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互いに理想とする攻撃を執念深く続けた見応えのある一戦。浦和は手応えのある”勝ち点1”を獲得【浦ビュー】

2019年よりTwitterでスタートした「浦和レッズのプレビュー、レビュー」が面白いと話題となっている浦ビューさん。
その原稿を浦ビューさんに許可をいただき浦議に転載させていただきます。

 

2020 J1第2節 レビュー
浦和レッズvs横浜F・マリノス

 

4ヶ月の中断を経て再開された初戦はスコアレスドローでした。今回から過密日程で読んでくれる皆さんが気軽に開いて頂ける分量へシフトチェンジします。

 

といっても、マリノス戦のレビューは特殊といいますか、マリノス戦限定の戦い方なので、早く切り上げようと思います。

 

また、マリノス側の書き手が凄いので、
もうそっちに任せちゃえば十分振り返れるので、
私はプレビューで伝えた責任だけを果たして早めに終わりにします。

 

では、始めましょう。

 

この試合のプレビューです。

 

 

—スタメンと基本システム—

 

 

—浦和レッズ—
・開幕からは4人変更。
・トーマス・デンがJリーグデビュー。
・柴戸と青木の走れる中盤を用意。
・最前線の興梠の相方は杉本健勇。
・4-4-1-1(4-4-2)。

 

—横浜F・マリノス—
・開幕からは6人変更。
・中断期間で加入した小池、實藤、天野を起用。
・松原健は前日練習で負傷。
・最前線は活動的なエリキを用意。
・4-2-1-3。

 

—プレビューで言及したデータ—

 

・走り勝つマリノス

 

昨季2度の対戦は約8kmほど走行距離を離された試合でしたが、今回の対戦は、その時と参考にしている媒体が違いますが、マリノスは117.9kmに対して、浦和は117.6kmでほぼ同じ。マリノスで最も走ったのは喜田で12.4km。対して青木と柴戸が12.6km。青木と柴戸の2人を起用してダメだったら諦めきれるとお伝えしていましたが、まさにこの2人がこれだけ献身的に走ってくれなかったら、勝ち点1は掴めなかったはずななので、個人的なMOMはこの2人です。

 

・マリノスが負けた共通点

 

①マリノスのパスは615本以上か?→731本 ◯
②浦和のパスは320本以下か?→208本 ◯
③マリノスの保持率は63.1%以上か?→68% ◯

 

プレビューを読んでいる事が前提なので、①〜③が何を表しているかの説明は省略しますが、データ的には勝つ条件は十分揃っていました。数字はDAZNで放送されていたデータを参考にしていますが、他の資料を見ると、マリノスのボール支配率は72%というのもありました。ボールを握られて、パスを回されましたが、感覚としては7割やられて3割しか攻めれなかったという気持ちになってないのが、この試合の1番の収穫ではないでしょうか。それもそのはずで、シュートは浦和12本放ちました(マリノス16本)。

 

ゴール期待値は、浦和0.36に対して、マリノス1.7。マリノスは2点ぐらい取っておかないといけない試合だったので、マリノス側としては勝たなければならない試合である事をこのデータが示しています。

 

・ファール回数

 

マリノスは敵陣でボールロストしてから、いつものように即時奪回を試みていましたが、ファールで浦和を止める機会が特に前半は物凄く多かったです。前半のファール数は10回。この記録は2019・2020シーズンリーグ戦合わせて最多タイの多さです。昨季対戦ではこの局面で即時奪回しまくられて、先制されてしまいましたが、今回はファールで止めるしかないほど、浦和を捕まえるのに苦労しているように感じました。浦和としては即時奪回されるのは最悪ですし、前半から局面がどんどん変わってオープンな展開になりすぎるのも苦しかったと思うので、プレーを止めてくれたというのは、特に心理面と体力面でかなり助かったように思えます。

 

—浦和の攻撃—

 

プレビューで攻撃時のポイントは3点挙げました。
①右→左へのサイドチェンジ(山中のインナーラップも添えて)
②ハイラインの背後
③橋岡の空中戦

 

やっぱりマリノスはいつもより飛び抜けてハイラインではなかったですが、基本的な守り方は変わらずだったので、スペースのある反対サイドを積極的に使うこと(①)、主に興梠が抜け出した背後を狙うこと(②)というのは意図的に取り組んでいました。

 

特に①は執念深く実行していました。
1番最初に汰木までサイドチェンジを届けられたのが5分35秒。汰木にボールが渡った時に、山中がインナーラップしてきたのを上手く囮に使って中央に切り込んでシュートまで辿り着きました。めちゃくちゃ頭でイメージして、トレーニング(攻撃5人対守備4人+GK)して最初に実践したのが、この手応えだったので「これを続ければいいんだ」と自信を持てたと思います。

 

このシーンですね!

