コラム

『雷雨で1時間遅れも競り勝ったFC東京戦 ただの運だけではないポスト直撃』Jリーグ浦和vsFC東京【轡田哲朗のレッズレビュー】

▼狂ったスケジュールで保った集中力
浦和レッズが2-1で勝利した19日のFC東京戦は試合開始の1時間半前ごろから埼玉スタジアムでは雷雨となり、一度は35分遅れのキックオフ予定が出たが、ウォーミングアップ開始時刻になっても雷は収まらずに再度の延期。結局、1時間遅れの20時キックオフとなった。夏休み期間中で観戦に訪れた家族連れには負担が大きかっただろうが、チームのことだけを考えれば、これから過密日程が待つ中で代替日程が組み込まれずに済んだことは大きなプラス材料になるだろう。

通常どおり、試合開始予定時刻からの逆算したスケジュールでスタジアム入りした選手たちにとっても、簡単な状況ではなかった。選手たちは思い思いにその1時間を過ごしたと話したが、槙野智章は「本当に難しかった。スケジュール通りに心も体も作ってきた中で時間が変わりましたけど、チームのみんなで良い状態に持っていって、良い試合の入りができましたし、プロフェッショナルな部分を出せたと思う」と話した。そして、「堀監督の一言でグッと全体が締まった」とも話し、チーム全体で試合に向けた準備をできたことを明かした。

▼マウリシオ効果は柏木の良さを引き出すことにもつながる
浦和はこのゲームで15日のシャペコエンセ戦に続いてマウリシオが3バックの中央に起用された。彼の前への強さなど守備面の能力の高さを発揮する場面は随所にあり、緊急補強という意味での目途が立ったことはチームにとって大きい。そして、中盤からゲームを組み立てる柏木陽介にとっても、マウリシオが中央に入ったことは今後に向けての手応えを感じさせるものになったという。

マウリシオはインサイドパスの正確性に自信を持っていることと、縦パスへの意識の強さが長所にある。そのため、マウリシオから柏木にボールを出し入れする場面が多く、低い位置の時点でサイドへ流れがちだったビルドアップにアクセントが加わった。柏木も「一度しっかりボールを落ち着かせてくれるし、ああやって縦に入れてくれるから、やっているうちに自分もより怖さがなくボールを受けられるようになるし、もっとボールを欲しいと思えるようになると思う」と話す。

特に2点目のゴールは、柏木の「ああいうのは得意だから」と話したオフ・ザ・ボールの駆け引きで走る方向を急転換して自分の前を開けるプレーが光ったが、マウリシオが「縦があるぞ」という持ち方と体の向きを作ってうまくビルドアップに絡んでいたことも大きい。一度、中央にボールを出し入れしてからサイドに散らすことで遠藤航や槙野智章、阿部勇樹のポジションの選手が前に相手がいない状況でボールを受けやすくなるという相乗効果も生まれる。攻守両面において、チームの底上げに貢献してくれそうだ。



▼ギリギリまで相手の確率を下げる守備
この日のFC東京戦では2度にわたって相手のシュートがゴールの枠に弾かれて事なきを得る場面があった。もちろん、これは「運が良かった」という面がゼロではないだろうが、失点がかさんでいた時期とは違う質の運だと言える。それは、いずれも何とかして相手のシューターの前が完全に開いた状態ではなくしていたからだ。

遠藤は「距離感が良いので、危ないところに人がいるという状況を作れていると思うので、それは守備のバランスが良くなったところだと思う」と話した。西川周作も「しっかりとシューターに行ってくれることで、相手はギリギリを狙うしかなくなる。ただただ、ポストに当たっただけではないと思う」と、味方の守備を称えた。ペナルティーエリアの中までズルズルと下がるのではなく、シュートを打たれるにしてもエリア外から、それも必ずブロックに入る守備者がいるようにしていれば、余裕をもって枠内の良いコースに飛ぶ確率は下がる。もちろん、シュートを打たせないのがベストであるにしても、そうやって相手の確率を少しでも下げることの積み重ねが最終的な運を引き寄せることは多々ある。今後の試合で、それでも決まってしまうシュートだって出るだろう。ただし、こうした姿勢を積み重ねることで失点は減るだろうし、この日のように競り勝って勝ち点を奪う試合を増やせるはずだ。

