今年よりTwitterでスタートした「浦和レッズのプレビュー、レビュー」が面白いと話題となっている浦ビューさん。
その原稿を浦ビューさんに許可をいただき浦議に転載させていただきます。
ACL決勝はアルヒラルが勝利。
浦和レッズは敗戦。
松本戦も湘南戦もHonda戦もセレッソ戦も鳥栖戦も大分戦も広島戦も鹿島戦も川崎戦も。
全部全部「ACLに優勝する為に、優勝への過程だ」とずっとずっとずっと気持ちを抑えてきたと思います。
だから、この敗戦を「相手が上手だった。」
「来週に切り替え切り替え。」という事は、現実問題そうなんだろうけど、この数ヶ月の堪えてきた苦しみはそう簡単に立ち直れるほど浅いものではないです。
この試合に負けた事を直視しないとダメだと思う。
ダメ、絶対に。
なので、今回もいつも通りに多くの浦和サポーターのたった1つの意見として捉えて頂き、最後まで読んで読み進めてもらえると嬉しいです。
では、レビューを始めたいと思います。
〜スタメンと基本システム〜
—浦和レッズ—
・第1戦からスタメン変更なし。
・興梠とファブリシオは前半15分を境にポジション交代。
—アルヒラル—
・第1戦からスタメン変更なし。
・ベンチ含めて不足なしのベストメンバー。
〜前半戦〜
・合格ラインの低い浦和のボール保持
最初のシーンだからこそチームの狙いや色は出ます。浦和最初のボール保持は2分45秒のシーン。
プレビュー通り、青木が最終ラインに降りました。
▶︎ 4バック化したときの槙野と岩波の幅の取り方も
まさにプレビュー通り。「幅を目一杯取る槙野・幅を取らず3バックと変わらない立ち位置の岩波」。
▶︎大輔先生から岩波へパス。
▶︎岩波の立ち位置は前述したものなので、プレスに出てくるのはSHアルドーサリではなくFWのゴミス。
青木の変化に対する岩波の立ち位置を考えると、これを4バックへの可変と呼んでしまうのは違和感ですが、便宜上、そのように表現し続けます。
▶︎岩波は意識的に狙った訳ではないですが、エラーを起こしたい左CB5番アルブライヒの背後を狙うロングパスを送りましたが、長澤は追いつかず。
このとき、SBアルシャハラニは長澤とともに行動。
ということは……?
▶︎アルドーサリは岩波を、アルシャハラニは長澤を
意識した管理だったので、確実に橋岡はフリーでした。ゴミスのプレスの向きを考えても、岩波は橋岡への視界は良好だったはずです。
でも、
立ち位置から考えて必然的にゴミスの強烈なプレス+開始2分50秒のシーンということで、岩波はとりあえず前に蹴り込んだのでしょう。
俯瞰で見ると、橋岡へのパスが理に適っていますが、アルブライヒの脇・手前・背後を狙うのであれば、
どんなにアバウトなボールでも私的にオッケーです。
6分25秒のシーン。
▶︎スローインの流れから槙野→岩波。
▶︎岩波には列を上げてSHアルドーサリがプレス。
アルシャハラニも先に動いて橋岡を管理する姿勢。
なので……
▶︎エラーを起こしたいアルブライヒの背後へ長澤を狙いました。しかし、長澤と意図が合わずに通らず。
▶︎こういう対応で何度も過ちを犯してきたアルブライヒは超安全に外へクリア。
私的にはこれも悪くないです。
今回の岩波は、アルシャハラニや橋岡の関係性を認知しながら意識的に狙えているように見えました。
こういうのを継続的に続けて欲しかった。
20分00秒のシーン。
▶︎青木を最終ラインに降ろして4-1-5。
▶︎4-1-5は形式的なもので、中身はアンカー的なポジションにファブリシオ、岩波の幅の取り方もやはり気になる等々、微妙なポジションバランス。
大輔先生→役割として相応しくない位置でファブリシオが受ける。
▶︎ファブリシオのテクニカルな動きで前を向いてからファブリシオ→興梠→エヴェルトン→長澤。とにかくパスパスで広い橋岡まで届けました。
橋岡に時間とスペースを与えたところで届けるという点では、自陣から敵陣にクリーンに前進することができたと思います。
▶︎橋岡はパスを受けてすぐにアーリークロス。
ボックスに入る前の興梠に高いボールを送りました。
まぁ、何かが起きればナイスクロスになると思いますが、基本的に確率の低いクロスのだったので、アルヒラルに跳ね返されて、最後はファールで止めてしまいました。
もうシーズンの終盤なので、今から再現性とかもっと深く侵入してクロスとか求めている場合ではないので、「クリーンに前進できた割には単調な終わり方だったなぁ」という感想に尽きます。
22分30秒。スローインの後から。
▶︎青木が降りて4-1-5。
▶︎エヴェルトンの隙を見せるような身体の向き、受け方を好機と見たアルファラジがプレスに出ましたが、エヴェルトン→西川→青木と繋ぎ、回避。
▶︎ゴミスのプレスを受けるのと西川へのリターンはアルファラジに消されているので、前線へ蹴るしか選択肢がなくなった青木は……
