コラム

無念の離脱となったアンドリュー・ナバウト 川崎戦で見せた価値は消えない(Jリーグ川崎vs浦和)【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼川崎戦でスタメン起用することが、良さを生かした
浦和レッズは、2日のリーグ第12節で川崎フロンターレに2-0で勝利した。昨季はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を含めて4回対戦して1勝3敗。それも等々力では2敗した上にいずれも3点、4点と失点してのゲームだっただけに、そのアウェーゲームを無失点勝利で飾ったのは大きな喜びになった。

 

そのゲームで、リーグ戦では初スタメンとなったアンドリュー・ナバウトが躍動した。どうしてもプレーにアバウトさがあるタイプだけに、例えば途中出場した湘南ベルマーレ戦のように押し込んでスペースがない状態だと、その弱点がゴール前の最終局面で現れてしまう傾向にはあった。しかし、この川崎戦でスタメン起用したオズワルド・オリヴェイラ監督の判断は彼の良さを存分に引き出していた。

 

オリヴェイラ監督は「相手がどのようなプレーをしてくるかで、自分たちのやらせてもらえることは変わる」と話すように、状況対応型の割合が多い指揮官だと言える。監督それぞれに考え方があり強みもそうでない部分もあるが、少なくとも「自分たちのサッカー」を突き詰めて、その質を上げればどんな相手にも勝てるという方向に針が振れているタイプではないだろう。

 

だからこそ、最終ラインから丁寧に組み立てて人数を掛けた攻撃をする一方、相手ボール時に危うさのある川崎を相手にしたゲームでナバウトを起用したことがハマった。興梠慎三のパートナーに武藤雄樹を指名した場合、どちらかと言えばボールを受ける能力に偏った組み合わせになる。一方で、ナバウトが裏抜けや多少強引な選択のドリブルを繰り返すことは、スペースがある中では生きた。

 

▼チームメートも賛辞を惜しまなかったプレー
特に、このゲームの決め手になったのが後半のプレーだった。1-0でリードしてハーフタイムを迎え、川崎はより攻撃的な姿勢を押し出すことが予想された。そこで、オリヴェイラ監督が送った指示は「後半は賢く相手の状態を利用してプレーしよう」「相手のDFラインの背後を狙っていこう」というもの。その言葉の通り、後半5分に長澤和輝、橋岡大樹とテンポよくワンタッチのパスがつながり、橋岡から背後に抜け出したナバウトに正確なパスが通った。

 

抜け出したナバウトはドリブルでゴール付近まで進んだが、少し角度が狭かった。これまでなら強引にシュートを打ってGKにぶつけるようなイメージがあったが、ナバウトは興梠にラストパス。これを興梠が押し込んだ。

 

さらに同25分には、長いボールに抜け出したところで、GKチョン・ソンリョンに倒された。これが決定機阻止と判断されて相手は退場。2-0のリードで相手が10人となり、勝利はほぼ手中に収めることができた。しかし、この後にナバウトは右肩を押さえて交代となり、気掛かりなところになっていた。

 

試合後のミックスゾーンに、ナバウトは「治療があるため」というクラブからの説明で姿を見せなかった。それでも、各選手からの彼に対する言葉は、そのプレーの素晴らしさを物語るものだった。

 

「武藤だと引いてゲームを作ることが多いですが、割と自分の近くでプレーしてくれることが多かった。勝負もできますし、周りを使うこともできるので。今日に関しては、アンドリューが非常に良い仕事をしたんじゃないか」(興梠)

 

「時間を作ることもできましたし、慎三くんの前にスペースもあって、そのスペースを使うことができました。アンドリューが頑張って動くことでスペースができていた部分もあったと思う」(宇賀神友弥)

 

「あいつは勢いがあるし、スピードもあるし、最近は日本のサッカーに慣れてきている。パスを出してから、人を使って出ていくこともできるようになってきていて、すごく今日は良い形で前に厚みが出ていたんじゃないかな」(柏木陽介)

 

▼強く、熱い思いを持つ男には残念な診断結果が
果たして、心配されたナバウトの診断結果は、オリヴェイラ監督の鹿島アントラーズ戦に向けた会見で明らかになった。それは「右肩を脱臼し、それに伴う小さな骨の欠損もあります」というもの。少なくとも、5月19日のガンバ大阪戦までは欠場することが確定的になってしまった。

 

彼は浦和に移籍が決まった直後、3月のインターナショナルマッチウィークで初めてオーストラリア代表に選ばれ、「誇りに思うし、浦和で良いプレーをすることがワールドカップにつながると思っているんだ」と話していた。何よりも「アジアで最高のリーグだし、それも浦和からオファーが来たのだから興奮したよ」と加入直後に話していたのは忘れられない。2度のアジア制覇が最も大きな要因だろうし、ビジュアルを含めたサポーターの様子が海外メディアで取り上げられることだって少なくない。それだけ、浦和というクラブは国内で思われているよりも国外での評価、評判は非常に高い。

 

そうした中で、ナバウトはチームの調子の上がらない時期にも「僕は走るのを止めないし、ダラダラするようなことは絶対にしない。死ぬほど走り続けるし、ゴールを決めるまで走り続ける」と、気持ちのこもった言葉を残していた。

 