また、この日は前半に守備が上手くハマらないと見るや、後半からは守備時に3ボランチになる形にシフトとした。そのことで運動量が厳しくなるボランチの部分に交代枠を2人使い、カウンターでスピードを生かすラファエル・シルバを勝っている状況で投入した。シルバもしくは矢島慎也がカウンターから迎えたチャンスを仕留めていれば、文句のない勝利になるところだった。それだけに、矢島は「あれを決めないと上のステージには行けない。途中から入った選手が決めるのは大切だと思うので」と悔しがった。それでも、青木拓矢の戦線復帰も含め、勝ちゲームを勝ちのまま終わらせるために必要なコマは揃いつつある。

もちろん、守備が改善されたにしてもFC東京にかなりボールを回されて、最後のところで突破させなかったという形であり、全体で相手を奪いどころに誘い込んでカウンターにつなげるというほどのものではない。つまり、守備は修正されてきているが、守備が武器のチームと言えるレベルには到達していない。特に、水曜日に対戦する川崎フロンターレの攻撃力を簡単に受け止められるというのは、虫のいい願望にしかならないだろう。

そういう意味でも、この日に見せたような最後のところでしっかりと寄せるという集中力を継続していくしかない。それを続けて勝ち点を伸ばしていくことで、堀監督にとっても修正の段階から自身の考える色をチームに強く落とし込んでいく余裕が生まれていくはずだ。

※関連リンク
堀体制での初スタメンに意気込んだ李忠成 ピッチ上で見せたR・シルバとの違い【轡田哲朗レッズレビュー/明治安田生命Jリーグ第23節FC東京戦】(浦レポ)


轡田哲朗

1981年10月30日生まれ、埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。

コメント

  1. 1 匿名(IP:126.204.18.115 )

    マウリシオがキープ力の高い前田に勝ってくれたり、リーグ一速い永井の突破をカバーリングでガツンと止めてくれて、見ていて以前より安心感が違った。
    マウリシオは高さもスピードもあって、一対一も強くカバーリングもできる。前へのパスも早く正確で、かなり良い補強。ポンテに感謝!

    このコメントに返信

    2017年08月21日 14:37

  2. 2 匿名(IP:126.245.147.107 )

    一流の技術を、是非控えのDF陣にフィードバックして欲しいですね。

    このコメントに返信

    2017年08月21日 16:37

  3. 4 匿名(IP:1.75.0.26 )

    守備が武器って数日前まで崩壊していた守備が短期間で武器になるレベルに達する訳ないでしょう。
    今の浦和は、無理にするな!サボるな!と言っているだけ。其れさえ出来ていなかったんだよね。

    このコメントに返信

    2017年08月21日 18:15

  4. 5 匿名(IP:126.204.18.115 )

    4
    試合観てますか?
    細かい修正を色々としてますよ。

    このコメントに返信

    2017年08月21日 19:40

  5. 9 匿名(IP:49.98.170.70 )

    相手のカウンターで数的不利を作られなくなったことと、試合に絡む選手が多くなっただけでも堀さんはよくやってると思う。

    このコメントに返信

    2017年08月21日 20:04

  6. 10 匿名(IP:126.211.51.216 )

    3ボランチにはなってないよ。
    要タソが季と興梠の2トップに変更と実況してたでしょ。
    32212だよ。

    このコメントに返信

    2017年08月21日 21:37

  7. 11 匿名(IP:126.211.51.216 )

    森脇復帰したらポジショニングなくなるぞ遠藤。
    ボランチやりたいと不貞腐れながらやってる余裕があるのか。

    このコメントに返信

    2017年08月21日 21:40

  8. 12 匿名(IP:122.213.201.194 )

