017年10月21日 19:27

  7. 12 匿名(IP:106.161.219.117 )

    3
    前監督の感覚がまだ抜け切れてないんじゃないですかね?
    5〜6年やってた訳ですし

    このコメントに返信

    2017年10月21日 20:35

  8. 13 匿名(IP:153.128.38.177 )

    マリが鹿に競り勝ったね。鹿島川崎横浜ガンバ広島の残り5戦で広島に勝つのがせいぜいでしょ。今日負ければ10位まで落ちるだろうな。こうなることは3年も4年も前からわかってたけどさ。

    このコメントに返信

    2017年10月22日 06:11

  9. 14 匿名(IP:153.128.38.177 )

    優勝争いは鹿島と川崎に絞られたね。そして、ACL枠の3~4位争いは横浜セレッソ柏磐田。川崎は去年終盤のくやしさと今年ACLのくやしさと万年シルバーホルダーのくやしさを晴らすいい機会だね。川崎の風間5年は本物だったけど、うちのは無駄だったで大差ついちゃったね。

    このコメントに返信

    2017年10月22日 06:33

  10. 15 匿名(IP:182.250.243.229 )

    みんななに言ってんだよ。
    来年は本気でリーグ取りに行けるだろ!
    ルヴァンの予選で若手育てられるだろ!
    来年こそ補強も踏まえて本気の浦和レッズが見れる

    このコメントに返信

    2017年10月22日 07:36

  11. 16 ウラワ(IP:220.213.20.39 )

    >10映像で見たところホイッスルが鳴った後ボールを蹴っているので遅延行為をとられたのだと思います。

    このコメントに返信

    2017年10月22日 08:34

  12. 17 ヒデ(IP:153.164.50.33 )

    ほんと淵田と山道だよな。
    外事局つくってポンテに入閣してもらえよ。
    あ、でも淵田の消極投資方針で嫌気がさして辞めちゃうか。

    このコメントに返信

    2017年10月22日 08:45

  13. 18 匿名(IP:126.233.195.236 )

    今年中位に沈んだ事で、来年以降、数年間はリーグ優勝が難しくなるというのが冷静な見方でしょう。今年のリーグ優勝チームは35億もらえるので、エゲツない補強をするか、レッズのキーパーソンである興梠、柏木、マウリシオを丸ごと引き抜く可能性もある。

    このコメントに返信

    2017年10月22日 10:21

  14. 19 匿名(IP:180.149.165.253 )

    オレは来年こそリーグ優勝できると思っているよ。カネだけで人が動くとは思わないね。

    このコメントに返信

    2017年10月22日 11:21

  15. 20 もも(IP:39.111.175.16 )

    〉19

    国語が出来ないの?
    算数が出来ないの?
    それとも
    煽りが出来ないの?

    このコメントに返信

    2017年10月22日 11:30