今年より町田ゼルビア、浦和レッズを中心に取材するライター郡司聡さんによる「対戦相手から見た浦和レッズ」というコラムシリーズが浦議でスタート!
第2回はJリーグ浦和vs名古屋になります。
(過去記事『甲府選手のコメントから見えてくる浦和レッズの強さと弱さ』ルヴァン杯 浦和vs甲府)
▼前半の問題点とその問題点をうまく修正した後半の戦い
J1リーグ再開を3日後に控えた全体練習のあと、橋岡大樹は「(中断期間で)変わった浦和レッズを見せたい」と話していた。14位からの逆襲を狙う浦和が、後半戦に向けて、その視界が良好であることを印象付ける成果を、勝ち点3奪取とともに残せるのか。再開初戦の相手は、リーグ最下位に沈む名古屋グランパスだった。
この日の名古屋のシステムは、ジョーとガブルエル・シャビエルを2トップに配したオーソドックスな[4-4-2]。川崎フロンターレを率いていた当時の風間八宏監督は、浦和のシステムに噛み合わせる形で[3-4-2-1]を採用し、“ミラーゲーム”で勝利を収めてきた歴史がある。“ロマンティスト”の側面が強いと目される風間監督だが、過去の浦和戦では一転、“リアリスト”の一面を見せることも少なくなかった。しかし、今回の浦和戦ではW杯による中断期間中に取り組んできた[4-4-2]を変えずに、ポゼッションをベースとしたパスワークから浦和の守備網を攻略することで勝ち点3奪取を目論んでいた。
従来の風間スタイルのチームと対峙する場合、たとえポゼッション率は相手に譲っても、相手にボールを回させている感覚で戦えれば精神的優位性は浦和にある。“風間グランパス”は背後を突く危険性も少ないことから、浦和の守備の狙いは「ブロックを作ってペナルティーエリア内にはいかせないようにすること」(橋岡大樹)。ところが、前半の浦和は名古屋にボールを動かされる中でバイタルエリアが空く傾向に陥り、「相手は僕のことを知らないので、スペースでボールを受ける回数は多かった」と名古屋の児玉駿斗は振り返る。
序盤の8分にはFK崩れの展開から、宮原和也のパスに対して背後に抜け出したジョーにシュートを打たれると、21分にも長谷川アーリアジャスールの縦パスからジョー、児玉、シャビエルとつながれたあと、シャビエルに決定的なシュートを食らっている。しかし、前者は西川周作のファインセーブでしのぎ、後者はポストが浦和を救った。
そして前半終了間際の47分、名古屋にボールを動かされる中、バイタルエリアでノンプレッシャー状態に近かったシャビエルに左足のミドルシュートを決められてしまった。「例えばW杯を見ていてもあのような状況になれば、誰か一人はアタックにいけるような状況を作れていた」と柏木陽介は猛省していたが、ルヴァンカップのグループステージで戦った時の名古屋はシャビエルが不在。そのため、フリーであの距離ならばシャビエルはゴールを決めてくるという“肌感覚”の欠如が、失点につながった側面は否めなかった。
しかし、前半終了間際の手痛いパンチが良い薬になったのか。後半の浦和は相手のアタッキングエリアのスペースを消しながら、縦パスのコースを遮断し、ボールや人にアプローチできるポジション取りや意識付けが改善されていた。「後半のほうが窮屈な感じがあった」と児玉が言えば、新井一耀は「相手もジョーのところを固めてきた」と振り返る。68分に阿部勇樹を投入し、中盤を3ボランチ気味の配置にすることで、名古屋が謳歌できるアタッキングエリアのスペースを与えなかったのも大きかった。
守備が安定すれば、攻撃には余力が生じる。1-1で迎えた70分には柏木のCKに槙野智章が頭で合わせて勝ち越し点を奪うと、78分にも「得意な形」と振り返った遠藤航が、柏木のCKをニアサイドから頭でゴールに流し込み、勝負を決めた。
「ボールを保持していても、後半は特にうまく崩せていた形は少なかった」と名古屋の和泉竜司は振り返る。失点の形を猛省し、ハーフタイムで修正を施す。さらに試合中の用兵で綻びが生じる可能性も狭める。名古屋の攻撃に対する“処方箋”が明確とはいえ、守備で勝利へのリズムを作り出せたことは、一定の評価を下してもいいだろう。
▼オリヴェイラ監督の色が見えてきた攻撃
一方の攻撃面では確かな成果と、静岡キャンプで_取り組んできたバリエーション強化の片鱗が見える90分だった。
中断期間明けの勝利を手繰り寄せた3ゴールは、すべてプレースキッカー柏木のCKから生まれた。天皇杯・3回戦でもJ2・松本山雅FCを葬り去ったのは、2本のセットプレーだった。実は浦和戦を控えた名古屋はトレーニングの中で、セットプレーの守備の仕方を従来のゾーンだけではなく、マンツーマンも並行して練習していたという。「いつもはゾーンだったけど、今日はマンツーマンだった。どっちになるかは分からない状況で両方練習していた」と新井。2点を奪った遠藤のマーカーは長谷川、槙野のそれは新井だった。
