浦和レッズについて議論するページ

浦議から依頼を頂き、今年も月1ペースでコラムを書くことになりました。マッチコラムではないので、戦術以外にもさまざまなテーマに手を出そうと思います。

 

▼プレミアリーグ方式のメリット、デメリット

2020年4月末現在、Jリーグは停止中。今は再開に向け、足場を固めているフェーズだが、今後の道筋はどのようになるのか。

代表期間にもJリーグを行うことを前提とした上で、7月再開なら日程は100%消化可能。一方、8月再開となると100%消化は難しいが、シーズン成立の条件(全試合の75%以上、各クラブ50%以上の消化)は満たすと試算されているようだ。

個人的には7月が生命線になると思う。いち早く緊急事態宣言を行った北海道が、今は第二波の感染脅威にさらされているように、宣言が解除されてJリーグが再開しても、再び休止に追い込まれる可能性は低くない。その意味では初めから消化率100%を切ってしまう8月再開は避けたいところ。

ただし、今の状況で7月再開は可能なのか。たとえ無観客試合であっても、市中感染の可能性、選手の移動に伴うリスクは既に指摘されている。それらを振り切って試合をするのは、『安全』(リスクを社会が受容可能なレベルまで極小化した状態)とは言いがたい。

個人的にはプレミアリーグで検討中の『セントラル無観客』がいいのではないかと思う。選手と最低限のチームスタッフ、放送スタッフを一箇所に集め、集中的に無観客試合を行う。このやり方なら、市中感染や都度の移動リスクは小さい。

また、今後の緊急事態宣言の緩和や解除は地域ごとに進むと目されており、ホーム&アウェイ方式の場合、その調整は政府や自治体の決断によって右往左往し、難航が予想される。特にJ1は都市圏のクラブが多いが、最初のうちは関東や関西を中心に、宣言が解除されず、ホームで試合を出来ないか、あるいは難色を示されるケースが散発するのではないか。

ならば最初から、感染が少ない地方を『セントラル』に設定したほうがいい。受け入れる現地施設としても、コントロール不可能な一般の旅行客が来るより、緻密な対応を約束するJリーグに一括で借り上げてもらったほうが、経済的にも衛生的にも望ましいはず。7月再開の可能性を高めるなら、単なる無観客以上の、セントラル無観客を検討する必要があると思う。

4月21日、村井チェアマンは菅義偉官房長官と会談し、各クラブハウスをPCR検査の会場に活用することを提案した。寝耳に水の動きだが、セントラル無観客と合わせて実施するなら、留守になっているクラブハウスを提供するのは極めて合理的だ。

また今後、Jリーグを再開するには、緊急事態宣言が解除され、社会が緩和フェーズに入ることが前提だろう。そのフェーズでは今よりもPCR検査を増やし、できるだけ多くの陽性者を発見することで、緩和しない人=自宅隔離あるいは軽症者ホテルに入れて自粛をキープする人、を増やすことが必要になると思う。これまでは偽陰性の問題でPCR検査を絞ることに合理性はあったが、緩和期では今より検査を増やす必要に迫られるのではないか。そのタイミングでPCR検査のために、Jリーグがクラブハウスを会場として提供するのは理に適っている。

ただし、一度提供すれば、その後セントラル無観客からホーム&アウェイに戻すとき、「やっぱりクラブハウス返して」とは言いづらい。各クラブの対応は難しくなるが、テレワークを促進し、スタジアムの会議室等を活用しながら協力するしかないだろう。

協力するメリットは間違いなくある。フランスでは首相による「9月までのスポーツイベントは認めない」との声明を受け、リーグ・アンの強制終了が決まった。Jリーグも色々な考え方はあるが、政府の方針が出れば、否応なく従うしかない。ただ、その決定を座して待つのではなく、自ら意思決定の場へ関わろうと飛び込み、Jリーグの公共性を改めてPRした村井チェアマンの行動は素晴らしいと思う。

再開は中断以上に難しい。いよいよ難局。Jリーグは密かに足場を固めている。

 

▼選手にもメリットがある

ところで、選手の気持ちも非常に気になるところだ。

リーグが再開したらプレーしなければならないし、プレーしないなら選手を辞めるしかない。正直、感染の不安は感じているだろう。それでも「不安だ」と言い出せないのが、より大きなストレスでもある。

『セントラル無観客』がいいと思ったのは、選手の心情も大きな理由だ。

たとえば中立地に全員を集めた後、最初の10日間は非接触のコンディショニングのみで、生活も自粛して過ごす。そうやって感染不安に一律で対処して全チームが共同体となり、選手やスタッフに問題がないとわかった上で、チームトレーニングや試合に移行する。アスリートは身体を追い込むため、免疫力の不安はあるが、そこまで対応を徹底すれば選手の不安はかなり解消され、チーム活動もしっかりできるのではないか。

もう一つ気になるのは、感染した選手の予後だ。

欧州では新型コロナウィルスに感染した軽症者のダイバーが、ダイビングに復帰した後、肺に深刻なダメージが発見されたという症例があるそうだ。感染したアスリートの症状が収まったからといって、すぐに競技に復帰してもいいのか。これは慎重に構えたほうがいい。

今はコロナ感染予防、あるいは治療対応に手一杯で、感染者の予後に関する研究はまだこれからではないかと思う。この状況で酒井高徳、舩津徹也、永石拓海といった感染した選手たちは、今季は念のため復帰しないほうがいいのではないか。個人的にはそう思う。

 

▼新型コロナの影響で選手の二極化が進む

社会の価値観は変わりつつある。

もしかすると、上記の徹底した感染予防策がすべて行われたとしても、今季は競技に復帰したくないと本音では考える選手はいるかもしれない。実際、欧州の下部リーグの選手からは、そうした声が出ている。

しかし、プレーしなければ収入は消える。元々発信力があったり、サイドビジネスで成功したりと、プレー以外で何かを生み出している選手なら、仮に選手を1年休業しても生活は可能かもしれない。

しかし、皮肉なことに、プレーだけに一途に集中してきた選手ほど、この社会不安の情勢には弱い。本音では感染が怖くても、生活を成立させるためには、否応なくプレーするしかない。

これはセカンドキャリアにもつながる話。おそらく選手の価値観も変わり始めているのではないかと思う。

元々サッカー以外にも精力的に取り組んでいた選手は、より積極的に行動する。何となく必要を感じていた選手は、今回をきっかけに一歩を踏み出す。そして今までは「プレーに集中すればいい」と思っていた選手さえ、そのプレー自体が封じられた時を過ごす中で、何かを感じ始める……。そんな変化が起きている気はする。

変われる人と、変われない人。選手に限ったことではないが、今後、その格差は広がってしまうのではないか。それが恐い。

まずは健康だ。ウィルスの蔓延に耐え、社会情勢の変化にも落ち着いて対処するためには、心身の健康が第一である。規則正しい生活を心がけ、フレッシュな自分を保ちたい。

しかし、そんな矢先、昨日は朝4時までDAZNでキャプテン翼を見てしまった。迂闊。

みなさんも気をつけて。

 

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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