 

 

前半汰木にサイドチェンジが入ったのは5~6回。43分45秒の興梠の完璧な身体の使い方で相手を置き去りにしてからの汰木へのサイドチェンジも見事でした(下図)。明確な決定機でした。

 

 

—PK疑惑の判定は橋岡の空中戦から—

 

③橋岡の空中戦

 

(17分30秒)興梠と梶川がボックス内で交錯したシーンは浦和レッズサポーターの全家庭から「オーーイ」と怒号が飛んだかと思いますが、そのボックス内までボールを運んだのはプレビューで言及した通りで、橋岡の空中戦を全面に押し出したところからでした(下図)

 

 

⇧自陣の山中のFK→橋岡とティーラトン競り合う
→理想通りに斜め前方へ落とす→興梠抜け出す→交錯

 

橋岡が高い位置を取った時に空中戦をする機会は他に8分30秒15分45秒最低2回はありましたが、それはどちらとも真横にいる選手に落とすようなヘディングをして秒速で回収されているので、基本的に仕込んでいた訳ではなさそうなのが少し残念ではありましたが、プレビューで厳選して伝えた現象がリアルで再現されるほど、書き手冥利に尽きるものはないので、得点になれば最高でしたが、達成感は味わえました。

 

ー浦和のプレッシングとマリノスの狙うスペースー

 

浦和は最前線にレオナルドではなく、杉本を起用したので積極的にプレッシングに行ける人選にはなっていました。結果的にPPDA(敵陣から5分の3エリアでの守備アクション)は、32.5で非常に高い数字なので、常時敵陣からプレッシングを行った訳ではないですが、マリノスのビルドアップが横パス2本続いたのがスイッチとなり、全体が連動してプレッシングを行うシーンは特に前半多く見られました。マリノスは圧力をかけられると横幅68mを目一杯使ったり、相手から離れて良い身体の向きを確保した選手にパスを届けるというよりかは、身体の向きが悪かろうが、ゴールに背を向けながらでも狭いエリアでグラウンダーのパスで繋ごうとする意識がいつも通り強かったです。映像に切れていて言及するのが難しかったですが、ゴールキックでは引っかけたシーンもいくつかありました。身体の向きが悪い状態でボールを受けようとする選手を見つけたら、柴戸は自信を持ってその選手にを狩りに出ていくことができました。柴戸は守備の競り合いは18回で両チーム合わせて全体のトップ(勝率61%)。

 

マリノスは3枚の前線が後方のビルドアップに下がりながら関与することはせずに深さと幅を保っていたので、SBの山中と橋岡はマリノスの両WGに留められてしまった状況で、SHの汰木と長澤が前にプレッシングに出たときに中間のスペースが空いてしまうシーンが多く見られましたが、その状況を作り出すことこそがマリノスの狙いだったように推測します。

 

最初にそのスペースを狙ったのが5分00秒下図の右半分です。興梠、杉本が中央に存在しているので、外回りになることが前提で「ティーラトンにパスが入った時に長澤がアプローチ+遠藤の深さに留められる橋岡」の間のスペースが広がった隙を見逃さず、扇原がそのスペースに流れてボールを受け取りました。しかし、即座に青木が並走してパスミスを誘いました。

 

 

その後、飲水タイムが過ぎて30分過ぎたあたりから、このスペースを狙う意識が強くなったように見えました。

 

その1つが39分00秒のシーンです(上図の左半分)。
實藤へパスした喜田が囮になるように下がった動きに少し汰木が釣られて生まれたライン間のパスコースを實藤が見逃さず、天野が流れてきてパスを受けました。しかし、即座に柴戸が対応→奪い取る→特大ロングシュート。

 

このシーンですね!

 

 

後半開始すると、マリノスはさらにその意識が強まっていることが最初の数シーンでも感じられます。

 

マリノスとしては浦和のSHを釣りだして、空いたスペースを使って、浦和のボランチも上手く引き出せたときにWG(仲川、遠藤)までパスを送れれば1vs1勝負させてあげられるという逆算でのプレーだった気がします。

 

このスペースを利用されたのを全て封じ込めた訳ではないですが、マリノスが想定する以上に柴戸と青木の対応は迅速で簡単に越えることはできなかったと思っていたはずです。

 

長澤も流石に読んできたのか、47分20秒のシーンでは、喜田が幅を取ったのを予測してサイドに先に動いたときに、流石マリノスだね、遠藤が幅を取ったところから斜め後方に降りてきて長澤と青木の空いたライン間でパスを受けました(下図)。遠藤に橋岡がついていった事で空いたスペースに、恐らく喜田へのダイレクトパスをイメージして送ったのが、エリキに渡りました。そのあと仲川が「エリキ!エリキ!」と叫んだ、あの明確な決定機に繋がりました。

