コラム

『左右で守備を変えた仙台戦 今季のデータが示す先制点の重要性』Jリーグ仙台vs浦和【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼”ミシャ式”対策を浦和が実施した
試合の先制点を奪うということ、常に先にリードを奪っていくことが、いかにゲーム運びを落ち着いたものにするのかというのを痛感したゲームになったのではないだろうか。1日のベガルタ仙台戦で浦和レッズは3-2の勝利を飾り、”鬼門”という言葉が付いて回ってきた仙台の地で2年連続の勝利を挙げた。この試合が試合終了間際に追撃弾を受ける苦しい展開であったにせよ、もうそろそろこの二文字からは卒業しても良いだろう。

この試合では、浦和がかつて受けてきた対策の裏返しをする形で守備の安定を図った。仙台は今季から3-4-2-1システムに取り組んでいて、安定的にポゼッションして攻撃する時は3-2-5のような形になる、浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ前監督がサンフレッチェ広島時代から日本に持ち込んだ”ミシャ式の亜種”とも言える形を採用している。それに対して4バックで対応した時に、どのような現象が起こるのかは、これまで浦和が経験してきた試合で主体的に見るチームを入れ替えるだけで済む。

結果的に、堀孝史監督は試合開始時点こそ4バックを維持する守備システムで臨んだものの、10分が経つかどうかという時点で、左サイドアタッカーの梅崎司が守備時に左サイドバックの槙野智章の横まで降りて5バックを形成し、インサイドハーフの武藤雄樹がサイドに流れて梅崎の前方をカバー。青木拓矢と柏木陽介がダブルボランチのように中央に構える5-4-1に守備システムを変更した。つまり、左サイドを順次後ろに下げることで、攻撃時に4バック、守備時に5バックという可変をしたことになる。

サッカーには「両サイドで同じ守り方をしなければいけない」などというルールは無いのだから、可変するサイドを固定することによって右サイドアタッカーのラファエル・シルバを最終ラインまで戻す必要がなくなった。梅崎が「ミーティングの時点で、このやり方もあるという話があった」という言葉を残しただけに、準備されたものの一環であり、緊急対応をしたわけではない。堀監督の理想からは少し外れたのかもしれないが、現実的で実入りのある対策だったと言える。

これはペトロヴィッチ前監督の就任初年度である2012年の時点でコンサドーレ札幌が浦和に対してやってきた守備戦術であり、全く目新しいものではない。とはいえ、浦和がJリーグでも確立された形の一つになったミシャ式の経験を持つチームだからこそ、スムーズに移行できるという面はあった。これはこれで、サッカーという世界における人や時間の流れを感じさせるものであり、ちょっとした感慨のあるものだった。

▼仙台戦前の6試合で約72パーセントの時間がビハインド
冒頭に記したように、この試合の浦和で最大にポジティブなポイントが、先制点を奪うゲームができたことだ。浦和はこのゲームが7連戦の最後だったが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の川崎フロンターレとの第2戦をトータルスコアで換算すれば、630分間のうち追いかける展開の時間が388分間もあった。仙台戦でその時間は0分であるから、その前の6試合540分間のうち、実に72パーセントほどの時間帯がビハインドの状態だったことになる。それでいて7連戦に対して2勝3分2敗と五分の成績を残していることが不思議なくらいだが、これでは当然、必要以上にエネルギーを使ってしまう。

槙野智章はこの7連戦にフル出場し「肉体的に辛いのはもちろんですけど、ゲームの中で色々なアクシデント、トラブルがある中で乗り越えていかないといけないという精神面での強さは、この7連戦を乗り越えられたことが大きかった」と前向きに捉えた。しかし、少なからずその疲労感を大きくした原因がビハインドの時間の長さにあったことは事実だろう。

この仙台戦で8月19日のFC東京戦以来の先制点がチームに入ったこと、ミスから同点に追いつかれた後の勝ち越しゴールも浦和が奪ったことで、精神的にも戦術的にも優位な状況で長い時間を進めることができた。これは、どう逆立ちしてもコンディション差のある相手に勝利を収める上で重要な要素になっただろう。

先制点を与えてしまうことが悪癖としてクローズアップされた1カ月半ほどだったが、今季の浦和を見れば、先制した試合で勝利を逃したのは2試合しかない。それも、どちらも引き分けに持ち込まれたものであって負けたことはないのだ。つまり、今季の敗戦した試合の全てが先制点を与えたものだということになる。

これ今季のリーグ戦は残り6試合であり、3位の柏レイソルまで9ポイント差だが、すでに直接対決が終わっている。そう考えれば、直接対決を残す4位の横浜F・マリノスとの7ポイント差を埋めて、上位3クラブのどこかに天皇杯を優勝してもらうことによる”他力本願”で来季のACL出場権が転がり込むポジションを確保するのがチームの現実的な目標ラインになるだろう。そのためにフォーカスすべきは、間違いなく先制点の行方だと言えるはずだ。

