浦和レッズについて議論するページ

2020年9月より「96のチラシの裏」で連載されている浦和レッズ試合レビューを浦議にも転載させていただくことになりました。
以下、96さんの試合レビューになります。


前節の後半、柏木陽介の衝撃的なまでの影響力の大きさに慄いた僕ですが、そんなことにはお構いなしにコロナ禍にあっても連戦は続くわけで、ホーム3連戦の2試合目はFC東京との対戦。前半戦の対決では「お互いにボール保持を優先しないが故にお互いにボール保持を問われる」という試合の中先制されてしまい、またミスからの失点もあり今季初黒星を献上したカードです。

 

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ルーチンなので一応順位表を確認しておくと、3位のFC東京とは勝ち点8差。思ったよりも上位との差が開いていない一方で、浦和は10位神戸を背中にはっきりと感じるようになってきたとも言える状況です。

 

両チームスタメンと狙い

 

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FC東京は連戦の中メンバーを大きく変更。浦和は前節失点に絡んだ岩波がスタメン落ちしているが、今季の浦和はけっこうミスをしたバックラインをスパッと変える印象が強い。ウガがスタートに戻ってきたことは浦和にとってはかなり大きいはず。

 

浦和ベンチ:福島、岩波、山中、マルティノス、エヴェルトン、健勇、レオナルド

 

東京ベンチ:波多野、ジョアン・オマリ、中村帆高、内田、高萩、アダイウトン、原

 

FC東京はACL出場中の関係で9月~10月にかけて長い連戦を続けており、前節もそうでしたがいろいろとメンバーをやりくりしている状態。個人的には中村帆高に興味があったのですが、今節は拓海のほうが出てきました。

 

浦和については、前節の後半、良し悪しは別として特別な選手であることをそのプレーで示した柏木が今節もスタメン。これまではスタメン出場→ベンチ外というサイクルで起用されてきましたが、ここにきて連戦の中2試合連続でスタート起用となったことで、試合前からレッズサポーターがざわざわする感じがあったと思います。

 

 

スタメン発表からキックオフまでの時間で取ったアンケートですが、ボランチ起用を予想する声が多いもののその数はほぼ4:6と、概して意見が分かれたと言ってよいのではないかと思います。ちなみに僕はSH起用を予想していました。

 

予想の当たりはずれは別として、柏木はCHでスタート。この起用にはいろいろな意図が考えられると思いますが、現象から言えば前節後半の続きというか、流れを踏襲した形と言えます。前節僕が長々とエントリに書いた通り、柏木のCH起用は観ている我々に「サッカーが変わった」という感覚を与えるほどに大きな影響がピッチ上にあったわけですが、それを今節も踏襲したということは、現場でも同じように大きな影響が感じられたということなのでしょう。ちなみに、前後しますが試合後のコメントで大槻監督は以下のように語っています。

 

--柏木 陽介選手はキャンプから開幕当初までボランチで、再開後は主にサイドハーフで出場していた。最近またボランチで起用するようになった意図は?
FC東京さんの戦い方を考えると、中央でボールを散らしたり握ったりすることが有効ではないかという考えからです。正直に言うとコンデイションも上がってきたのでゲームにも使えていますし、そういった状況になったという判断です。もう1つは相手とのかみ合わせのところでということですね。横浜FC戦も相手が構えたところがあったので、後半から真ん中にしました。

 

www.jleague.jp

 

この言葉にどれくらい言外の意味というか、裏があったかはわからないのですが、そのまま解釈すれば「相手のやり方を踏まえて戦術的なオプションとして使いました」ということになります。実際、前節の横浜FCも前半でセーフティリードがある中で構えて浦和にボール保持を強いれば良いという状況でしたし、FC東京も基本的にボールがいらないチームなので、ボール保持を強要され(てい)ることを前提に、オフェンス・コンダクターを起用したという論理は納得できます。

 