▶︎アルヒラルの2列目を越してピタッとつけるパスを関根に届けました。
こういうパスを継続的にできたら大したものですが、
これは5回に1回通ったら上出来なほど現実的には目指せないパスだと思います。
▶︎20分を境にファブリシオとポジションを替えていた興梠が、SBの空けたスペースを2列目から飛び出して関根のスルーパスを受けました。
▶︎的確に先手の対応をされていたにもかかわらず、
興梠がチャンヒョンスを巧みにかわしました。
▶︎興梠のクロス→長澤→関根→シュート。
惜しくも決まらず。
180分の中で唯一「入りそう!」と思えた決定機だったので、一連の流れを紹介してみました。
この22分30秒と先ほどの20分00秒の共通している点は、青木が最終ラインに降りたところからです。
正直、青木の変化によって、アルヒラルが影響を与えられた選手や選択肢を与えられた選手はいなかったと思います。ですが、ズレを作るという意味では、ワザとハマる形を作って、目の前の相手を剥がせば前進できるようにしたことが、この2シーンは上手く行きました。
※※このような狙いを持たせた理由は、最後の総括で考察しています。
ACL決勝は関心が高かったようで、第1戦も浦和サポーターだけではなく他のサポーターでも読んで頂きました。他のサポーターの方たちからは、今の2つのシーンを「ばっかじゃねぇーの、特別良くないじゃん」と思われるかもしれませんが、このような前進があるだけで、とても愛おしく感じるのが今の浦和レッズです。浦和のベストです。
では、ここまでに紹介したシーンと滅茶苦茶力技で越えた1つを加えた映像を見て頂きたいと思います。
狙い、準備#urawareds pic.twitter.com/cfgni5BV4S
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年11月26日
・変化をつけた非ボール保持時の対応
負けたので薄れがちですが、浦和は第1戦から非ボール保持時の対応に変化をつけました。
左サイドで持たれているときに長澤を高い位置に取らせる左偏りな5-3-2(4-4-2)にしました。(下図参考)。
選手の左右や並びの関係性は変わりますが、
プレビューで提案した理想に近いものでした。
なので、私としては好評価です。
(プレビュー下図2枚)。
大槻監督の意図としては、左サイドで圧力をかけて、アルヒラルが嫌がってCBを経由して反対サイドに変えようとしたら、長澤が先にポジションを取っているので、CB経由ではサイドを変えづらくなって同サイドで攻めるしかなく・・・という圧迫感を与える狙いだったと思います。
第1戦では、CB経由でサイドチェンジを度々を許したところから突破されたので、前姿勢でそこを先に防ぎたかったのだと思います。
正解かは分かりませんが、そのようなイメージができるという事は具体的な対策だと言えますし、結果としても大失敗の烙印を押される対策ではなかったと思います。
3分35秒のシーンです。
▶︎左サイドでボールを持たれています。
長澤のポジションは2トップ的。
ボールホルダーに規制をかけて前を向かせないようにしています。
▶︎下げてもらったボールに対して、興梠がプレス。
長澤はCB経由されないように自分がいることを認知させておきます。
▶︎チャンヒョンスは非常に危険度の高い真っ直ぐなパスを送ります。青木が奪えてもおかしくはないですが、規制をかけます。
▶︎前は向けないので横にパス。それに対しても、ファブリシオが寄せます。
▶︎圧迫感を感じたアルブライクはトラップが大きくなり、青木が奪って、アルブライクがファール。
同サイドのまま攻撃させて、次第に限定していって奪えれば最高でしたが、ファールでマイボールまで辿り着けたのは良かったと思います。第1戦からは考えられないです。
▶︎前を向かせないようにボールホルダーに規制をかけます。
▶︎起点となるサイドバックのアルブライクにパス。
それに対して、ファブリシオ。
ファブリシオの守備の矢印の大きさが第1戦とは明らかに違うことが分かります。負担は第1戦よりは減ったと思います。
▶︎アルブライクは焦れて後ろへ大きく下げました。
それに対して、長澤が後ろを気にしながら出ます。5-4-1では考えにくいアクションです。
▶︎アルブライヒからチャンヒョンスへ横パス。
当然、興梠が出ます。
▶︎チャンヒョンスのサポートとして、アルファラジが降りて受けました。連動するように青木も出ました。
▶︎ジリジリ追い込んで、ロングキックは怖いけど、
一応GKアルマイウフまで”下げさせる”ことに成功しました。
では、その他も含めて第1戦からの変化を映像でお願いします。
第1戦からの微調整#urawareds pic.twitter.com/W4Q9gZwLYF
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年11月26日