※関連リンク
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轡田哲朗

1981年10月30日生まれ、埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。

コメント

  1. 1 赤い宝石(IP:220.156.86.188 )

    数字を扱った部分がものすごくわかりにくい。
    編集者とか、書き手以外に読んでチェックする人はいないのだろうか。
    悪いけど、紙媒体ならば使い物にならないレベル。

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    2017年10月04日 09:40

  2. 2 匿名(IP:116.64.25.201 )

    ↑6試合で72%追いかける展開、って1回で読み取れるけどね。読解力がないだけでわ??w

    このコメントに返信

    2017年10月04日 11:05

  3. 3 匿名(IP:182.249.246.158 )

    「わ」を使ってる時点で知性を感じないのは残念な気がする。

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    2017年10月04日 12:29

  4. 4 匿名(IP:126.199.211.11 )

    先制できるように、セットプレーからもっと点が取れると楽だね。

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    2017年10月04日 14:23

  5. 6 匿名(IP:182.250.241.10 )

    堀監督がどんな戦術を用いたかが良く分かる記事でした。この記事を見なければ細かい選手配置まで理解できなかったし、観戦する楽しみが広がります。

    このコメントに返信

    2017年10月04日 17:07

  6. 7 匿名(IP:59.171.201.132 )

    直接対決は無くても、柏は、天皇杯川崎、リーグも上位争いと降格の可能性あるクラブの対戦を残している。順調に勝ち点を積み上げるとは思えない。浦和は全勝は必須ではあるが、お互い対戦カードを残す鹿島、川崎もあり3位の可能性はあり。

    このコメントに返信

    2017年10月04日 17:59

  7. 10 匿名(IP:59.171.201.132 )

    第1波が梅ちゃん、慎三、陽介の3人でのコンビによるセンターの崩し、第2波が両サイドのラファと高木の高速駆け上がり、また真ん中が空いたところに第3波の折り返しパスに反応した後方からのミドル乃至ロングシュート、そんなダイナミックな攻撃を見てみたい。

    このコメントに返信

    2017年10月04日 19:14

  8. 11 匿名(IP:59.171.201.132 )

    川崎、鹿島共に浦和と柏との2カードを落とすわけない。ハードな戦いになるね。

    このコメントに返信

    2017年10月04日 19:24

  9. 12 匿名(IP:27.143.73.181 )

    改めて数字を含めて解説しなくても先取点が大事なのは誰でも知っているでしょう。それにどのチームも先取点を取れば勝率は高いと思うよ。

    このコメントに返信

    2017年10月04日 19:41

  10. 13 匿名(IP:182.167.165.236 )

    試合前に説明、、、堀監督もたいしたもんじゃん。

    このコメントに返信

    2017年10月04日 19:51

  11. 14 匿名(IP:182.251.246.6 )

    さすが「イタリア在住経験も」
    だからなに?

    このコメントに返信

    2017年10月04日 19:52

  12. 15 匿名(IP:125.200.30.38 )

    ヤバヤバルヴァン仙台川崎に勝ってる‼︎!

    このコメントに返信

    2017年10月04日 19:55

  13. 16 匿名(IP:49.106.192.165 )

    こういう記事や筆者に文句つける人は何を期待しているのだろう。
    無料で読めているわけだし、何か個人に損害があるわけでもないのだから、いちいち文句を書き込むレベルの事ではないと思うのだが。

    俺は先取点取られた割合とか時間とかいちいち計算しないし、こうやって出してくれるのは助かる。

    このコメントに返信

    2017年10月04日 20:10

  14. 17 匿名(IP:121.108.209.40 )

    もうさ、サッカー解説で「先制点が重要」ってNGワードでいいんじゃないかな~

    このコメントに返信

    2017年10月05日 02:08

  15. 18 匿名(IP:153.206.12.142 )

    神戸のDF岩波が来季フリーらしい
    うちに来るかな?

    このコメントに返信

    2017年10月05日 06:03

  16. 19 匿名(IP:182.250.243.48 )

    ワシントンがブラジル4部リーグで監督やるらしい

    このコメントに返信

    2017年10月05日 08:27

  17. 20 ウラワ(IP:220.213.20.39 )

    鈴木・岩波この二人は欲しい後はマウ級の外人

    このコメントに返信

    2017年10月05日 08:28

  18. 21 匿名(IP:163.49.207.238 )

    文句言うこととが目的みたいな奴もいるし、そういう奴は何でも文句つけるし文句つけるところを探している
    なので相手にせずノイズくらいに思っておくのが精神衛生上好ましい
    と、自分に言い聞かせてる

    このコメントに返信

    2017年10月05日 14:50

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