上記のコメントを前提にすると現時点で理解できることは二つあって、一つ目は柏木のCHは相手との駆け引きやゲームデザインに関するオプションの一つであるということ。それはつまり、メリットとデメリットを考えたときに使える(もしくは使うべき)ときしか使われないものである、ということでもあるでしょう。もう一つは、たとえそのようなオプションの一つであっても、前節後半のサッカーに僕が大きなショックを畏怖を感じたように、ピッチ上には柏木陽介の引力というか影響力みたいなものが大きく、色濃く出るものだということでしょう。

 

僕が前節の後半のサッカーについて恐れていたのは、簡単に言えばここまでうまくいかずとも積み上げてきた大槻監督の、そして「3年計画」のサッカーだと思っていたものが、この柏木陽介のサッカーに飲み込まれてしまうのではないか、というものでした。前節のエントリに書いたように、これまでの20試合近くのほとんど、特にリーグが再開して以降の浦和のサッカーはオンザボールの質よりもトランジション強度を重視した人選で、さらには中央のコンビネーションというよりもファストブレイク、サイドからの仕掛けや早めのクロス、無理やりにでも2トップにボールを入れたところから得点を奪っていたチームでしたが、それが柏木陽介のサッカー、ミシャサッカーの申し子であった彼が演出するコンビネーションによる中央突破を第一の選択肢とするサッカーの秩序に飲み込まれてしまうのではないか、というものです。ただ上記のコメントを読む限りでは、監督の頭の中には戦術オプションとしての柏木CH起用という域は出ていないようですし、そういう前提で今節を振り返っていこうと思います。

 

「経て」いない選手

 

ゲームは静かな立ち上がり。ボール保持に意欲を見せる浦和は柏木が最終ラインをサポートする形で前進を図りますが、3分にトーマスがいきなりドリブルをミス。横パスに反応して詰めていた田川にボールを奪われ大ピンチという場面からゲームが始まりましたが、ここは西川が素早い飛び出しでリカバリー。その後もどちらがボールを握り続けるということはない展開だったのではないかと思います。

 

FC東京のボール保持は「今季これまでの浦和」に近い形で、ボール保持時にCHがあまり最終ラインに降りず、後ろの選手は初期立ち位置をなるべく守るようなイメージ。SBは開くものの大きな変形をせず、トランジションに安定して対応するのが意図ではないかと思います。ボールの進め方はシンプルで、中盤でマークを外せたCHがいればそこを、そうでなければSHが降りて浦和のSBをつり出し、その裏に2トップが流れて長いボールを引き出すことが多かったように思います。手詰まりになった際のロングボールも含めて、どちらかと言えばFC東京の左サイド、橋岡の裏を狙うことが多かった気がしますが、結果的にそうなっていただけかもしれません。

 

で、今節は久しぶりに4-4-2同士の対戦でしたから、浦和にとってはFC東京の大きく形を崩さないビルドアップは都合がよく、結果的に嵌めやすい噛み合わせになりました。6分には下がったボールにプレッシャーをかけ、サイドに蹴りだされたボールを回収して左サイドから汰木がドリブル突破。汰木が滑ってロストしたボールは宇賀神が回収し、そこから左サイドでのパス交換から武藤のシュートと続きます。

 

10分を過ぎるころには明確に浦和ボールの時間が長くなり、12分にはトーマスの縦パスを柏木がスルーし興梠へ、左サイドへ展開されたボールをバイタルで柏木が受け、武藤に預けてチャンネルへフリーランからクロスと、「あの頃」を思い出させるような、近い場所でのコンビネーションからゴールに迫る場面が出てきます。

 

 

この時間帯から明確に気になるようになってきたのがこのテンポ、つまりミシャのサッカーを経験して知っている選手と、そうでない選手の差でした。今節前半のピッチ上でミシャ体制でレギュラーだった選手とそうでない選手を分類すると、以下のようになります。

 

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柏木が前に出て行くことでピッチ中央から左サイドに「あの頃」が蘇りがちだったのは偶然ではないはず。ただ、4人目、5人目としての両SHが十分に関われたかというと…。

