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浦議ニュース2014 07/30  09:25

【清水英斗の「観戦力」が高まるレッズコラム】J第17節 浦和vs鹿島レビュー『この一戦に、Jリーグの未来を見た!』

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▼この試合にふさわしい審判
両チームのライバル意識が火花を散らす試合は、キックオフ直後から激しいコンタクトプレーの応酬となった。タックルが深く、勝利への執念も数割増しだ。その中でもテクニックを発揮できる選手というのは自然と目立ってくる。

これまで4年に一度のワールドカップが終わるたびに「日本は球際が弱い」「日本はフィジカルが弱い」といった課題を目にしてきたが、しかし、鹿島戦のようなアグレッシブな試合が日本の全年代における"当たり前"になれば、間違いなく日本は世界のレベルに肉迫するだろう。そう考えると、わくわくせずにはいられない。未来につなぐべき好ゲームだった。

その陰の立役者は、主審の西村雄一さん。

正直に言えば、ラグビータックルのような手を使った反則にもイエローカードを全く出さないため、僕は試合中には少し不満に思っていた。しかし、この試合に臨む選手たちのテンションの高さを考えれば、いつも通りに厳格なイエローカードを出してしまえば、試合は荒れ放題で両チームに退場者が出るなど、このすばらしい試合が台無しになっていた可能性はある。

もともと審判(レフェリー:Referee)の仕事は、Refer(言及する、参考にする)という言葉に基づく。創成期のサッカーには審判がいなかったが、お互いのチームに納得できないシーンが試合中に現れると、観戦していた第三者の意見を聞いて仲裁をお願いすることで試合を進行したそうだ。そんなやり取りから生まれたのが審判であり、選手を絶対基準に従わせるための裁判官ではなく、試合の仲裁役として働くのが元々の役割だ。それはサッカーの審判の本質とも言える。

浦和と鹿島。両チームが明らかに激しいぶつかり合いを望んでいるのなら、それを後押しするためのホイッスルを吹く。選手のケガを防ぐために細かくファールを取るが、しかし、うかつにイエローカードは出さない。まさにこの試合にふさわしい"サッカーの審判"の姿だった。こういう試合が増えれば、Jリーグのレベルはどんどん上がると思うが......。

▼Jリーグはまだ戦国時代
また、後半が始まってしばらく経った後、スタッフの方から届けられたハーフタイムコメントの文字にグイッと目を引かれた。

『ナショナルダービー』。

その主は、鹿島アントラーズのトニーニョ・セレーゾ監督だ。「これはナショナルダービーだ。勝利への執念がなければプラスアルファの力は出せない。全力で戦え」とコメントを出した。鹿島の若い選手たちのモチベーションを、『ナショナルダービー』という言葉を使って引き上げたようだ。

もちろん、現時点で浦和と鹿島の試合を『ナショナルダービー』と表現すれば、他のJリーグサポーターからは反発を食らうかもしれない。数年前ならば、ACLを制した浦和とG大阪の対戦がそのように捉えられることもあったが、その後は名古屋グランパス、柏レイソル、サンフレッチェ広島など次々と新しい王者が生まれ、そして、古い王者は没落していく。このサイクルの繰り返しだ。どう見ても、Jリーグはまだ戦国時代の最中にある。

セリエAで『ナショナルダービー』という言葉が用いられたのは1960年代のこと。セリエA創設から60年以上が経った後だ。最も多くのスクデット(リーグ優勝)を獲得したユヴェントスとインテルの対戦を指して、そう呼ばれるようになった。

同じ日本をホームとする2つのビッグクラブによる『ナショナルダービー』。今はまだ安定的に実績を残すビッグクラブは存在しないが、そこに名実と共に名乗りを上げるのは、どのクラブだろうか? 

激しい試合、むき出しのライバル意識、そしてナショナルダービー。Jリーグの未来が垣間見える一戦だった。

▼新たな色を加える選手
他にも、トニーニョ・セレーゾの試合後のコメントには、印象的なキーワードがあった。

「ブラジルでは、"ボールは止まらない、転がっていく"と言われます。試合中でも、ミスをして落ち込んでいると、あっという間に前に行かれてしまいます。ミスをして頭を抱える選手もいますが、その間にもサッカーの人生は進んでいきます。アーと言って倒れ込んで、芝や空を見ているくらいなら、次のプレーをやればいい。人生はすぐに起き上がらなければ、誰かが追い越していくのです」

これを聞いて少し思い出したのは、浦和の選手たちの判定に対するリアクションの大きさだ。この試合でも判定に不満を示したり、怒りを露わにしているうちに、鹿島に素早くリスタートされ、ピンチを招く場面が散見された。前半12分に小笠原満男の素早いリスタートから、柴崎岳が強烈なミドルシュートを見舞ったシーンなどがそれにあたる。このような面での脇の甘さが、まだ浦和にはある。すぐに開き直って次のプレーに集中するスピード感が足りない。

逆に、それが出来ていたのが西川周作だった。

柴崎の強烈なシュートでニア上を抜かれた前半30分の失点場面は、あまりにも相手がフリーであるし、シュートを褒めるしかない部分もある。柴崎はチラッと中央を見て味方を確認し、浦和の選手にマークされているのを見て、最終的にシュートに切り替えた。そしてワンステップで小さく踏み込んでシュートへ。

以前、サッカー解説者の金田喜稔さんと話をしたとき、「上手い選手はプレーをやめられるんじゃよ」と言っていた。下手な選手は、最初に自分が思い描いた選択肢を捨てることができない。ちょっと通らなそうだな...と思ったパスでも、やめられず、ついついそのままエイヤッと出して相手に奪われてしまう。ところが上手い選手は、そこで瞬時にプレーをやめられると。柴崎の場合もまさにそれだ。ワンステップであれだけの強烈なシュートを打てることを含めて、直前で"プレーをやめた"見事な得点だったと思う。

しかし、それでも西川は「もう少し(柴崎に)寄せられればよかった」と反省の弁。たしかに柴崎は「味方がマークされている」と思ってシュートに切り替えているので、西川は思い切って折り返しをDF陣に任せ、柴崎との1対1に集中する選択肢もあったのかもしれない。

そして西川はその後、後半に訪れた鹿島のビッグチャンスでは、ダヴィに対しても、本山雅志に対しても、1対1で鋭く寄せてシュートコースを消し、見事なビッグセーブを見せた。ここには1失点目で寄せられなかった経験が生きたそうだ。

8試合ぶりに失点を喫した西川だが、試合の中でも冷静に分析し、すぐに次のプレーに集中できたのはさすがだ。槙野智章が移籍して来たとき、僕は今までの浦和にはなかった明るい色が入ってきたとポジティブにとらえたが、この西川という選手もやはり、今までの浦和になかった新たな色を加えているように感じられる。


清水英斗(しみず・ひでと)

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。雑誌『ストライカーDX』、ウェブサイト『Goal.com』の編集長を経て、現在はフリーランスとして活動。著書には「サッカー日本代表をディープに観戦する25のキーワード」「だれでもわかる居酒屋サッカー論 日本代表戦の観戦力が上がる本」「あなたのサッカー「観戦力」がグンと高まる本」「サッカー守備ディフェンス&ゴールキーパー練習メニュー100 (池田書店のスポーツ練習メニューシリーズ)」「セットプレー戦術120」「ストライカー練習メニュー100」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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