しかし、当然弊害もありました。
5-3-2(4-4-2)なので、左から右に展開されると第1戦(本来)なら対応できていたはずの長澤がいないので、アルヒラルはSBアルシャハラニとSHアルドーサリの関係性で数的優位を生かせる状況になりました。
浦和も何とか岩波が対応することができましたが、
その展開からボックス内まで迫られたのが7分25秒のシーン。
▶︎浦和が奪われたところから。
奪ったアルヒラルは左サイドへ展開。
長澤は上図のように2トップ的。
▶︎アルドーサリとアルシャハラニの関係性に、橋岡と岩波で対応。
▶︎アルドーサリがカットインして、ボックス内に斜めのクロスを送り西川とゴミスギリギリの攻防戦に至るシーンまで行きました。
更に15分15秒。
▶︎長澤は上図のように興梠よりも高く2トップ的。
CB経由を先に防ぐタスク。
▶︎アルヒラルはSBからライン間を越えてカリージョ へパス。後手を踏んでエヴェルトンが対応して、カリージョは横に運んで反対サイドへ。CB経由ではなく2列目の手前でサイドを横断。
▶︎2vs2。
▶︎アルシャハラニとアルドーサリの関係性から、アルドーサリが前を向いてシュート。長澤はシュートを打つ瞬間にゴール側とは逆方向で寄せる為に戻ってきました。 それだったら、後ろの人数が足りてないわけではないので、長澤はもう5-3-2の2としての役割を全うし続けた方が良かったと思います。不意に奪えたり、西川がキャッチした1つ目の起点に前線で作れるので。
でも、長澤のタスクによる橋岡が晒されそうになったのは、この2つのシーンだけだったと思います。映像でお願いします。
第1戦からの微調整による弊害#urawareds pic.twitter.com/1lvozN93rI
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年11月26日
なので、セットしたときの守備は、第1戦ではエヴェルトンのハリキリ守備や負担をかけてはいけない選手に最大の負担をかけたりと疑問を感じるものが多かったですが、第2戦の構築や狙いは私としては良かったです。
それでも「守備良くなかったなぁー」「危ないシーンを作られたなぁー」という印象を持たれたはずです。おそらく、その印象や思い出されるシーンを遡ってみると………
①左サイドで突破を許す。
②浦和のボール保持からの非効率な配置と意図を感じないボール回しで奪われたところから。
この2点からだったと思います。
①左サイドで突破を許す。
第1戦の突破のされ方とは異なりますが、今回も左サイドで気持ちよく突破されるシーンを作られました。
その要因には、アルヒラルの巧妙な狙いも影響していました。
アルヒラルのボール保持時は、第1戦のスタートとは狙いやポジションバランスを変えてきていました。
具体的には、浦和が前に出てくることを見越して、
ボランチのアルファラジを繋ぎ役としてではなく、2列目から積極的に飛び出していけるように早い段階からライン間に入れさせたり、両SHも外に張るのではなく2人とも中央を基本ポジションていました。
中央に人数をかけて、ボールサイド(右サイド)に近い距離を保つことによって、背後に抜けるアクションや手前のサポートができるように流動的なポジションチェンジで浦和に混乱を与えようとしました。
両チームが若干の調整を加えた新たな噛み合わせになったときに、1歩、2歩突き抜けることができたのがアルヒラルの右サイドからの攻撃。それを受ける浦和の左サイドでの守備になりました。
突破を許した要因を簡潔にまとめると……
①右SBアルブライクやオタイフがボールを保持したときにファブリシオが行くのか、関根が行くのか曖昧になった。
②第1戦とは変わって中央の2列目から背後抜ける・手前に降りるアクションを起こすようになったカリージョやアルファラジの流動的なポジションチェンジに、人は足りているけど誰がどう抑えるべきか曖昧になった。(特に槙野-関根間)。
あとは…
いつも読んで頂いてる方なら、特定の個人だけを称賛したり批判したりするのが嫌い・苦手であることは分かって頂いてる事を前提に話ますが、この180分で槙野はちょっと甘いなぁ、厳しいなぁ、浮いちゃってるなぁと強く感じました。クロスに弱いとか背後を取られるとかはチームの問題ですが、個人にしかフォーカスできない部分で他の選手に比べて群を抜いて粗が目立ってしまいました。勿論、全てを否定している訳ではないです。ただ、左CBに右利きの選手を置く意図も大槻監督からは感じませんし、「前任者がそうしてたから」では説明にならないです。関根の左WB起用含めて記者の方には聞いて欲しいところです。
長澤にタスクを変えて左サイドで圧迫感を与えようとしましたが、肝心な左サイドで弱さを露呈してしまい、深いところまで運ばれるシーンを作られてしまいました。