 

今節で言えば6人、過半数がミシャを経ている選手で、5人がそうでない選手(長澤は実質半年だけなので、こちら側に入れています)でした。特に顕著だったのが両SHに入った長澤と汰木で、彼らが前線で多く絡むのは2トップの武藤と興梠、そして柏木なのですが、この3人がボールを要求しているタイミングで渡すことが出来ないシーンが目立ちました。場面場面によるので難しいですが、おそらくこの3人が彼らの感覚で(つまりワンタッチでチェックにくる相手選手を剥がすことを前提として)フリーの状態でも、そのプレーイメージがないのかボールを渡せない、というシーンが出てきます。具体的には13分のカウンターで長澤がボールを持ち、柏木がフリーランに入ったシーン、その後の興梠がボールを受けられる態勢になっていたシーン、その後逆サイドにボールが動いて汰木がカットインしながら出しどころを探し、外側を走った宇賀神を使えず、中央にいた長澤にもつけられなかったシーン、さらに言えば序盤4分のカウンターからエリア内の興梠に合わなかったシーンもそうかもしれません。何が原因かと言われると難しいですが、おそらくこれは「そういうタイミングでボールを付ける要求を受けた回数と経験」が影響するのかなと思います。もちろんそもそも見えていないということもあるでしょうが、やはりこの形で、特に今節のように「あの頃」のサッカーを知るメンバーが多く出場しているような状況では、そういった経験の差が出てしまい、これまでの積み上げの過程、つまりどの選手も新しいことに取り組み、良くも悪くも横一線で積み上げていた時のピッチ上の秩序や要求レベルとは違うものが求められてしまうというのは、現象として起こりうるのではないかと思います。汰木はスペースと時間があればブロックの間を通すような鋭いパスも出せていたので、彼の場合はタイミングが合わなかったという感じなのかもしれませんが。

 

 

一方で、15分の宇賀神の縦パスから始まった中央でのフリックを使った崩しを汰木が完結させられなかった場面が代表的ですが、如何に「あの頃」を経た選手たちが出ていようとも、彼らだけで攻撃を完結することが難しいのもまた事実です。相手の守備組織が揃っていないカウンターの場面では18分の武藤のスルーパスに興梠が走りこんだ場面のような阿吽が見られますが、相手がブロックを組んでいれば柏木が言うところの「3人目、4人目」が必要になるわけで、そうであれば両SHが連携に関わらなければいけません。そういう意味では、大槻監督が柏木のCH起用をどのように意図していたか、どちらの秩序が勝つのかという大きな問題点はいったん置いておくとしても、「あの頃」のサッカーに振り子を戻したところで不完全なもの、もしくはその劣化バージョンにしかならないというのはつらい事実と言えます。

 

何もないところからの失点

 

21分にはFKをクイックスタート。柏木のロングフィード一発で武藤の抜け出しを使いますがバウンドが合わず。飲水タイムを挟んで、お互いに球際を激しく戦いながらゴール前まで迫るも決定的なシュートは放てないというじりじりとした展開が続きます。

 

33分に槙野のワンタッチのパスミスが引っ掛かりレアンドロの単騎カウンター。ニアにかなり際どいシュートが飛びましたがここは西川のファインセーブで何とかピンチをやり過ごすことが出来ました。前半あまり良いサッカーを出来ていなかった印象のあるFC東京ですが、この場面のように浦和の最終ラインのボール回しに枚数を合わせて追いかけるプレッシングはわりと機能していたのではないかと思います。事前にそのような狙いがあったかはわかりませんが、両SHが高い位置を取り一時的に4-2-4のような形になり、そのうち3枚が浦和の最終ラインにアタック。1枚は浦和のCHをみたり、ブロックに入って中央を閉めるような役割となり、状況に応じて人が変わりながらも4-3-3の波のように正面からプレスをかけていくやり方でした。

 

