コラム

適切なリスクをどこで誰がかけるのか:Jリーグ2021第5節 vsコンサドーレ札幌 分析的感想【96のチラシの裏】

2020年9月より「96のチラシの裏」で連載されている浦和レッズコラムを浦議にも転載させていただくことになりました。
以下、96さんのコラムになります。


一回ドラフトが全部消えたので2回このエントリを書いています。おかしくなりそうです。

両チームのメンバーと嚙み合わせ

 

f:id:reds96:20210318235930p:plain

 

浦和ベンチ:彩艶、田中、敦樹、大久保、柴戸、武田、武藤

 

札幌ベンチ:菅野、岡村、中野、青木、小野、高峰、中島

 

浦和は前節マリノス戦から中2日、札幌はガンバ戦が中止になったため1週間空いてフレッシュなコンディションで戦う今節。浦和は関根が右SH、阿部が右SB、小泉がCHに入るメンバーでスタート。一応4-2-3-1で並べてますが、明本がトップ下に入る時は役割的にはほぼ2トップと言って良いと思います。阿部のSB起用は宇賀神のコンディション不良によるものみたいなので、イメージとしては前節の後半にプレーしたメンバーに近いですね。金子は浦和でのリーグ戦初スタメンでした。トピックとしては小泉のCH起用が前節の後半から続いた点で、これは開幕節以来の論点となっているゴール前の人数不足問題に対する回答として考えられるアイデアですが、たぶん今節は、どちらかというと敦樹をベンチに置くという決断が先に来ていて、そうなったときに中盤でのつなぎ役を確保するために、宇賀神が出場できない分の右SBとしての阿部と併せて小泉をCHで起用するという判断だったのかなと思います。

 

札幌のほうはおなじみの4-2-3-1システムで、宮澤が最終ラインに落ちることで4-1-5を作って相手を押し込んでいくスタイル。いわゆるミシャ式と4-4-2の噛み合わせはどちらが有利とはいえない面白さがあって、これはミシャ・レッズがそうだったんですが、4-4-2相手にはやりたい放題破壊できるゲームと、逆にどうしても自分たちがサイドから崩されるゲームの2パターンがありました。要はどちらがボール保持に長けているか、相手のプレッシングを恐れずにボール保持からアタックしていけるかという差だと思うんですが、ミシャ式でつくる4-1-5の5トップの形が一般的に4枚の最終ラインの大外に大きなプレッシャーを与えられるのに対して、守備時は3-4-2-1だとサイドをWBが一枚で守る、もしくは5-4-1で撤退しても4の両サイドはシャドーの選手が担うことなり、ここがサボると4-4-2はサイドに2枚、さらにサポートにCHが寄ってくれば3枚使えることになるので、サイド起点でシャドー、WBを攻略されると5バックが順番に引っ張り出されて、最後ゴール前にスペースが出来てしまうという感じです。なので実は3-4-2-1(5-4-1)に対しては強気にボールを繋いでサイドから順番に相手の裏を取っていき、一枚ずつ引っ張り出していくのが結構有効で、特にやり方が完全にばれていた中期以降のミシャ・レッズは4-4-2ベースからの5バックへの可変やなんかで守られ、逆にサイドの人数不利から順番に崩されて失点というパターンが4-4-2相手には多かったと記憶しています。

 

で、そういう意味で今節はどちらが繋げるか勝負になったら面白いと思ったのですが、結果的にはリカルド・レッズは繋ぐというよりも潔く受けに回る割り切った戦いをすることとなりました。いろいろ理由はあると思いますが、まずは今節に臨むうえでのスケジュールの差、浦和だけが連戦であるという状況と、キャンプ中のTMでプレッシングから大量失点してしまったネガティブなイメージがこの決断に作用したと思います。また、開幕4節を終えて勝ち点4、そして次節が川崎との対戦となることを踏まえて、今節は是が非でも勝ち点を積み上げておきたいという成績面での思惑もあったかもしれません。加えて、これまでもたびたび触れている通りリカルドのサッカーを体現するにあたっての象徴的な選手は小泉と敦樹ですが、この二人はJ1初挑戦のシーズンです。J1のインテンシティや連戦、初めて対戦する相手選手といった要素から疲労が蓄積しているのは以下の小泉のコメントの通り間違いなく、彼らのプレータイムマネジメントを繊細に行う中でボール保持を押し出していくにあたってのベストメンバーを揃えられないという事情もあったかもしれません。