許す。#urawareds pic.twitter.com/i2MLz6m3LR
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年11月26日
②浦和のボール保持からの非効率な配置と意図を感じないボール回しで奪われたところから。
先程は浦和ボール保持時に自陣から敵陣にクリーンに前進したシーンを3つ紹介しました。なので、「もしかして、この人前半の浦和のビルドアップが良かったって思ってるんじゃないの?」とか思われたかもしれませんが、真逆です。
非効率で失ったビルドアップを一つ一つ言及すると多すぎて巻物レベルになるからです。なので、シーンを切り取ってはしません。そこは本当は読みたくない試合のレビューである事を認識しているので、短文を追求します。。。
長澤のタスクを変えて、全体も微調整して……ということで、評価は分かれると思いますが個人的には非ボール保持時の対応は2週間の準備は感じました。
でも、結局「無策」「第1戦と変化を感じなかった」という意見が大多数を占めてしまった最大の要因は、自陣の運びからの非効率さ・上積みのなさだったのではないかと思います。
今コンテンツでは日頃から「その場凌ぎのビルドアップ」と表現していますが、この試合でも時間が経つごとに増してきました。
•浦和のサイクル
7月8月辺りから浦和はボールを保持するとリズムが壊れるチームになってしまったので、この超大勝負のACL決勝は、まさに大槻体制を象徴するような試合展開だったと思います。
上図のサイクルが1周するごとにその場凌ぎ感は増し、増すとサイクルが起きる確率は高まり、時間が経つごとにアルヒラルが試合を握るようになりました。
アルヒラルの為に2週間費やして準備したことは分かりますが、やっぱり身体の向きや位置取りや相互関係の構築や運び方などは2週間ではそうは埋められないです。そして、それを埋めようとせずに6ヶ月間やってきた訳なので、自分たちが上積まなかった部分からリズムを崩して試合のペースを相手に譲ったのはある意味”らしい”試合になったと思います。
では、次第にリズムが崩れてしまった浦和のビルドアップを目を背けず映像で確認してみましょう。
浦和のサイクル#urawareds pic.twitter.com/vO1BBqATn5
— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年11月26日
〜後半戦〜
・矛盾する狙いと采配、修正施さず
後半序盤も引き続きセットプレー等々を獲得して、
アルヒラルペースでした。
浦和も55分にエヴェルトンが瞬間的に最終ラインに降りたのをスイッチにジョビンコ、アルファラジを動かしてズレを作って、橋岡の幅を使いながらファブリシオのシュートまで完結させるシーンもありました。
(下図一連)。
それでも……。
折角押し込んだときに相手に襲いかかられても仕方ない安易なパスを関根と興梠間でしてしまい、カリージョに奪われてカウンターを食らってイエローカードで止めたところからフリーキック2回、コーナーキック3回を連続で受けて、完全にアルヒラルがペースを握りました。
長いセットプレータイムが切れた62分に長澤に代えて柏木を投入しました。
浦和の選手のコメントを読むと前半の戦い方には手応えを感じていたようでした。後半の狙いも1点を取られると絶体絶命になるので、焦れずに戦い続けてラスト10〜15分からバランスを崩してリスクを冒す狙いだったようです。そもそも、試合開始からバランスが取れているとは言えないので、何を基準に話しているのか分からないですが、そのコメントを素直に飲み込んだとしたら、この交代の切り方とタイミングに疑問を感じます。
ラスト10分〜15分から勝負狙い、引き続きペースを握られている戦況を考えれば、あの時間帯(62分)で最もフリースタイルな柏木を最初に投入させるのは正反対すぎると思います。
事実、柏木の最初のボールタッチは、西川の決死のパンチングをエヴェルトンが拾って柏木に渡したのを難しく繋ごうとして弱いパスでアルヒラルに奪われて、再攻撃を受けています。
柏木が直接に影響しているかは精査できませんが、
柏木が投入後は勢いを増すようにボールを奪ったらポジションバランスは関係なく、とにかく前の選手へ。前方の状況や相手を見ずに強行突破。ヘディングが得意ではない選手がフリーにもかかわらずバウンドしたボールをヘディングで前に当てる。
攻撃も守備も残り15分まで焦れずに戦い続けたいと考えているチームの戦いぶりではなかったです。
秩序や規律。破綻しきっていました。
その方向性を平面でプレーしている選手たちだけで変えることは難しいので、その時こそ手腕が問われますが、後半が得意ではない大槻監督は、やっぱり想定外に対して軌道修正してあげられませんでした。
そもそもどこに軌道修正するの?