ただそもそもこれが機能するのは、浦和のボール回しの形が根底にある気がします。例えば16分のビルドアップや25分のポジティブトランジションのように、橋岡がビルドアップに関わらずに最初からかなり高い位置を取るために、トーマスにボールが入った時点でほとんどパスコースがない状態というのがよく出来ていました。

 

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FC東京のプレッシングが4-2-4気味だったのもあって、トーマスに限らず最終ラインに与えられる時間がなかった。ただ横の選択肢が一つ少ないというハンデはかなり苦しかったのではないかと思う。

 

CHが一枚降りていればまだマシなのでしょうが、そうでない場合は自分の外側に横パスの選択肢がない状態で最終ラインの選手がボールを持つという、結構難しい状況にトーマスが置かれてしまうということがありました。ただこれ、トーマスから橋岡にシンプルに出せそうなシーンでもパスが出ずにGKでやり直すという場面もあって、戦術的に橋岡をビルドアップで使わないことにしているのか、別の理由でどうせパスがこないから橋岡がさっさと上がっていくのか、この辺はよくわかりませんでした。たしかにプロデビュー以来橋岡を観てきて後ろでクレバーにビルドアップに関わる選手ではないことは分かっているのですが、どういう理由であれピッチ上には右CB→右SBのパスルートがほとんど開通しないというビルドアップと配置上の問題があり、「これまで大槻監督がやってきたサッカー」と「柏木に代表される「あの頃」を経ている選手たちの感覚にあるサッカー」とは別の次元でのアンバランスさが出ていたような気がしました。

 

一方でこうした状況とは別に、トーマス個人のミスが出ていたのも無視できない事実です。トーマスのミスに関しては、最初の3分のミスは単純にトラップから持ち出しに動く間にプレッシングをスタートしていた田川が見えていなかったのが問題だと思いますが、失点に絡んだシーンでは彼がよくやる、クリアできるボールをエリア内でも味方に繋ぐプレーの延長線上で起きたものでした。失点自体は林のゴールキックがルーズボールになった局面で、柴戸がアルトゥール・シルバを躱して前に出ようとしたところから。スライディングで引っ掛けられたボールが中村拓海に渡り、アーリー気味のグラウンダー。全く難しくない処理でしたがトーマスが蹴ったボールはエリア内に遅れて入ってきたレアンドロの足元へ。レアンドロのシュートが流れると、待っていたのは永井。一度は西川が身体に当てたものの、こぼれ球が正面に転がってきた永井が蹴りこんでFC東京が先制、という流れでした。序盤に簡単なボール処理をミスしたり、彼なら繋げそうなボールを蹴りだしたりというプレーもあったので、このあたりは彼のプレー選択上一定程度内在するリスクが頭もしくは身体の疲労によって出てしまったのではないかと思っています。しかし浦和としては決して劣勢ではない展開で試合を進められていた中で、ほとんど何もないところから失点してしまったのは痛恨でした。

 

今節のような展開でなくとも今季の浦和は多くの得点を重ねられていない中で、こういう失点をしてしまうのはかなり苦しいですね。じゃあトーマスをまた外すのかというと彼の能力を考えればそれももったいないような気がするし、ではチームとしてああしたリスクの高い繋ぎを許容するのかというと、どうなのか?となってしまいます。だけど「でも今までもトーマスはあれをやっていたし、ポジティブに観ていたよね?」と言われればその通りですし。

 

まあ、とにかく痛恨のミスでしたというのが正しいのでしょう。エリア内で相手にパスしたら失点しちゃうよ。で、前回の対戦でもそうでしたが、FC東京相手に先制を許せばそこからは、彼らの得意なゲーム展開に強制的に付き合わされるという罰ゲームが待っています。

 

構える東京と、悩める浦和

 

前半ロスタイムに永井に抜け出されレアンドロがエリア内で右足を振りぬく危ない場面、逆に浦和は橋岡の折り返しから興梠のボレーがあったものの、お互いに決まらず0-1で折り返し後半へ。ちなみに、FC東京はHTに田川→内田の交代を済ませています。

 