 

―運動量の多いプレースタイルだけに、連戦がどう影響してくるか心配な部分もある。

「昨季は連戦が4試合目になるとキツイという感じがありました。それと中2日はやはり大変なので、試合が終わった瞬間から、いかに次の試合に向けて良い準備をするかというところと、試合中もただ走り回るのではなく、いかに頭を使ってプレーするかというところがポイントになると思っています。

www.urawa-reds.co.jp

 

で、それならいっそ割り切ることも視野に入れようという判断というかアイデアがベンチにあったのかなという気がしていて、こう考えるとリカルドは何がなんでも自分たちのサッカーに取り組むんだという姿勢をほとんど変えなかったミシャに比べて現実的とも言えるし、いや挑戦し続けると言っていたのだから失敗しても挑戦してくれよと思う人もいるかなという感じがします。

 

ずっと札幌のターン

 

割り切ることも視野に入れようと書いたのは、レッズがゲーム開始直後から割り切った守備をしていたわけではないからです。ゲーム開始直後の浦和のボール非保持の配置と隊形は以下のような感じで、少なからず前からボールを追っていこうという姿勢も見せていたと思います。

 

f:id:reds96:20210319182929p:plain

 

4-1-5のアンカー役の深井を小泉が見るようにCHが縦関係になり、札幌の最終ラインのパス回しに連動してそのまま健勇と並ぶ位置までプレッシャーをかけに行く形をベースに、明本もなるべく札幌の最終ラインの選手を見ていくような形で、狙いとしてはおそらく宮澤が降りるのに連動して左右に大きく開き、SB化する選手のところで追い込んで、浦和の最終ラインの4枚と札幌の5枚をある程度晒す代わりに近いところのパスコースを全部切って奪い切ろうという感じだったのではないかと思います。

 

ただこのやり方は正直全然ハマらなくて、札幌がGK中野を使ってビルドアップを安定させ、浦和の第一プレッシャーラインで捕まらないようなパス回しを出来てしまっていたので、その後ろで隠したいスペースがうまく隠れず、ボールが容易に前進してきてしまうという状況になっていました。中野の繋ぎへの参加は安定していましたし、そもそも浦和の第一プレッシャーラインのスイッチの入れ方が曖昧で、左右に開いたCBにボールが入った瞬間に追い込めているという状況自体がほとんど起きていなかったので、空けることになってしまう金子の両脇のスペースに降りたシャドーにボールをつけられたり、中・長距離のパスによる大きな展開でサイドごと変えられてしまったりと、あまり札幌は苦労していなかったように思います。

 

で、そうなるとミシャ式らしい左右のWBによる1on1やシャドーのターンからのアタックが多く出るようになり、浦和の4バックが晒されることになるわけですが、そうなったらSHが最終ラインまで降りて5、6バック化してでも枚数を揃えて対応しようという約束になっていたようです。

 

阿部の右サイドバック起用に関して言うと、ビルドアップでうまさがある選手なので、うまく出口になるようにという意図を持って起用しました。ただ、ディフェンスのところを考えると、完全にサイドバックという形にすると、今回の札幌のことを考えると、最初に出た関根(貴大)、途中から入った田中達也が5バック気味になったりしながら、という感じでいきました。どうしても完全なサイドバックだと対人のフォローが増えてしまうので、うまくカバーしながらでした。

 

www.urawa-reds.co.jp

 