・アルドーサリの献身性・ルチェスク監督の求心力
第1戦のプレビューの個人紹介でSHの選手にもかかわらず、プレスのかけ方や守備での献身性を1番に称えた29番アルドーサリ。その紹介に相応しい献身性を見せてくれました。
そして、アルドーサリの特徴を理解しているルチェスク監督は、多くのことをアルドーサリに求めました。
試合開始から岩波のプレス役、自陣まで運ばれたら、たとえ攻撃に1番関与していた後のカウンターであっても、橋岡を数的優位で守れるように戻るタスクを与えました。
それを見事に完遂した事はもちろん、決定機の場面にも絡む活躍を見せました。カリージョは半分守備を免除されていた(だけど、浦和は突かなかったからそのように見えない)ので、フルパワーで攻撃の迫力を発揮できましたが、アルドーサリはどの局面においても本当にスペシャルな働きだったと思います。
更に後半からは失点しないことをより意識し始めて、ルチェスク監督はアルドーサリに、自陣で守備をセットしたときは最終ラインまで下げさせて、5バックのように予めポジションを取り橋岡を抑止させました。
幸運にもこのように守る時間が少なく、前向きに矢印を向ける時間が多くなったので、本来の攻撃力でも力を出せるようになりました。
そして、ラスト20分になった辺りからルチェスク監督はカリージョにもWB関根に最初に行かせるように求めました。
そういう事が全て組み合わさったのが72分45秒のシーンです。
▶︎槙野の認知せずの個人感覚なサイドチェンジで橋岡へ。しかし、アルドーサリはずっと最終ラインに引き込んでいるので時間とスペースを与えず対応。
▶︎アルドーサリの制限によって、前を向けなくなった浦和は次第に後ろへ。
▶︎これだけ考えてポジションを取り直す時間があったにもかかわらず、そこかー。とガッカリですが、槙野が受けます。
▶︎槙野→関根。中央から背後へ抜けるアクションを取る選手はなし。
▶︎関根はカリージョの斜め後ろでパスを受けたにもかかわらず、カリージョが的確に対応。
▶︎やる選手が違うように思いますが、興梠が後方でサポート。パスを受ける。
▶︎興梠はラインの手前で待つエヴェルトンへパス。
背中で受けようとするエヴェルトンには強くアルヒラルの選手は潰しに行くのは当然です。その潰しにきたのが左CBアルブライヒでした。
アルブライヒの長所と短所がハッキリある事はもう幾度となく言ってきていて、残念ながら短所を突くことをほぼしなかったですし、アルブライヒもいつも以上に頑張っていました。そのご褒美で、長所となる前へのアタックの強さがこのシーンで生きました。
▶︎アルヒラルが奪って、関根へ戻ったところからまた前へ出て行ったカリージョへパス。
▶︎カリージョの運びに関根がフルスプリントも吹き飛ばされる。
▶︎槙野と関根2人で外に追い込むこともできたはずですが、槙野が対応せずに関根は離脱。その後も槙野は行けばかわされる怖さがあったので静観したままで、カリージョは全てを認知できる時間とスペースが与えられました。
▶︎カリージョ→アルファラジ→ジョビンコ。
ここまでずっと動きをともにしていた岩波はボールウォッチャーでジョビンコに距離を取られる。
▶︎ジョビンコから一気に画面に映り込んで来たアルドーサリを誰も捕まえることができずにゴール。
▶︎アルヒラルがボールを奪った瞬間でアルドーサリはこの位置。守備で1番下がったところから一生懸命出て行って、最後はゴールを決めてしまうのだから、
本当に素晴らしい!!