 

 

ということで、プレッシングは基本的には積極的ではなかったですが、仕掛けたときは前線は分裂することが少なく、圧力をかける事ができました。ただ、マリノス側も狙い通りで利用できるスペースは作れたうえで、「浦和がそっちなら、その逆に行くね!」という戦術的柔軟性が高い攻撃も多く見られましたが、それ以上に柴戸・青木を中心にうまく隠すことができていたのが、最後まで無失点で終われた1つの要因だと思います。

 

ーマリノスも執念深く、浦和は…ー

 

浦和の「ブロック守備」vsマリノスの「崩し」が最も頻度が多くなりましたが、プレビューでは浦和の課題を選手に提示したうえで、マリノスはいつもよりも大外からのクロスを増やすのではないか?と書きました。その推測は当たりませんでした。マリノスはやっぱりマリノスで、いつも通り、より深いスペースへ、より深いスペースへ侵入していく姿勢が見られました。浦和もあからさまに汰木へのサイドチェンジを多用しましたが、マリノスも相当信念を曲げず執念深く、どんなに狭くても深く入ろうと攻撃していました(下図)。

 

 

⇧FKを喜田がすぐに始めて小池へ→小池は幅を取る仲川へ→仲川には山中がすぐに対応→山中岩波の間(チャンネル間)は柴戸が埋める→仲川天野へボックス脇を狙う斜めのスルーパス→オフサイド。

 

仲川は山中と柴戸の2つの山を越えたところに天野がいたのがよく見えていたなぁと驚かされたシーンです。というよりも、自分が幅を取ってボールを受けたら、そこに走ってくれる選手がいるっていうのは、ある程度分かっててプレーしているのでしょうね。それぐらいスムーズであり、再現性のある攻撃でしたのでマリノスの狙いの1つだったように感じます。

 

・幅を取って浦和のDF陣を広げたところから中央へ(上図など)。
・浦和が先に広がってくれれば一発目で中央へのスルーパス(下図など)。

 

という攻撃を徹底していて、マルコスと天野の違いや松原よりは中央に入ってくる回数が少ない小池などありましたが、基本的な部分は、いつものマリノスを全面的に押し出していたように思えます。

 

 

それに対して浦和は前述しましたが、両SB(山中・橋岡)が、幅を取る両WG(仲川・遠藤)にアプローチに出たら基本的にはボランチの2人が埋めることで、執念深く、深いスペースを突いてくる崩しに対応しました。

 

ボランチがチャンネル間を埋めることはプレビューの推測通りでしたが、それによってできてしまう本来ボランチが埋めるべきスペースを利用されてしまうのではないか?という点は、数回「あ!ヤバい」と使われたシーンはありましたが、マリノスの精度が足りなかったことと、片方のボランチやCBが埋めてくれたことで、何とか事なきを得ました。そして、もう1つ特徴的なのが、自陣では杉本が興梠と縦関係のようになり、杉本は確実に2列目に下がることはありませんでしたが、牽制する程度の役割は果たしていて、プレビューで懸念していた後ろに重たくなりすぎる問題にもならない絶妙な立ち位置をしていた気がします。私が使用している媒体の浦和のシステムは4-4-1-1表記でした。敵陣での守備では、興梠と横並びで中央からの前進をさせず。自陣で押し込まれたときは興梠に前線に居残らせて自分は完璧には下がらないけど、すぐに下がれるポジションを保つことで、柴戸や青木も思い切ってサイドに飛び出すアクションができたのではないか?というように推測します。開幕を見る限り、レオナルドではできない事なので、ターンオーバーを意識しての人選だったのか、FWのプレッシングの強度を上げる為の人選だったのか定かではありませんが、守備の時間6~7割の試合としては、良い前線の人選だったと思います。

 

・異なる仕事を卒なくこなした話

 

後半は時間が経つにつれて、柴戸と青木がチャンネル間を埋める作業ができなくなりました。埋めさせる作業を辞めさせたというより、埋めきれなくなってきたというのが私の見解ですが、見方が変われば見解も変わるかもしれませんので、今時点です。

 

相変わらず遠藤は幅を取り続けていたのを、橋岡は先に動くことはせず、だけど遠藤に時間とスペースを与える訳にはいかない微妙な駆け引きは継続していました。その中で、微妙な立ち位置を取る橋岡の内側のスペースにエリキや天野のような選手が飛び出してきて、畠中やティーラトンから縦のスルーパスが次第に通っていたのですが、デンがほとんどキレイに掃除していきました。