ゲームは開始4分に金子が札幌のビルドアップの初手を引っ掛けてゴール前で関根がボールを奪い、小泉の惜しいミドルシュートで開幕しますが、その後は終始札幌ペース。大きな展開からWBの仕掛けや、浦和のビルドアップの局面で深井が小泉を潰してからのショートカウンターで惜しいシュートというシーンが印象的でした。今節の札幌は僕がこれまで観た中で、ミシャ就任以降最も「ミシャ・レッズ」に近いサッカーだったと思います。過去の札幌はミシャ・レッズのときほど最終ラインからのビルドアップにこだわりを持っていない印象で、ターンとドリブルの上手い2枚のシャドーが中盤まで降りてきてボールを運んだり、そもそも速いFWを裏に走らせたり、中央の選手がサイドに展開してからアーリークロス爆撃をしたりと毎年いろいろな手法でゴール前に迫っていたのが過去3年間の対戦だったと思うのですが、今節は最終ラインのビルドアップから大外と中を使い分けつつ多彩な攻め手で相手をゴール前に釘付けにして殴り続ける「あの頃」のサッカーで、得点を取られなかった以外はボコボコにされていたと言っても良いほどやられたんですが、その裏で僕の観てきたミシャのサッカーがまた観れた嬉しさというか懐かしさを感じました。ミシャ・レッズ最大の武器であった1トップ2シャドーによるコンビネーションやサイドをダイナミックに崩していくサーキュレーションはあまりありませんでしたが、金子や田中、中野など「出来る」新卒選手をスカッドに組み込みつつここまで構築してきたというのは素晴らしい仕事だと思います。

 

飲水タイムまでの約20分間でパス146本(浦和は60本)、ボール保持率62%と札幌に試合を支配されることとなった浦和は、26:50前後で小泉が深井に狩られてのショートカウンターから金子のポスト直撃のシュートを被弾。その後もクリアボールを回収されて連続で殴られる展開が続き、40分前後まではほとんど札幌のターンでした。浦和は39:53前後の関根のターンを起点に少し押し込み、41:15前後のパス回しから汰木のクロスに健勇が完璧に合わせたものの中野のナイスセーブ。お互いにゴールを割れないまま、札幌ペースで前半は終了します。

 

ミシャの下での正しい道

 

後半もあまり展開は変わらず、健勇の落としのミスから金子にエリア内に入られ、奪い返したボールを小泉につけたところで出しどころがなく、時間を作ろうとした瞬間に深井に寄せられてロストからエリア内の対応という感じでスタート。小泉は配置上対面となる深井のマークを受けることが多かったですが、小泉のコンディションの部分で制約があったのと、深井の出足の鋭さと深さがちょっと小泉の予想を超えていてやられてしまったかなという感じがします。正直札幌にマンマークの成分はそれほど強く感じなくて、持ち場に近いエリアの人を捕まえる意識が高いんだな、というくらいの感じだったのですが、多く指摘されているように小泉が深井に捕まることによるロストが流れを崩しピンチを招いたのは間違いないことですね。正直小泉にボールが入った前後のプレーがあまり良くなくて、小泉が欲しい脚にパスが来なかったり、明らかに小泉に目をつけられている状態でボールが来たり、彼が時間を作れるのに甘えてか周囲が受けられる位置に入れていなかったりという組織としてのエラーも大きかったかなとは思いますが、5節を消化して小泉(と敦樹)がこのチームでキーとなる選手というのは全てのチームにバレていると思いますし、今節の札幌のようなアグレッシブなチームは彼らを狩場として注視していくのでしょうから、彼ら自身がこのプレッシャーにアジャストして、狩りに来た相手を狩り返すくらいのプレーを期待したいところです。まあでも今節に関しては深井を褒めた方が良いような気がしていて、ボール狩りが得意なボランチとしては若い時から相当評価が高かった選手ですし、深井にとっては事前情報通りにボールが集まるなら、そして小泉のような体でキープするタイプの選手でなければ、これくらいはやれるよと言う感じかもしれません。

 

その後の流れで47:20にはルーカスフェルナンデスのクロスに大外で田中駿汰が至近距離で合わせますが西川のスーパーセーブ。49:38前後にはサイドチェンジから菅の仕掛け、エリア内にクロスまで。後半序盤の浦和は札幌のビルドアップの局面に対して4-4-2セットのまま小泉があまり前に出ず、中盤のスペースは消しておきたいという感じで前半よりは保守的に守っていたと思いますが、結局は札幌の中・長距離のパスを制限できないので構造は前半とあまり変わらなかった気がします。ほとんど画面外でしたが、札幌はWBを中心に裏への長いランニングを仕掛けていて、それに反応して最終ラインが下げられてしまうということも要因としてはあったと思います。

 

51:40前後に駒井が金子との競り合いに勝ってからのドリブルシュートを枠外に外すと、浦和は関根に代えて田中達也を投入。関根のプレータイムの制限もあると思いますが、この交代から浦和は5バックを早めに作るようになったと思います。同時に反対サイドの汰木は前半同様山中を晒さないようにWBの面倒を見るので、一時的には6バックになるような後ろにかなり重い形となりますが、これによってエリア内に密集を作ることが出来たので、札幌が欲しい仕掛けのためのスペースを消し、クロス対応の枚数を増やすという意味ではある程度機能したんじゃないかと思います。