そうした彼の生かしどころをオリヴェイラ監督が見つけ、チームにも順応し始めた矢先の負傷だけに、残念な思いが強い。もしかしたら、彼がワールドカップに行くためのハードルもより高くなってしまったのかもしれない。

 

それでも、この川崎戦でナバウトが見せた価値は消えない。彼の持つアバウトさは、綺麗にやろうとする傾向のある浦和の攻撃陣のセオリーを、良い意味で崩す面も多々ある。まずは、しっかりと治療して復帰してくれることを願いたい。

コメント

  1. 1 匿名の浦和サポ(IP:1.75.228.13 )

    アンドリュー ナバウトの怪我
    気になります

    このコメントに返信

    2018年05月05日 10:04

  2. 2 匿名の浦和サポ(IP:124.140.246.94 )

    大原で練習後小さな子供達の頭をなでながら、笑顔でサインに応じていた姿が印象に残っています。一日も早い回復を心から祈っています。
    オリベイラ監督が怒りをあらわにしてくれたことを心強く思うとともに、相手のGKに対して改めて怒りを覚えます。
    オーストラリア代表としてWカップに出場できることを切に祈ります。

    このコメントに返信

    2018年05月05日 10:04

    • 2.1 匿名の浦和サポ(IP:114.198.217.136 )

      このコメントにダメしてるやつって笑

      2018年05月05日 10:56

    • 2.2 匿名の浦和サポ(IP:1.72.4.149 )

      スマホだと、スクロールの時に指がちょうど触れたりするんだよ。
      現行Verになってから、浦議見るときの持ち方わざわざ変えてるくらい。
      そういう不測の「ダメ」だと思ってやって。
      取り消せないし。

      2018年05月05日 12:17

    • 2.3 匿名の浦和サポ(IP:60.124.64.224 )

      > 2.2 さん
      もう一回押すと取り消せますよ

      2018年05月05日 13:46

  3. 3 匿名の浦和サポ(IP:124.36.48.97 )

    とにかく早く怪我を直し
    オーストラリア代表としてWカップに出場できることを切に祈ります。

    このコメントに返信

    2018年05月05日 10:18

  4. 4 匿名の浦和サポ(IP:119.241.74.249 )

    すでに「浦和の漢」の素養充分ありってことだね。

    このコメントに返信

    2018年05月05日 10:39

  5. 5 匿名の浦和サポ(IP:60.71.62.171 )

    何より、顔つきが良いよね。
    何事も前向きに捉えて、ナバウト!待ってるぜ!

    このコメントに返信

    2018年05月05日 10:55

  6. 6 匿名の浦和サポ(IP:202.215.80.50 )

    シンプルに前に進む意識がありながら、周りを生かすプレーもできるところがよいね。今までの浦和の選手には足りなかった動きができるだけに、怪我による離脱は残念。

    このコメントに返信

    2018年05月05日 11:55

  7. 7 匿名の浦和サポ(IP:210.224.233.55 )

    川崎の正GKの交代を希望します。奈良竜樹を推します。

    このコメントに返信

    2018年05月05日 12:13

  8. 9 匿名の浦和サポ(IP:1.75.241.211 )

    後援会バスで鹿スタ遠征中、今からもつ煮が楽しみ。

    このコメントに返信

    2018年05月05日 12:21

  9. 10 PのK(IP:126.245.73.33 )

    「プレーにアバウトさがあるナバウト」
    ここ笑う所ですよ〜

    このコメントに返信

    2018年05月05日 12:25

  10. 11 匿名の浦和サポ(IP:1.75.230.6 )

    完全に武藤の上位互換だったからな。唯一の武器だった運動量もナバウトもかなり走ってくれるからもうそれだけじゃ武藤は苦しいなオリヴェイラは厳しそうだし

    このコメントに返信

    2018年05月05日 12:39

  11. 12 匿名の浦和サポ(IP:111.99.18.187 )

    ナバウトの雄姿が一日も早くピッチの上で見れますよう。

    武藤も強力なライバル出現で危機感もってると思う。
    今日の鹿島戦 アレ・フォルツア・武藤!

    このコメントに返信

    2018年05月05日 12:46

  12. 13 匿名の浦和サポ(IP:49.98.130.99 )

    ワシントンを思い出させる力強さがいい!

    このコメントに返信

    2018年05月05日 14:09

    • 13.1 匿名の浦和サポ(IP:153.204.119.86 )

      走るフォームはエメに近くない?

      2018年05月06日 00:49

  13. 14 匿名の浦和サポ(IP:49.106.188.74 )

    スタ入場まで30分、もつ煮を手にするまで90分、自分が生きているうちで過去最高に並んだ。

    このコメントに返信

    2018年05月05日 14:48

    • 14.1 匿名の浦和サポ(IP:1.75.7.221 )

      美味しかった?

      2018年05月05日 23:18

  14. 15 匿名の浦和サポ(IP:124.27.247.8 )

    猪突猛進かと思ったら、そんなことなかったですね。思ったより柔軟かつ起用なのかも。馴染んできたら、もっと良くなる気がするし、それだけに早々のケガは残念です。

    このコメントに返信

    2018年05月05日 15:37

  15. 16 匿名の浦和サポ(IP:182.251.246.5 )

    そんな川崎さん、無事に連敗お疲れ様です。

    このコメントに返信

    2018年05月05日 16:34