後半のなるべく早い時間帯で追いつきたい浦和でしたが、前半と同じくトーマスのミスからスタートすることに。ビルドアップからトーマスが中央につけた縦パスがずれたところから永井にボールが入り、トーマス自らアタック。ファールは取られなかったもののアフター気味のプレーで、この試合だけでなくここ数試合のトーマスによく見られる、エマージェンシーな状況になった瞬間に飛び込んで潰すことを選択し危険なプレーになってしまうというシーンでした。これが後半の趨勢を決めたというのはあまりにも強引でしょうが、全体的には苦しみともやもやを深めることとなった後半になりました。リードを追いかける展開となったことでFC東京は構えていれば良いわけで、落ち着いてゲームを進められたのはFC東京の方でしょう。

 

FC東京の守備は前半に見たように4-2-4気味のスタート位置から3枚が飛び出していく形がメインで、これが橋岡が最初から高い位置を取ろうとする浦和の立ち位置に合わせた結果そうなったのかどうかはわかりませんが、そもそも4-4-2同士ということや、浦和のビルドアップが稚拙なこともあって結果的には結構はまっていたと思います。一方で浦和の前線の選手が降りる動きを見せればマークマンがついていってどんどん前ズレしていく構造もあり、特に武藤や興梠が降りる際にはCBの渡辺や森重が中盤まで進出しているシーンもありました。

 

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こうした前ズレのデメリット、特に構えて守っている割にスペースのあった最終ラインの裏を浦和が使えればもう少し楽だったような気もしますが、浦和は健気に最終ラインからのビルドアップに取り組んでいました。あまり細かく見る必要はないと思いますが基本的には前半と同じような形で、柏木が受けに降りれば素直に預けて展開はお任せ、そうでなければCBが出しどころを失ってFC東京の3枚プレッシングを浴びてしまい、GKまでボールが戻っていくという感じでした。後半のFC東京は前線4枚のうち3枚を使って最終ラインに仕掛ける一方で、残る1枚とCH、特にアルトゥール・シルバが柏木を消していたような気もしたので、体力的にはまだ問題なさそうだった後半の速い時間帯から柏木が消え始めたのは、FC東京の守備に要因があったかもしれません。

 

ただその中でもいくつか面白いシーンがあって、例えば52分の西川のフィードでピッチ最奥までボールを飛ばしたところから連動したプレッシングで三田のハンドを誘った場面や、59分に4-2-4状態で前に出てきたFC東京のプレッシングに対して横パスを繋いで降りてきた汰木が大外で受け、そこからCH脇に降りた武藤へ折り返し、武藤がターンすることでFC東京の守備組織に撤退を強いた場面、もしくはその直後に汰木の降りる動きにFC東京右SBの中村拓海がついていき、その裏に武藤が入り込んだ場面がそうでした。どのやり方でも良いと思うのですが、90分もサッカーをやっていれば偶然でも出てくるであろうこうした相手の綻びみたいな部分、もしくは自分たちがやれそうな部分を見つけたときに、それをもう一度再現したり、わざとそういう場面を押し付けて相手に対応を問うようなことが出来ないというのも今の浦和の厳しいところかなと思います。何が言いたいかというとFC東京から盤石な印象を受けたわけではなかったということですが、まあそんな相手に完敗しました。

 

で、ホームで追いつきたい大槻監督は65分に長澤に代えてマルティノスを投入。これでだいぶわかりやすい形を作るかなと思いきや、しばらくの間はマルティノスがハーフスペースでボールを待っていたので驚いたというか、なんで?となりました。僕なりに整理して、この辺りから何が見えるかというと、たぶん彼らがやっているのは大槻監督の求める「立ち位置」の実践なのでしょう。枚数が合っていることやその他の理由によって最終ラインからなかなかボールが運ばれてこないので中盤から前の選手が頻繁に降りてくる傾向にあるものの、チームとしてはやろうとすることを実践していく空気はあるのだと思います。

 