 

浦和は54:30前後の阿部のロングドリブルでの持ち運びから札幌を押し込んでいくつか崩しのシーンをつくったものの、勢いを出そうとして前半同様のプレッシングに出ると中野にボールを逃がされてハマらない構造は同じ。逆にフィードから前進され、56:50前後の駒井のミドルシュートの流れまで。61:22前後で菅の裏へのランニングに反応した田中が接触し二人が倒れますがオフサイドの判定。このシーン、オフサイドはかなり微妙な判定だったので、もしかしたらVARでオフサイド取り消しからPKという判定もあったかもしれないという意味では非常に危険な場面でした。

 

63分に浦和は選手交代。小泉に代えて敦樹、汰木を下げてJ1デビューとなる大久保を投入。このあたりも負担が大きく変えの利かない選手へのプレータイムマネジメントを感じます。5-4-1で守る浦和に対してサイドの仕掛けが難しくなってきた札幌は、サイドが空かないので中央も使いにくくなるというミシャサッカーの典型的な難しさが出て来ていて、これを解決するために浦和時代は静止状態から仕掛けられるドリブラー(関根、宇賀神)、そして5レーンを埋められても強制的に中央を崩せるワンタッチコンビネーションを用意し、それらを発揮するためにサイドの深い位置をとってやり直す、逆サイドにいってまたやり直すという組み立てをしていたのですが、今節の札幌はサイドに入ったら仕掛け、そこからのクロス攻撃へと偏っていったように思います。札幌も現状スカッドのすべての選手が使えているわけではないので、このあたりに積み上げを出せればもっと怖いチームになっていくのではないかと思いますが、一度押し込んだ状態から中央を経由してサイドを変え、焦れずにに押し込み続ける中でペースをコントロールしつつ仕掛けを狙うというのはあまりなかったですね。一度撤退すると5-4-1になる構造上セカンドボールの回収が難しく連続で攻められてしまうとか、攻め込んだわりに点が取れないと終盤ペースが落ちてくるという悪いところもミシャらしいチームでしたが、ミシャの下でサッカーをしている以上これは正しい道なのではないかと思います。僕がこう言うのはおこがましい話ですけど。

 

適切なリスクをどこで誰がかけるのか

 

浦和は交代出場の大久保がドリブルのキレを見せて獲得したFKを阿部が蹴りますが中野のナイスセーブで阻まれると、ゲームは残り15分で拮抗した状態へ。76:40には大久保の頑張りからこぼれ球を敦樹が3人に囲まれながら完璧に処理して健勇に繋ぐと、明本を経由して田中がエリア内で強烈なシュート。明本のボールが大事に行き過ぎたのか弱かったので一度スピードを落として撃つ形になってしまい中野に阻まれましたが、浦和としては最終ラインを晒してでも前にくる札幌の中盤をうまく裏返せた数少ないシーンでした。明本は今節を通じて、特にオンザボールで良いプレーがあまり出ませんでしたが、J1のプレッシャーの中でプレーするには少し足元の技術が課題になるかもしれません。大外で仕掛けるプレーが得意ではないことは最初からわかっているので良いのですが、狭い局面でプレーするのに武藤や小泉、関根と同じ性能を求めるのはちょっと厳しい感じがします。その分走れますし、フィジカルコンタクトはかなり強いので違った特徴という意味では面白い存在だと思いますが、特に崩しの場面でスムーズな連動、走りこむスペース、使うスペースの共有が出てくるまでは明本の個人技のところで多少の物足りなさが出るのかなという感じです。主にファーストタッチのコントロールが大きくなることが多いので、そこにアジャストしてくるとかなり見え方は違ってきそうですが。やることがお互いにシェアで来ていて準備が出来た状態であればあまり気にならなくなると思うので、チームの成熟とともに良さが出てくればいいなと思います。

 

