コラム

『勝ち点を失った磐田戦 焦点が当たるシーズン内の優先順位』Jリーグ磐田vs浦和【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼内容の良さをスコアに反映できなかった前半が痛手に
浦和レッズの17日のジュビロ磐田戦は、前半のうちに得点機をことごとく逃してしまったことで苦しいゲーム運びとなり、やっとの思いで興梠慎三が同点ゴールを挙げて1-1の引き分けに持ち込んだ。

このゲームではセットプレーから1失点をしているが、セットプレーというのは特に守備において、どれだけトレーニングをしても相手の狙いにハマってしまうと失点しがちなものだ。そうした意味で、1試合の中で1失点というのは起こり得る。その中で、もう何年も課題になっている先制されて前掛かりになってカウンターで傷口を広げるという悪癖を見せなかったのはポジティブな事象だ。

その一方で、前半のうちに同点にするチャンスは少なからずあった。前半32分から35分に掛けての3分間で、矢島慎也には3度のゴールチャンスがあったし、前半終了間際には高木俊幸もゴール前でフリーのチャンスを逸してしまった。磐田の名波浩監督は試合後に「浦和はゴールに直結するボールが多く、受け手と出し手への寄せも甘かった」と話したが、ハーフタイムに対応について話し合う時間を与える前に生み出したチャンスをスコアに反映できなかったことが、勝ち点1で終わる結果を招いてしまった。

この磐田戦を受けて、浦和は公式戦3試合連続で4-1-4-1システムを使用したことになる。リーグ前節の柏レイソル戦後やAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の川崎戦後の選手たちからは、「4バックの相手に対して前から追いやすくするため」という言葉が聞かれていただけに、3バックの磐田に対しては3バックシステムに戻す可能性も少なからずあると思っていた。しかし、そうせずに4バックで臨んだことから、少なくとも今季の残り試合はこのシステムを基本に戦っていくのだろうと予想される。

▼対1トップで見えた現象とサイドアタッカーの役割
磐田戦で見えた少し面白い現象は、1トップの川又堅碁がアンカーの青木拓矢のところまで戻ろうとする一方で、相手の2シャドーは森脇良太と槙野智章に引っ張られる場面が多かったことだ。それにより、浦和のマウリシオと遠藤航の両センターバックは余裕を持った状態になるが、遠藤が青木の横まで進出して普段よりターゲットへの距離が短いロングボールの出し手としてフリーの状況になる場面が多く見られた。実際に高木のビッグチャンスは遠藤からの一発のボールで生まれている。この日、浦和在籍期間でリーグ戦では初のベンチスタートとなった阿部勇樹がセンターバックで起用される試合でも、両者とも正確なロングボールでチャンスメークをできるタイプの選手だ。相手が1トップで臨んでくるときに、一つの有効な攻撃パターンを見出すことができたゲームだと言えるだろう。

また、システム変更によってサイドからのクロスというのも今後の得点パターンとしてクローズアップされそうだ。GKの西川周作はシステム変更について「両サイドのアタッカーがそこまで守備に戻らなくて良くなっているし、バランスよく守ることはできていると思います。彼ら(サイドアタッカー)がより攻撃に力を使うことができるのかなと感じます」と話した。このゲームでは平川忠亮のクロスから矢島の決定的なヘディングが生まれ、後半から出場の梅崎司も興梠の頭にピタリというクロスを供給している。興梠が「今までより自分の近くに選手がいないとは感じるけど、そこは自分がキープすればいい」と話すように、インサイドハーフの2枚はボールを受けて前線につなげる仕事が増え、以前のように興梠の近くで構えてコンビネーションというのは距離的に辛くなっている。より、両サイドを使った攻撃を洗練させていくことが求められると言えるだろう。

▼普段のシーズン以上に大きい天皇杯の重要性
一方で、このゲームでは阿部に加えて柏木陽介をベンチスタートにして起用しなかった。ラファエル・シルバには肉離れが発覚しているが、20日の天皇杯を睨んだ起用であることは想像できる。来季のACL出場権を考えた時に、残り8試合のリーグ戦で全勝できたとしても、2位の川崎フロンターレが勝ち点13、3位の柏レイソルが勝ち点15を残り試合で両者ともに稼ぎ出した場合は4位までしか上がれない。また、どちらかのチームがそれ未満の成績になっても、セレッソ大阪と横浜F・マリノスのいずれかが勝ち点17を稼いだら4位以下になる。