ネガティブトランジションで柴戸が背中を取られてちょっと怖いシーンがありましたが、引き続き浦和がボールを持つ展開が続きます。70分には柏木のダイレクトパス一発で5人くらいを置き去りにするシーンがあったのですが、興梠の落としを受けた柴戸が展開できずにプレスバックしたレアンドロに引っ掛かり、気づけば置き去りにしたはずの5人のうち4人に戻られていました。終盤、こうした切ない場面を経て、ついにマルティノスが気を吐きます。中央でマルティノスにボールが入ると3こねくらいしてクロス。良いボールが入り、こぼれ球に宇賀神が突っ込みますがシュートはブロック。こぼれ球を拾ってカットインする汰木に合わせて大外でマルティノスが裏を取ろうとしたものの、汰木は使わずホームラン。これにアピールするマルティノスを汰木が俯いたままあしらったところで、後半のウォーターブレーク。明けた74分にもマルティノスのアーリークロスからエリア内でマークから浮いた興梠がすらしますが惜しくも枠外…。

 

このあたりで事故でもなんでも点を獲れなかった時点で、浦和はゲームを変えられるチャンスを使い果たしていた感じがします。75分にレオナルドを投入するも試合は動かず、さらに終盤にかけて山中、健勇を投入し変なフォーメーションで最後の悪あがきをしますが何も起こらず、ホームチームはそのまま試合終了の笛を聞いたのでした。

 

“Spaghetti cabled”

 

今回、ゲームの展開をあえてつらつらと書いてきたのですが、強く感じたのは、こんがらがったなあということでした。電子機器の裏のケーブルがぐっちゃぐちゃになった状態をCbale Spaghettiと言い、転じてSpaghetti-cabled、つまりぐちゃぐちゃにこんがらがったという意味で使われる形容詞的な言葉がありますが、まさにそんな感じで、今節の浦和は課題の関連や論点みたいなものがぐちゃぐちゃに複雑化してしまっていた気がします。

 

ひとつは前節後半から継続された柏木のCH起用で、これによって「あの頃」的な崩し、思い出の欠片は見られたのですが、あれは11人が、もしくは少なくとも崩しに関わる3人、4人、5人が同じアイデアを共有してこその崩しなわけで、それを経ていない選手と現場合わせをするのはかなり難しい注文です。同時にチームとしてはこれまでリーグ再開後に取り組んできた立ち位置の原則、相手の守備に空いた穴を使うという約束事にも取り組んで(そしてなかなかうまくいかずに苦しんで)いて、それらが重なるものなのか、反発し合うものなのかはよくわかりません。その一方で橋岡はビルドアップに関わらず早いうちから前に出て行くのでトーマスのパスコースはそもそも一つ少ない状態からスタートしがちで最終ラインは数的同数のまま前進ができないという課題も抱えています。これはそもそも今季の浦和の最終ラインの選手たちの新しい取り組みというか課題ですが、今季再開後に見られたように先制されるとかなり厳しい展開が待っているので、CBの選手はあまりリスクは負いたくないでしょうし、そもそもリスクを冒して持ち上がっても前の選手が降りてくるのでノッキングを起こしてしまうという恐れもあるのでしょう。一方で降りてくる選手は降りてくる選手で、前が運んでこないなら降りてボールを受けなければと思うでしょうし、我慢しなさいと言われて我慢しても、実際ボールは前進しないわけです。柏木が全部やってくれれば解決した感じになりますが、中央でのコンビネーションを中心にしたサッカーは呼応できる選手が限られるし、それも90分は続かないわけで、一方で交代で出てくる選手はかなり個性が強いので彼らの特殊能力を発揮させるためにまた調整が必要になってしまう、という状況も同じピッチの上で発生します。

 