81分に札幌は青木を投入。青木をシャドーに入れて、金子拓郎がWBに回っていたと思います。金子をWBで起用したということはミシャにとっては彼が「静止から仕掛けられるドリブラー」なのかなと思いますが、大外につける長いボールは最初から5枚を埋める浦和の最終ラインが簡単に通さないようにできていたので、前半ほどの怖さはあまり感じることなくゲームを終えることが出来ました。たぶん金子のサイドで静止からの1on1があったのは86:10前後の一度だけだったと思いますが、抜き切らずに左足クロスを逆サイドで深井が合わせるも西川がキャッチで対処できました。そもそも金子と青木が2枚ともシャドーみたいな立ち位置になることも多くて、ちょっと窮屈そうにしていたかもしれません。

 

ゲームは最終局面、88分に明本に代えて武藤を投入。ロスタイムには大久保が胸トラップから前を向き、相手の最終ラインにアタック。5枚のラインを収縮させたうえでサポートに入った山中に預け、クロスから健勇のおっしーーーーヘディング。これが決まれば最高だったんですが、その後はお互いに明確なチャンスなく試合終了。浦和は自陣でゴールを守る時間が長く苦しみながら、札幌は特に中盤までの時間帯でゲームを支配し、浦和ゴールに幾度となく迫りながらの引き分けとなりました。

 

そもそもボールを保持して相手のペナルティエリアにアタックする回数がかなり少なかった今節ですが、浦和にとってはゴール前の崩しの局面をどうしていくかと言う部分でも難しさがあったゲームとなりました。特徴的だったのは62:17前後のシーンで、小泉と健勇がなんとか中盤でボールを収め、浦和の右サイドで田中が起点になった場面です。

 

f:id:reds96:20210319175415p:plain
札幌はこのようにボールホルダーを潰しに各選手が持ち場を飛び出す関係で、そのカバーリングを行うボランチコンビがいた場所が空きやすい。この場面ではセカンドボールの競り合いに参加したキムミンテの代わりに宮澤が最終ラインへ、ボールサイドのサポートに深井がサイドへ出張して、真ん中はいない。

 

この場面、いろいろと今の浦和の課題が詰まっていて、まずはサイドの田中にボールが出たタイミングで明本がボールを受けに降りて、そのままWBの裏へランニングしようとするのですが、田中と目が合わないまま動き出し、そのままプレーを変えなかったので、明本にはボールが出ませんでした。ここで田中は迷った末に一度対面の菅と対峙して、その後阿部に戻します。ここで速いパスが小泉に出ていれば、背中側に駒井が戻ってきている小泉は左足に持ち替えて中央へ…というコースが取れたはずでした。で、ボールを受けた阿部には駒井がプレッシャーに出たので、横の金子に渡します。この時点で金子はフリーなんですが、金子はルックアップして味方を探した後、一番展開しやすかった山中に金子拓郎がマークについていることを見て、安全側で槙野へと展開します。ここでも金子には自分がフリーだから運んでいけるという選択肢が合っても良かったと思います。結果的に浦和にとっての右サイドでの密集からボールを逃がしたにも関わらず、その優位性を使わずに自分たちでセットの状態へと入っていきます。

 