アルドーサリ、カリージョは勿論他の選手も自分たちが強いのは分かっているけど、その中で更に多くの事を与えられたものを一生懸命、献身的にやり遂げる。
「エラーを起こしたいはずのアルブライヒの守備から
止める事の難しいカリージョの突破で
アシストが魔法をかける最大警戒のジョビンコで
ゴールがスーパー献身的だったアルドーサリ。」
アルヒラルが先制。
大槻監督が極めたこと。
ルチェスク監督が求めたこと。
献身性と真面目さのゴール。#urawareds pic.twitter.com/GiOUBVfhsl— 浦ビュー (@ura_view17) 2019年11月26日
・非常に残念な終わり方
180分の戦いで3点を奪わなければならなくなった浦和は、残念ながら先制点で気持ちは切れてしまったように見えました。
もっと残念だったのが、先制点後の攻撃の仕方。
中央に前にとにかく放り込みました。
残り15分+ATで、3点は難しくとも1点をまず取らないといけないのは、試合開始時の条件と何も変わっていないにもかかわらず、中央に密集して放り込んで何かを起こそうとしたので、「だったら、最初からそういう攻撃に持ち込めば良かったんじゃないの?」と思います。橋岡をWBとして起用していますし。
自分たちのリズムを崩したのが浦和のボール保持からだったので余計に思います。「もうできないことやらなくていいじゃん!」って。
そして、最高にに難しさを感じたのは、西川がキャッチングした後にすぐに味方に繋げられなかったことです。”あの”西川が、スペース・味方に付けることを躊躇しなければならないほど出しどころがなかった状況というのは、チームとしての底力を感じることができませんでした。
西川が躊躇するのも当然で、泣く泣く出しどころがなく、狙った先ははポジションが取れていないので、アルヒラルが拾う→カウンター。
もう最後はGKアルマイウフへのプレスには関根、
ボランチや最終ラインの距離間なんて御構い無しの大大大カオスになって、早々に槙野と大輔先生は置いてかれるカウンターを食らい、ゴミス→カリージョ→ゴミスで追加点。
「1点を奪いに行った末の追加点」と言われれば聞こえはいいですが、このゴールはその言葉に当てはまるに及ばないゴールだったと思います。
試合終了。2-0。アルヒラルが優勝。
・総括
個人の力で負けたはずがないです。
勝てた時は「チーム力で勝てた」と言うのに
負けた時は「個人の力で負けた」と言う。
そんな虫のいいことを選手が使ってはダメです。
だったら、松本山雅に逆転負け、大分に大大完敗のシーズンダブルなんてこれだけ国内トップクラスの陣容を揃えているチームならあり得ないです。
なので、そういうコメントが選手からチラホラ出てきたのが残念です。
その話はとてもどうでもよくて。。。
アルドーサリの献身性を褒めましたが、逆に後半からアルドーサリを5バック気味に下げたのであれば、
アルドーサリの手前を起点にして、アルドーサリを出て来るしかない状況を作ったり、両SHに橋岡と関根を管理するタスクを与えているのであれば、押し下げるチャンスでもあったので、ピン留めして前に出てこさせない状況を作ってからゴールを狙うとか、WBを内側に入れてズレを作るとか、上積みがないチーム状況だったとしても多少の事はできたはずです。
前半に戻りますが。。。
様々な評論家の人がもっとホームだから前に出た方が良かった!という意見はごもっとも。ごもっともなんだけど、長澤のタスクを構築し直して全体を微調整して良くなったよ!というのは、忘れてはなりません。それで充分に前かがりに姿勢を示そうとしていた狙いは分かったし、WBの縦スライドに対する全体の連動もズレが如実に目立つこともあったけど、仕込んだ一端は出たと思います。あれ以上に奪うアクションを示していたら、前半で終わっていたと思います。
多分、前に出た方がいいという意見は、敵陣でできるだけ長く押し込んだ展開を期待、希望していたのだと思います。でも、大槻監督が狙っていたことは会見でもコメントしていたように「ボランチと最終ラインを近くしてどこかを引き出して、サイドで背中をとったり……」と言うように、押し込むことではなく、自陣で優位性を作って、敵陣に侵入したら早く仕留めることを優先したのだと思います。そこが上手くいった2、3つは今レビューで取り上げました。しかし、いづれも前半の前半のシーン。つまり、徐々にアルヒラルに対策されてからは、同じ形で奪われました。そうなったときに、大槻監督がどう導けるのか、少し目先を変えてみることが重要でしたが、同じことを続けさせて、更に苦しくリズムを崩しました。押し込むことを求めていたのであれば、興梠、ファブリシオ、長澤が不用意に降りすぎていたので、アルヒラルのラインを下げさせる、深さを取るように修正しなければならないはずですが、最後までその動きを修正することはしなかったので、その視点からも「押し込む」のではなく、「自陣から繋いで止まらずゴールまで!途中で引っかかったら仕方ないよね!」が大槻監督の狙いだったのではないでしょうか。
前述しましたが、まさに大槻監督体制らしい試合展開だったなぁと思います。
拮抗→互いに良いものを出す→ボール保持からリズムを崩す→想定外が増える後半にペース握られる→修正を施さない→圧迫感が増す→遂に決められる。
