■スタメンも試合も寒さを感じるばかり
なんで先発で武田を出さなかったのかな?
前回でも書いた通り、今年のレッズは、「いったい観客にどんな試合を見せたいのか?」がよくわからないことの連続だった。その、いわば最後の象徴が、きょうの武田先発せず、だった。
興梠の9年連続二けた得点も決まり、すでにこれといったテーマがなくなっている今日の試合で、唯一何かを見出すとしたら若手登用しかないと思うし、ちょうどそれにピッタリな武田という素材があるのなら、前の試合同様、先発で出しゃいいじゃないか。
ようわからん。
武田を外してでも出さなきゃいけなかった選手がいるとも思えないし。
ちょうど先発メンバー発表の時間にスタジアムに到着して、メンバー聞いてガッカリした。
まあ、ひたすら寒い。南側自由席の上段は、当然吹きっさらしで、風がガンガン当たってくる。これがとにかく寒いのだ。気温以上にしみてくる。
これでトータル2万人近く、よく集まったとは思う。最終戦で、おそらく2万4千くらいの限定としたら、定員いっぱいになるくらい集まれよ、という人もいよう。でも、今年のレッズで、この天候で、これだけ来れば来た人に本当に感謝しなきゃいけない。
スタンドでただ座ってると、やたら寒さがこたえる。コンコースに引っ込んでた方が、ずっと温かいんだから。しかも、きょうの試合に関しては、寒い観客を熱くしてくれるシーンはほぼなかった。
ぎりぎり厳しいシュートをはじいた西川のナイスセーブくらいかな。
■ピッチ外の思い出が多かった2020年
結局、10位か。ゼリコ・ぺトロビッチ監督で危うくJ2降格しかねなかった2011年以上に今年はワクワク感というか、埼スタで試合を見る時の高揚感はなかった。2011年についていえば、落ちそうな危機感がそれなりにスリルとサスペンスとなって、シーズン後半、毎回ヒヤヒヤはできたから、あっちのが観客は「退屈」しなかったくらい。
降格もなければ優勝もなし、ACL出場権争いもなし。ぜひこの選手を見たい、も、10点目が取れるかどうかの興梠くらいしかなし、では、それは楽しめる要素がなさすぎる。
レオナルドは、もう少しやってくれると期待したが、尻すぼみだったし、杉本は結局、最終戦までハマらなかった。かつての盛田や高原と同じ「レッズにハマらないFW」の仲間入りしてしまった。日本代表入りして活躍してくれそうな選手も、惜しまれつつ海外移籍の選手も出て来なかった。
だから私としては、2020年は、試合よりも観客席の方が思い出深い。
特に7月12日、コロナ禍で中断後、DIAMOND会員限定でスタンド開放した最初の試合は忘れられない。開場の午後5時には入場口の前に行くと、列を作るでもなく、さほど数も多くない人たちが、入り口が空くのを待ってたわけだが、当然、その多くが、私と同じ、Jリーグ開幕くらいから来てる人たちで、オッサン率が圧倒的に高かった。
チケットを自分でモギるのも初体験だったし、体温はサーモグラフィでチェックしてるのを知らずに、入場してから、警備員に「まだ体温チェックしてないんですが、大丈夫ですか?」とつい聞いてしまったのも忘れられない。
さびしかった。売店もほぼ開いてないし、コンコース内、他のエリアも歩いて回れない。そもそもサポーターの応援がほぼない。もっとも、ときたま指笛はあったし、椅子叩いたり、そういうのはあったものの、今までのレッズサポの応援を見慣れている者からしたら、非常に静寂に近い。
コロナショックって、こういうことか、と妙に実感してしまった。
集まった観客も3千人。ハーフタイムのトイレもガラガラ。
それから、チケット買うのでも、REX TICKET会員は何日の何時から発売開始、みたいになってから、二度三度と買いそびれるケースが出て来た。ヴィッセル戦などは、発売開始時間をうっかり忘れて、三時間後くらいに慌てて気付いて買おうとしたら、もうソールドアウト。トリニータ戦については、開始時間は覚えていたのだが、仕事の打ち合わせもあって、「後で買えばいいだろう」と気楽に考え、夕方買おうとしたら、もうなくなっていた。
だいたい、ずっと年間シート席なので、試合ごとに買う、というのに慣れてなかったのだ。
ようやくそのシステムになれたころには、あまり発売日時を気にしなくてもチケットが買えるようになっていた。
何度も思い出そうとしても、頭に浮かぶのはアウエーサポの席がなくて、いつもならそれにあてられるはずの席に座ったこととか、大槻監督の声がでかくて、南側まで聞こえてきたこととか、途中で太鼓の応援が始まってビックリしたこととか、そういうピッチ外のシーンばかり。
年なのかな。試合そのものを、ほとんど覚えていない。
申し訳ないが、今回、チームを離れるマルティノスとエヴェルトンに関しても、5年後、10年後に「この選手、覚えてます?」と聞かれても、忘れているかもしれない。3千人しかいない、スカスカのスタジアムは一生忘れないだろうに。
寒いし、その2人にあまり思い入れがなかったため、彼らの挨拶の最中に席を立ってしまった。できれば来年はピッチの外のシーンでなく、中で思い出が残るのを祈りつつ。
山中伊知郎
1993年のJリーグ開幕から、レッズの年間シート席をもっている。 山中企画という「ひとり出版社」を作って活動中。10月、『タブレット純のムードコーラス聖地純礼』という本を出す。今までどこも出していなかった「ムードコーラス」の歴史を克明に追った本で、マヒナスターズ、東京ロマンチカなどメジャーなグループから、誰も知らないようなマイナーグループまで続々登場。正直、マニアック過ぎてほとんどの人は興味ないだろうが、興味がある人にとっては、こんな面白いものはないはず。どうか、よろしく。
匿名の浦和サポ(IP:121.102.210.19 )
すごく共感した
今年の虚無感をうまく表現した文章
2020年12月22日 18:03