じゃあこれまでの攻め手がなかなか見えないサッカーが良かったかと言われればもちろん満足はしていないのですが、あの「3年計画」らしいサッカーに不器用ながらに取り組んでいる限りは、論点はわりとシンプルでした。ビルドアップはみんなへたくそだけれど、逆に言えばみんなで取り組んでいればよかったし、興梠が時々降りてゲームメイクをしていましたが、まあイレギュラーはそのくらいでした。不細工なセットオフェンスに加えて不完全な4-4-2ブロックでクロスから失点を重ねていましたが、トランジションとファストブレイクがはまればそれらしいものが見えたし、回数が少なくて、雑なボールでもトップの選手がエリア内でボールを持てば仕事をしてくれていて、まあ我慢我慢でしたが、結果はともかく積み上げていくものはこれなんだな、という感覚がありました。

 

こういう書き方をすると「柏木システム」に批判的という印象を持たれそうなのですが、実はそういうわけではありません。たしかに前節はあまりの変りぶりにかなりビビったのですが、まあ実際彼の能力は本物だし、ある種絶対的な基準が出来ることでプレーしやすいと一部の選手がコメントするのも本音でしょう。だから監督が制御して意図して使うのであればオプションの一つして持っておくべきものなのだと思います。ただ、前節の通り「これまで積み上げてきた秩序の中に別の秩序が持ち込まれる」感覚は強くあって、その功罪として呼応する選手と浮いてしまう選手を作り出している感じがあるし、二つの秩序が混ざり合う中に選手個別の課題や個性の組み合わせの問題が混ざり合い問題が複雑化し、それを整理しようにもプレーの優先度の評価軸がぶれてしまうような感覚も無視できません。

 

こうしたことを踏まえて今の時点での僕の個人的な考えは、「柏木システム」をやるにしても負けている後半のオプションにするのが妥当ではないか、ということになります。「3年計画」の流れと大槻監督がチームを率いている意味を考えれば、今やるべきサッカーがどちらなのかという問いの答えは明確なはずですし、まずはそこに取り組むべきでしょう。ただ勝負をしている限りリードされることはあるわけで、さらに現実を見ればそういう展開が続いているのが最近のレッズです。そういう中でトランジション勝負をしよう!と意気込むのも切ないですし、ボールを持って仕掛けていかなければいけない展開では「柏木システム」が現状チームが持つものの中でもっとも使えるオプションなのは間違いありません。最大で45分という限定した時間軸の中であれば、そしてそれを使う意図と条件を明確にしておけば、観ている方としても多少は理解しやすいし、ピッチ上のプレーの基準みたいなものも、どちらをやっているのかに応じて多少は整理されるのではないかと思います。

 

3つのコンセプトに対する個人的評価と雑感

 

採点。

 

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「1.個の能力を最大限に発揮する」は4点。「柏木システム」と同じような文脈ですが、武藤と興梠の2トップはさすがに阿吽の連携があって、お互いに動き出しのタイミングもわかっているし、二人で完結できる感じも見られてさすが相性が良いんだなあと改めて感じました。これは個人的に信じていることですが、結局どの選手も自分のプレーでチームを勝たせるというのが目的になるわけですし、逆に言えばそれしかできないので、それぞれが自分の出来ることや個性をピッチ上で吐き出そうとしてるのだと思っています。で、そうしたそれぞれの努力が機能としてうまくまとまるように整理・調整していくのが監督の仕事だと思いますが、この点では大槻監督はかなり苦労しているなという感じがしますね。実力や経験の不足だと言えばそれまでですが、まあ自分がやろうとしていることを、トレーニングが出来ない中で連戦を戦いながら積み上げなければならないのはつらいですし、そうした中で300試合、400試合というキャリアを築いてきた、そして特徴的なスタイルのもとに強烈な成功体験と自負のある選手たちを、全く新しい秩序を植え付けようとする自分のコントロールの下で活かしきるという仕事は誰がやってもめちゃくちゃ難しいのではないかと思います。ていうかこれ、たいていの外国人監督なら最初にぶん投げるタイプの仕事じゃないですかね。

 

「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」は3点。選手が頑張っていないという気はないですが、この「前向き、積極的、情熱的」が言わんとするプレーが見られたかと言われると、「3年計画」の文脈が究極的に目指すものではないのかな、という気がします。