終わってみれば180分0-3の敗戦で完敗だったけど、2017年に多くの選手と対戦済みで、これだけ沢山の映像を情報を入れられる時代にもかかわらず、対アルヒラルとしては無策に近い対策と狙いを施した第1戦と、それを真面目に改善しようとした第2戦も脳全体が「準優勝、0-2」になっているので、受け入れてもらえないかもしれませんが、決してこれほど圧倒されると予想できる相手ではなかったです。それでも、勝つには足りないことが多すぎました。
なので、もう少しやりようがあったのと、試合変化に対する正しい導きと戦況を変えることができれば、アルヒラルを一瞬でもヒヤヒヤする試合までは作れたと思っています。
10ヶ月待っていたACL決勝がこのような試合で、
準優勝でとても残念です。
・優勝 アルヒラル ACL総括
優勝に相応しい戦力だけではなく、
優勝に相応しい準備と真面目さを最後まで怠らなかったと思います。
問題点や課題を浦和が全く突こうとする姿勢を示さなかったので、準決勝までのアルヒラル対策を施してきたのと比べてば、苦にならない決勝戦だったと思います。
最高峰の欧州とは真逆の個人依存型の方向に走っている中国リーグが未だに東アジアで幅を利かしています(浦和も広州や上海と同じ一派)。一方で、アジアカップはカタール、ACLはアルヒラルと色んな視点から的確に強化をして成果が実ってきた西アジア。
別に浦和が出場しない限り、どうでもいいですが、
来年、ロジャーシュミットの北京国安、ポステゴグルーのマリノス、(ロティーナ&イヴァンのセレッソ)たちが東アジアの勢力図を変えてもらわないと、益々西アジアに、欧州に置いてかれてしまうと思います。
まぁ、今の浦和が東アジアの心配している場合ではないですが、浦和のおかげで多くの東アジアのサッカーを学ぶことができたのでまとめとしてね!
最終節がどのような状況で迎えるのか心配でならなかったので、その後の過密日程も考えて、今回の2週間で、チュニジアのエスペランスも2試合見ていましたが情報を提供できなくなってしまったのも残念です。
ACLのおかげで今コンテンツが飛躍的に読まれ、認知されるようになったので、回を重ねるごとに楽しくなりました。そして、色んなチームを見ることができて本当に素晴らしい学びになりました。ACLおしまい。
・さいごに
今回はACLなので、完全無料公開した最後に100円をつけさせて頂いてます。今回の作品が面白いと思って頂いた方は是非前のめりに! 勘違いされている方も多いので完全無料公開して最後に有料にしている理由は下記の記事で30秒で読めます。
読みたくない試合後のレビューに関わらず、
読んでくれた方に感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。
浦ビュー
初めて浦和レッズを見た方にも読みやすく分かりやすい内容にしつつ、長く浦和レッズを応援して頂いてる方にも満足して頂ける内容を目標に2019年より浦和レッズの公式戦のプレビューとレビューをTwitter上でスタート。
Twitter:@ura_view17
1 匿名の浦和サポ(IP:60.47.237.210 )
今のレッズを象徴する試合ですね。まさに。来シーズンには立て直せるか。まぁj1かj2どっちで戦ってるかなんでしょうけど。
2019年11月27日 08:01
2 匿名の浦和サポ(IP:126.72.115.41 )
フロントは頭下げて裏ビューさんに分析スタッフとして来てもらってはどうか。
2019年11月27日 09:03
2.1 匿名の浦和サポ(IP:219.114.117.144 )
でも、浦ビューさんが内部に入ると責任が生じてしまって、自由な視点で忌憚のない物言いがしにくくなってしまう気がする。浦ビューさんは今のままで、大槻さんが浦ビューさんの分析をしっかりと読んで、トレーニングで選手に落とし込んでくれることを期待する。
2019年11月28日 21:52
3 匿名の浦和サポ(IP:125.194.234.3 )
概ね同じ見方ですが、付け加えるならばオリベイラ監督の解任の時がシーズン終了まで5カ月切っていたのも、普通のクラブならば問題点のあぶり出しから修正の作業に入るはずが、そのプロセスを経ないで、ここまで来てしまったことで、リセット状態になり、また、一からやり直しになったことで、大槻監督もベストは尽くしたんでしょうが、長期を要する位置関係や約束事での修正が出来なかったのも無能にみえた原因かなというのが、私の見解です。
2019年11月27日 09:52
3.1 匿名の浦和サポ(IP:106.129.173.172 )
100歩譲って過密日程だったっていうエクスキューズはあるかもしれないけど、
ビルドアップのデザインのところがずっと課題として残ってて、位置取りすら修正されず放置されてるのは
練習がよほど悪いか、練習しても分からない選手たちの集まりか、そもそも問題として認識されてないかのどれかだよ。
日々の練習の中でポジショニングの修正すらできない人がキャンプで2ヶ月与えたらできるっていうのは謎理論すぎる
2019年11月27日 19:44
4 匿名の浦和サポ(IP:121.114.80.117 )
関根が‼️上がるチャンスがあったのにバックパスをした。安易にバックパスをした。
レッズ、もっともっと走れ❗走れ❗
楽をするな‼️
2019年11月27日 11:07
4.1 匿名の浦和サポ(IP:126.35.151.148 )
関根はうまいしガッツもあるがサッカーIQが低いように思う。学習能力がないのかな??