田中から小泉へのパスも、金子が中央へドリブルしていく(ボールを離さない)選択肢も、両方とも一定のリスクを伴う選択肢でしたが、浦和はその瞬間瞬間での安全側の選択肢を二つ続けて取ったことで自分たちの優位性を代償として支払い、結局セットされた状態で左サイドに展開し、浦和の選手が少ないサイドで札幌の選手に捕まり、ボールをロストしてしまいます。おそらくこの場面で一番良かったのは明本の裏抜けを使う選択肢で、ここにボールが入ればもう一段深い位置へボールを運べ、相手を押し込むことができ、しかも失ってもボールは自陣ゴールから最も遠く、自分たちのカウンタープレッシングも一番発揮しやすい箇所でした。それがうまく使えなかった時の選択肢として、後ろ、横を選択することは悪くないんですが、今の浦和は選手のキャラクター的にも組織としての共通理解としても、適切な場所で適切な期待値の勝負をするということがなかなかうまくできません。例えば田中から小泉のパスは深井が近いところにいるので怖い選択肢ですが小泉はトラップとターンがチームで一番うまい選手ですし、ボールを逃がすスペースは周囲にちゃんとありました。金子にボールが出てからも、万が一ドリブル後にボールを取られたとしても、自分の背後は自陣に戻りつつあるアンデルソン・ロペス一枚でしたし、その状況をパスを受ける前の金子は2度の首振りで確認しているはずなんです。ほとんどの場合数的同数でプレーすることになる競技である以上、ゲインのためにはある程度のリスクをかけていく必要があります。なんでもかんでもチャレンジになるのも困りますが、今の浦和は瞬間瞬間で安全側を選んでボールを持ちつつ、徐々になくなっていく選択肢に順当に困っているというのが実態なのかなという気がします。その点で終盤に出てきた大久保は判断の質は別としてドリブラーらしくボールが収まった時にリスクをとって前に仕掛けてくれたので、それに札幌も反応してラインが下がったり、ファールをとれたりとしたわけですね。今節はゲームの多くの時間帯であえてビルドアップにこだわらないという判断の下戦ったわけなのであれですが、これまでの試合でも、そしてこれからの試合でも、適切なリスクをどこで誰がかけるのか、というのは一つテーマになると思います。例えばミシャのサッカーの場合はいろんな意味で形が明確なのでビルドアップでも崩しの局面でもリスクを掛ける役割や場所がはっきりしていて、そのスイッチを押せる選手かどうかということと、その期待値の高さが評価に繋がるところがありました。一方でここまで観てきたリカルドのサッカーにおいては、そのタイミングや場所が定まっていない、正確に言うとそれは相手が教えてくれる、相手とボール周辺の状況によってそれが今だったり次のプレーだったりする、という感じがします。考えてみればビルドアップの隊形が状況に応じて違うので当たり前のことですが、そのタイミングを見つけるのに各選手が苦労している現在とも言えるかもしれません。

 

ただ試合をこなしていく中で現場に何となく見えて来ているものもあると思っていて、小泉のCH起用もあってここまでのゲームに比べて今節はエリア内に入っていく人数の確保の部分で改善が見られました。マークが分散したことで健勇が惜しいヘディングを2発見せたのはその結果ではないかと思います。同時に、そのヘディングを演出できる山中の左足、汰木の右足こそが上記のリスクをとってでもオープンにしたい場所であることは明らかですから、試合をこなしていく中で徐々に右で作って左から中へ、というパターンがセットオフェンスの基準になっていきそうな感じがします。その意味では右で作れる選手として右SB、右CB、そして2枚のCHのビルドアップ性能の向上は期待したいところで、まさにこのポジションにまだ合流できていない主力級の選手がいるのはポジティブなことかもしれません。

 

3つのコンセプトに対する個人的評価と雑感

 

f:id:reds96:20210319184740p:plain

 

「1.個の能力を最大限に発揮する」は4.5点。

 

「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」は4.0点。

 

「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は3.5点。

 

3-0で負けた前節よりも低い評価になるのは、コンセプトに反したゲームという意味では仕方ないですね。戦略的な判断としては納得できる範囲だとは思いますが。

 

f:id:reds96:20210319174608p:plain

 

というわけで、5試合で勝ち点5、順位は12位でリーグ戦の序盤をスタートすることとなりました。期待はもう少し高いところにありましたけど、だいたい昨年の終盤の成績と同じようなところにいるという意味では、スタート地点としては妥当なところかもしれません。降格4枠は非常に怖いところですが、下は下で黒星が積みあがりつつあるチームもいるので、今から残留どうこうを気にする必要はまだないかなと思います。上を見るとキリがないですが、やはり戦力・戦術的に充実しているチームがスタートダッシュを切れているという印象で、問題は多少の失点よりも得点数を伸ばしていく部分でしょうね。とはいえ昨年からはゲームの内容は大きく変わっており、数字の中身にポジティブな変化があることは明らかなので、しばらくは流れからの得点を通じてチームと個人が自信を持てるように続けていくしかない気がします。

 

次節は王者・川崎との対戦となるレッズですが、おそらく今節と同じやり方にはしないだろうと期待しています。そもそも引いて守ってもどうせ複数得点をねじ込んでくるようなチームが相手ですので、逆に相手にもリスクを感じさせるような戦い方がベターな気がします。今節敦樹のプレータイムを調整したことを含めて、リカルドが無策でぶつかるというのも考えにくいので、現状の制約の中で何を見せてくれるかを、まずは楽しみにしたいと思います。

 

 

と言うわけで、今節はここまで。今節も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。

 

また次節。

 

コメントを書き込む