 

「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は3点。FC東京も連戦の中でメンバーを大きく変えて戦っていたということもありますが、トランジションや球際で大きく負けていたという感覚はありませんでした。ただゲーム全体を通じて相手にプレッシャーをかけていたのはどちらですかと言われると、なかなか浦和とは答えにくいゲームだったと思います。

 

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というわけで、浦和はホーム連敗となり勝ち点30で足踏み。4位のマリノスとは4差というのが信じられないですが、3位FC東京とは今節の結果を受けて11差とかなり離れてしまいました。たぶん浦和が気にするべきは、それよりも背後に迫った10位神戸の存在感のほうなのでしょうけど。次節は前回対戦時に大敗を喫した名古屋ですが、リーグテーブル的にも次節の結果は今後の浦和の趨勢を決定づけるようなものになるかもしれません。

 

 

今節も長文にお付き合い頂きありがとうございました。

 

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コメント
  1. 1 匿名の浦和サポ(IP:123.255.129.113 )

    俺は今日最高に機嫌悪いからな。負けたらどうなるか分からん

    このコメントに返信

    2020年10月04日 16:02

  2. 2 匿名の浦和サポ(IP:111.239.159.194 )

    大槻!
    今日負けたら、頼むから辞めてくれ!!

    このコメントに返信

    2020年10月04日 16:34

  3. 3 匿名の浦和サポ(IP:111.239.159.194 )

    こんなの載せても意味がない。
    大槻の引き出しは空っぽなんだから!

    このコメントに返信

    2020年10月04日 16:40

  4. 4 匿名の浦和サポ(IP:153.208.106.216 )

    福田か。終わったな。声うるさい。

    このコメントに返信

    2020年10月04日 16:51

  5. 5 匿名の浦和サポ(IP:153.208.106.216 )

    いつまでこおろぎ頼りなんだよ

    このコメントに返信

    2020年10月04日 16:53

  6. 6 匿名の浦和サポ(IP:110.133.201.39 )

    分析以前の問題をどうにかしろよ

    このコメントに返信

    2020年10月04日 16:54

  7. 8 通りすがりの冴えないおやじ(IP:218.221.218.146 )

    こういう分析計の話は結構好きで、面白かったです。
    96さんが、浦議のコメント読んでるかわかりませんが、できれば96さんが考えている大槻サッカーを解説頂けると、こんな冴えないおやじでも、もっと理解できるのかなぁと思ってます。
    どういう風に攻撃を組み立てていくのか、守備はどう考えているかとか時間がある時に解説ブログを書いて頂けると嬉しいです。(対戦相手毎だと本質がわからないので)
    この辺がわからないと各選手のポジショニングやそのポジションのプレーレベルがあっているのか、どの程度、チーム作りが進んでいるのか理解するのが難しい気がするので。
    クラブにはもっと具体的な事を伝えてもらいたいですね、正直冴えないおやじには、クラブコンセプトは精神論にしか聞こえないですし、どのクラブもわざわざ言う必要のない当たり前の事だと思ってます。
    (その当たり前ができないからわざわざ言ってるのかも)
    色々、クラブには言いたいことはあります。
    最後に、ひとつ聞きたいことが横浜FC戦の伊野波選手の持ち上がり時の事が書いてありますが、冴えないおやじ的には関根選手が覚悟をもって、サイドを消したほうがDF陣は守りやすかった気がします。
    この辺りが負けているチームの心の迷いが出ているのではと思ってしまいました。
    これからも楽しみにしています。

    このコメントに返信

    2020年10月05日 09:13

  8. 9 ふつうのゲーマー(IP:126.12.228.196 )

    「指輪物語の終わりのお知らせ。」

    指輪物語は終わりました。

    それから、
    ニックネームを
    「指輪?」から
    「ふつうのゲーマー」
    に変更しました。

    ニックネーム ふつうのゲーマー
    また、この投稿で悪いことをしないで下さい。

    このコメントに返信

    2020年10月06日 04:28

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