無駄なファールが多過ぎる、鳥栖戦の無駄なファールから何も学んでない。
あと、役割をハッキリさせた方がいい。
カリージョの守備に追われ、そこから攻撃になった際にパワーを発揮できる??
第2戦に関しては宇賀神スタメンで守備から入って
後半ジョーカーで関根だったかと。
2019年11月27日 15:29
4.2 匿名の浦和サポ(IP:49.97.107.177 )
「ボールを動かせ、ボールは汗をかかない」と昔にクライフも言ってますが、戦術の無さを根性でカバーするサッカーは限界がありますよ
2019年11月27日 17:42
5 匿名の浦和サポ(IP:60.108.152.222 )
今期はあと2試合ありますが、シーズン終了後には、大槻監督は来年の浦和を再構築する力があるか、裏ビューさんの解説を期待しております。
大槻さんが来季のオファーを請けた場合ですが。
2019年11月27日 11:28
6 匿名の浦和サポ(IP:183.74.204.238 )
FC瓦斯戦
どーせ負けるんだろ ケッ😬
2019年11月27日 14:48
7 匿名の浦和サポ(IP:49.97.109.27 )
イタリア紙によれば浦和がベルギー代表FWメルテンスに興味。とのこと。
ナポリとの契約が終わる夏に加入を目指す。
2019年11月27日 15:50
7.1 匿名の浦和サポ(IP:219.114.117.144 )
ソースは?
URL教えてくれる?
2019年11月28日 22:00
8 匿名の浦和サポ(IP:58.138.15.218 )
二連敗すると思う。
2019年11月27日 16:23
9 匿名の浦和サポ(IP:202.248.21.200 )
もっと人が動いてポジションチェンジしないと相手DFは崩れないよ。
もっと走らねば。
2019年11月27日 17:06
10 匿名の浦和サポ(IP:126.199.24.225 )
どう走れば良いか分からないんだから、走りようが無い。指揮する人が落とし込まないと。
2019年11月27日 18:10
10.1 匿名の浦和サポ(IP:125.194.234.3 )
確かに、1戦目同様、2戦目の時も走り方がわからない選手が多かったのも事実ですね。関根も迷っていた感もありますし、橋岡も同様でしたね。これは、長期に残った走り方の課題を解決する方法が今の戦力で解決する事が出来なかったことになったんですよね。
選手の責任も無論ありますけど、大槻監督にそういう能力が無かったのか、或いは経験値が足りないか、その両方かなとも思いますね。
2019年11月27日 21:21
10.2 匿名の浦和サポ(IP:106.173.221.168 )
「分析力に定評がある」って一体何なんだろうね
そんだけ定評があるならもっと選手の長所を生かすような戦術を落とし込みそうなもんだけど、展開力のない槙野の前に独力突破出来る関根置いたりとか、不味いところを誤魔化すようなやり方ばっかりだし
2019年11月27日 23:30
11 匿名の浦和サポ(IP:113.154.216.153 )
ああ、レッズ関係者に読ませたい・・・
投げ銭てどうやるの?
2019年11月28日 11:08
12 匿名の浦和サポ(IP:49.97.106.140 )
クラブの幹部やフロントが戦術を理解する
必要なんてないでしょう、基本的には現場
が考える事です
2019年11月28日 22:14
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