    ズラタン出すかと思ったけどラファと武藤、矢島の3人によるカウンター狙いは良かった。むしろラファは新潟時代を思い出したかのうように生き生きとしてたね。勝ってる状況でこのパターンは使えるな。

    このコメントに返信

    2017年08月21日 21:51

  9. 13 匿名(IP:126.204.18.115 )

    昨年みたいにルヴァンは青木と遠藤のボランチで勝ち上がろう。

    このコメントに返信

    2017年08月21日 22:29

  10. 14 匿名(IP:175.133.38.110 )

    全体にドッシリしてきた感じがするから、森脇の持ち上がりや大きなサイドチェンジは生きるのかな? 遠藤そのままで、森脇ボランチの方が、森脇の攻撃力も生きそうだし、今の安定感を保てそう。

    このコメントに返信

    2017年08月21日 22:31

  11. 15 匿名(IP:111.102.186.1 )

    森脇の足元の巧さとさばきは認めるますが、真ん中におけるほど判断力が早くないかと。右後方から常に前(対角含め)を見れているから機能していると思います。
    連戦になってくるし、梅崎、長澤あたりにも出番がくるかな。

    このコメントに返信

    2017年08月21日 22:53

  12. 16 匿名(IP:121.93.60.133 )

    この人のコラム好きですね。テーマも着眼点もよく、何より日本語が綺麗。

    このコメントに返信

    2017年08月21日 23:38

  13. 17 匿名(IP:211.120.206.40 )

    柏木のボランチが効いていないのでピンチを招きやすい。柏木を使うならもう一列前ですね。もっとチームの守備が良くなると思います。

    このコメントに返信

    2017年08月22日 05:45

  14. 18 匿名(IP:153.122.117.186 )

    にんにくなんて来季はもういねし阿部ちゃんもかなりパフォ落ちてんだから矢島と長澤に一気に替えちまえよ

    このコメントに返信

    2017年08月22日 07:55

  15. 19 匿名(IP:106.139.2.13 )

    18 一度あなたがサッカーやってるとこ見てみたいっすわ

    このコメントに返信

    2017年08月22日 08:59

  16. 21 匿名(IP:36.8.17.61 )

    阿部ちゃんのポジション至急募集中
    川崎の破壊力にどれだけ持ち堪えられるか
    遠藤も槙野もザルだし明日はコテンパンに遣られますね。

    このコメントに返信

    2017年08月22日 13:54

  17. 22 匿名(IP:122.213.201.194 )

    最終ラインは安定してきた。でもバイタルの手前で相手をフリーにするのは改善しないと川崎にはやられそう。

    このコメントに返信

    2017年08月22日 14:05

  18. 23 匿名(IP:49.98.132.55 )

    柏木はボランチじゃないといけない理由でもあるのか。とてもボランチできてるとは思えん

    このコメントに返信

    2017年08月22日 16:28

  19. 24 匿名(IP:49.98.132.55 )

    1対3なんていうふざけた守備を1試合で2回か3回もやってくれたチームをよく守備立て直したと思ってる

    このコメントに返信

    2017年08月22日 17:04

  20. 25 匿名(IP:182.250.248.200 )

    柏木のボランチは無理だよ。
    失点のきっかけは柏木が大久保に寄せずに棒立ちだからね。前で使うかサブで攻撃に変化させたい時で使うか。
    青木と遠藤ベースに長澤と矢島を競わして世代交代していく方がいいよ。

    このコメントに返信

    2017年08月22日 18:23

  21. 27 匿名(IP:219.105.5.196 )

    28 ムラっけ無資格10番はつかえないね。オフェンスもディフェンスも弱いし。浦和での選手生命はもはやゼロだよ。あの暴言がトドメの墓穴を掘ったのだから自業自得。来季は移籍だろうね、お互いのためにも。

    このコメントに返信

    2017年08月29日 04:19

コメントを書き込む