セットプレーで点を取り切れるチームは強い。それはサッカー界の定説だが、CKからの3アシストで勝利に貢献した柏木は「相手の守備もどうなんやろ?と逆に思ってしまうけどね」と首を傾げた。名古屋のセットプレーにおける守備のアプローチが、どこか“どっちつかず”だったことを踏まえれば、手放しで称賛するのは危険だろう。
むしろ、攻撃面での成果は「裏を突くシーンはたくさんあったと思う」と宇賀神友弥が振り返ったように、“背後の攻略”にあるかもしれない。例えば、後半立ち上がりの49分、マウリシオ・アントニオからのロングフィードに興梠が最終ラインの背後へ抜け出した場面など、ミシャ時代はタブーの一つだったロングフィード一発での裏狙いが、何度かゴールの予感を漂わせていた。「裏にバーンと蹴られてチャンスを作られた場面もあるので、修正していきたい」とは宮原のコメント。CBの新井も「一発のパスで興梠選手や武藤選手が裏に抜け出してくるところは怖かった」と述懐している。
攻撃陣が共通して望んでいるコンビネーションプレーからゴールを襲う場面は、1トップ2シャドーによるコンビネーションから最後はマルティノスがフィニッシュに持ち込んだ15分の場面など、90分を通じて、限られた回数ではあった。洗練されたコンビネーション構築には時間が掛かることも鑑みれば、相手が脅威に感じる攻めのアプローチにトライすることで相手を追い込んでいく。それも、勝つためには必要な方法論の一つではないだろうか。
蹴球界のマルチロール・郡司聡
30代後半の茶髪編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスに転身。現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測しながら、編集業・ライター業に従事している。
1 匿名の浦和サポ(IP:49.98.137.252 )
相手が最下位でもオリベイラさんのやりたいことがチームに浸透し、それが少しずつ現れてきたのなら嬉しいね。しかもその成果は勝利として現れたから尚更。
だけどこっから少し苦戦を強いられるあてになるかもしれないけど、ここぞで強い浦和を見せてくれ!
2018年07月21日 13:09
2 匿名の浦和サポ(IP:180.23.245.228 )
“裏抜け一発がミシャのタブー” はダウト
2018年07月21日 13:29
3 匿名の浦和サポ(IP:123.230.120.136 )
監督の色以前に、この酷暑が続く中での連戦を考えれば、自陣でブロック作ってしっかり守りロングフィード一発の裏抜けからCKを獲得してセットプレーで仕留めるなんて、理に適った現実的な戦い方じゃないかな。
特に阿部投入でフォーメーション変更した後は安定感があった。ファブリシオと茂木の登録も済んで、セレッソ戦がどんなメンバーになるか楽しみだ。
2018年07月21日 16:18
4 匿名の浦和サポ(IP:153.221.135.190 )
風間は最終ラインと前線をコンパクトにさせる事を徹底する監督だから、ロングパス一発裏抜けは攻略法として理に叶っている。
うちは相変わらずバイタルぽっかりがしょっちゅうなので、ミドルシュート大作戦が効果的。
2018年07月21日 17:21
5 匿名の浦和サポ(IP:60.38.82.54 )
明日のセレッソは守備も硬いから、セットプレー狙いとポゼッションさせて、カウンターでマルティノスと興梠のツートップが良いと思うけど。
ファブリシオも足は速いのかな。
2018年07月21日 17:49
6 匿名の浦和サポ(IP:223.223.210.50 )
日本の夏の試合は、常時同じように戦うことはできない。
特にワールドカップの中断により、試合日程はかなりタイトだ。
守備から入るやり方は良いし、更に前半まずかったところもしっかり修正できるなど、後半戦に向けてかなり期待できる。
2018年07月21日 17:56
7 匿名の浦和サポ(IP:115.177.181.254 )
遠藤がベルギー1部、シントトロイデンへの移籍が決定しました。
2018年07月21日 18:06
8 匿名の浦和サポ(IP:126.145.86.60 )
航は明日がラスト?
2018年07月21日 18:10
8.1 匿名の浦和サポ(IP:27.143.209.17 )
そうです。航の為にも明日は勝ちたいですね!
2018年07月21日 18:41
9 匿名の浦和サポ(IP:153.139.228.1 )
オフィシャルのコメントを見ると、そうみたいです。
茂木を復帰させたのは、これが理由ですね。
2018年07月21日 18:12
10 匿名の浦和サポ(IP:182.158.81.197 )
これだけの猛暑だと体力の消耗が激しく、選手の運動量は上がらない。だから縦ポン一発はありだろうし、セットプレーで効率良く得点できる方が有利。セットプレーの練習をしなかったミシャ時代よりは進歩していると思う。
2018年07月22日 16:13
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