 

前半は柴戸や青木が埋めてくれたので、デンは中央に留まって岩波と距離を空けないことが仕事でしたが、後半は、柴戸や青木が埋めれなくなって、前半とは異なる仕事が要求されたときに、しっかりと卒なくこなせたのは素晴らしさを感じました。その一例が下図です。

 

 

後半45分をもう一度見直すなら、デンを意識しながらの45分だと、デンの良さも味わいながら、マリノスの攻撃も「スゲーな」と感じられるのでおススメです。

 

ー後半終盤ー

 

浦和が関根とマルティノスの両翼を、マリノスがエジガル、マルコスが満を持して投入されました。各国リーグを見ても60分を越えた時間でオープンな展開になっていましたが、この試合もそんな感じになって、刺すか刺されないかの攻防戦で結果両チーム無得点でした。結果を知ってるから少し落ち着いて振り返れますが、マルコスがファーストタッチした場所と身のこなしを見たときは滅茶苦茶焦りました。その3分後も同様のことを繰り返されたので、更に焦りましたね。90分のゴール期待値1.70のうち、マルコスとエジガルが投入された後の30分間だけで1.18でした。チームとしてブロックを固める事にベクトルを向けた為、攻め込まれ決定機を作られた事もあると思いますが、マルコスの存在感が非常に大きかったように、ファーストタッチとその後数分のプレーを見てしまうと感じました。

 

無失点で終われたのは、西川を中心にチーム全員で、言葉にはしきれない頑張りがあったからですよね。
ありがとう。

 

 

・総括

 

大槻監督も「この試合が基準」って事をコメントされていたので、この試合から特段の絶賛も批判もすることは安易な気がします。ただ、クラブとして最高に結束を固めて、「勝ち点1」を獲得した手応えを感じることができました。とにかく連戦なので、サポーターもすぐに頭を切り変えて、新鮮な気持ちで水曜日の仙台戦を迎えたいですね。

 

一方のマリノスは私から言える事などないのですが、
あらゆる手を出し尽くした結果が無得点だったので、何で勝てなかったのか腑に落ちないだろうなぁと、私がマリノスサポーターなら思っています。それぐらい九分九厘は仕留めていたシーンが多かったですから。
戦う方向性は異なりますが、マリノスに何とか食らいついて優勝戦線に残りたいなぁと感じた一線になりました。

 

互いに理想とする攻撃を執念深く続けた見応えのある一戦でした。

 

・さいごに

 

プレビューとレビューに繋がりを持たせるのが今季のテーマなので、この試合の肝となる部分に言及できたか自信はありませんが、余韻が残るうちに提供することを重視して、プレビューをフル活用した内容にさせて頂きました。理解して頂けると幸いです。

 

面白ければリツイートで拡散、引用リツイートで宣伝して頂けると嬉しいです。感想もお待ちしています。

 

読んで頂きありがとうございました。

 

 

浦ビュー

初めて浦和レッズを見た方にも読みやすく分かりやすい内容にしつつ、長く浦和レッズを応援して頂いてる方にも満足して頂ける内容を目標に2019年より浦和レッズの公式戦のプレビューとレビューをTwitter上でスタート。
Twitter:@ura_view17

 

コメント

  1. 1 匿名の浦和サポ(IP:222.228.8.238 )

    関根がダメな関根だった
    途中出場は苦手なのか?

    途中から出て流れを変える選手が必要

    このコメントに返信

    2020年07月06日 19:26

  2. 2 匿名の浦和サポ(IP:210.165.106.33 )

    健勇を出してレオを入れなかった理由がよくわかった。やはり、強力なマリノスの攻撃を封じるのに必要だったということだね。

    このコメントに返信

    2020年07月07日 06:29

  3. 3 匿名の浦和サポ(IP:106.128.61.123 )

    ホームの引き分けでニコニコしてる浦和の選手達、アウェイの引き分けで悔しそうな横浜の選手達。
    その辺の意識な差が昨年の順位にでてる。
    いない選手の事言っても仕方無いが闘さんや都築だったらニコリともしないと思う。
    鈴木には闘将の役目も期待しているので遠慮はしていないと思うが試合中もガンガン怒鳴っている姿を魅せて貰いたい。その方が浦和サポにも愛されるでしょ。

    このコメントに返信

    2020年07月07日 17:46

  4. 4 匿名の浦和サポ(IP:124.100.124.150 )

    浦和サポに愛されたところで結果出さなきゃ捨てられるしね
    パフォーマンスより結果ですよ

    このコメントに返信

    2020年07月07日 23:32

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