そう考えると、優勝すれば日本の第2代表としてプレーオフなしに本戦から出場できる天皇杯は、今季のタイトルというだけでない大きな意味を持つ。優勝すればアジア代表としてクラブワールドカップに出場できるACLの重要性は言わずもがなだが、優勝チームに翌年の出場権が与えられる措置はない。そうした意味でも、天皇杯の重要度は大きい。

現実的に、浦和の今季はACLと天皇杯に高いプライオリティを置いて戦っていくべきだろう。日常でありチームの基本になるリーグ戦は、現在のようにコンディションを見ながら多くの選手に出場機会が与えられるべきだろう。この磐田戦の矢島のように、悪い意味でもチームの勝敗を左右する存在になることを経験するのもまた、本物の戦力になる上では必要なことだ。

天皇杯では難敵の鹿島アントラーズと早くも対戦することになるが、4勝すれば自力でタイトルと来季のACL出場を得られる。近年のこの時期の天皇杯とは違う、完全な本気モードで臨む試合を期待したいところだ。

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轡田哲朗

1981年10月30日生まれ、埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。

コメント

  1. 1 匿名(IP:126.205.208.129 )

    轡田氏のシステムを軸にした解説はとても勉強になる。2008年ガンバ大阪がアジア制覇を果たした後、がむしゃらに天皇杯を取りにいったように、来季のACL出場の為に今日の鹿島戦は何がなんでも勝ちきりたい。我々サポーターに出来るのは、熊谷を完全ホームにすること。半休を取ってこれから熊谷に向かいます。

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    2017年09月20日 14:25

  2. 2 匿名(IP:1.75.233.214 )

    かりになってカウンターで傷口を広げるという悪癖を見せなかったのはポジティブな事象だ。

    ここは本当に同意なんで勝ってるのにカウンターで負けるんだと何度思ったか

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    2017年09月20日 14:44

  3. 3 匿名(IP:115.177.149.144 )

    決めるべきところできちんと得点できるか。特に先制点。先日の磐田戦で痛い授業料払ってるので、今日はやってくれるでしょう。

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    2017年09月20日 15:45

  4. 4 匿名(IP:219.105.5.226 )

    勝ち点を失った???先制されて???勝てない上位相手に???何言ってるの、この人。

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    2017年09月20日 15:50

  5. 5 匿名(IP:182.251.252.47 )

    矢島のせいで勝ち点失ったもんな
    磐田だけじゃないけど

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    2017年09月20日 16:52

  6. 6 匿名(IP:182.251.242.48 )

    4さん今レッズは磐田より順位が上で決定機をことごとく外した結果勝ち点を失ったと言ってるので言ってる事は大概の人が理解してると思います。
    また、記事にもありますが先制されたら前がかりになってカウンターを食らって自滅するのを防いだ事は評価されていると捉えるのが正しいかと

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    2017年09月20日 16:55

  7. 7 匿名(IP:202.212.77.51 )

    浦和はビッグクラブと言われてるけど、実際は他よりお金がちょっとだけ多い程度。だから補強で他を圧倒する事は無理。
    だったらU-23を作って優秀な人材を集め育成し、トップに送り込む事によりベースの戦力をアップさせ、そこに的を絞った補強を行なう。
    育成で差を付けることの重要性をソフトバンクホークスを見て思う。

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    2017年09月20日 16:56

  8. 8 匿名(IP:49.98.161.37 )

    補強に制約があった前監督時代と違い、来期は積極的に補強することを期待してます。

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    2017年09月20日 17:00

  9. 9 匿名(IP:49.97.109.163 )

    7に勝手に付け足しで、他よりお金多いと言っても、いちおう損失補填しない事になってるし、Jリーグのライセンス制度の問題もあるから他を圧倒するような補強は出来ないよね

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    2017年09月20日 17:58

  10. 10 匿名(IP:124.255.23.145 )

    5大崩壊で何も言えずぶ~タレ10晩好きがヤジシンの台頭に焦ってそこらじゅうで矢島の悪口か、ケラケラ~

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    2017年09月23日 09:48

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