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浦議ニュース2014 07/22  07:41

【清水英斗の「観戦力」が高まるレッズコラム】J第15節 浦和vs新潟レビュー『両監督が展開した高度な頭脳戦とは?』

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▼新潟の浦和対策とは?
もしかしたら、ブラジル気分が抜けていないのかも...。あるいは、ワールドカップから帰って来て最初のJリーグだし、両者を比較しながら観てみようかな、という気持ちがあったのかもしれない。

新潟戦の前半が終わったとき、レシフェで行われた『日本vsコートジボワール』を思い出してしまった。

まず、新潟側にハッキリと見られたのは、ボランチの小林裕紀が柏木陽介のマンマークについたことだ。浦和の5トップに対してどうやって守るのかは、各チームに色が出るところ。4-4-2を敷く新潟の4バックは、両サイドバックが平川忠亮や宇賀神友弥と1対1になり、センターバック2人が興梠慎三(李忠成)と梅崎司に対して2対2となる数合わせ。そして1人余った司令塔の柏木には、ボランチの小林がスッポンマークで追いかけ、4バック+1マンマークで浦和の5トップに対抗した。

ここで重要なのは、新潟の最終ラインが同数で守ったことだ。

普通のサッカーでは、最終ラインに"+1"の数的優位を作ることが多い。浦和もそうだ。3バックで新潟の2トップに対応している。しかし、当たり前の話だけど、+1を作れば、どこかで-1をしなければならない。たとえば1トップの李忠成が2人のセンターバックを追わなければならない、といった不利が出てくる。そうやってリスクと攻め気のバランスを調整するのがサッカーでもある。

そして、その最終ラインが"同数"で守る新潟の場合、他の場所で―1をする必要がない。それによって何が起こるのか? "はめ切る"ことができるのだ。

新潟は、阿部勇樹と那須大亮に2トップの鈴木武蔵と岡本英也、青木拓矢にレオ・シルバ、森脇良太に田中亜土夢、槙野智章に山本康裕と、前線まで同数でプレッシングがはまる。そして、ショートカウンターで点を取るのが特長のチームだ。さらに中盤に下がってヘルプに行ける柏木に対しても、小林がマンマークで地の果てまで追いかけるので、同数のプレッシャーが剥がされることはない。

今までも浦和に対し、急造の5バックで対抗するチームはいくつかあったが、新潟の場合はちょっと違う。リアクション的な発想の4バック+1マンマークではなく、あくまでも新潟の長所であるショートカウンターの刃を鋭くするために、前線までプレッシングをはめ切るために、そのための小林のマンマーク。そういう積極的な印象を受けるやり方だった。

▼コートジボワール戦との類似点とは?
...ところが! ペトロビッチ監督は、それを見事に外した。

キープレーヤーは青木だ。

ボランチの阿部が左サイド側に下がってビルドアップを始めるのは、いつもの通りだが、さらに右サイド側へ青木も下がり、ゼロボランチ状態になる。レオ・シルバはさすがに最終ラインまでは青木を深追いせず、センターサークル辺りに、ぽつんと一人で留まっていた。レオ・シルバは新潟のビルドアップの中心人物なので、あまり最前線までポジションを崩して追いかけると中盤のクオリティーが下がる。それもあって深追いせずに留まったのかもしれない。

結果、新潟はレオ・シルバという"+1"がピッチのど真ん中に生まれてしまったため、浦和の最終ラインに並ぶ阿部、那須、青木に対して守備が1枚足りず、プレッシングがハマらなくなった。

とはいえ、このままでは浦和も最終ラインでボールを持つだけで、前に運ぶ手立てがない。そこで重要になったのが、森脇の動きだ。

浦和は右ウイングの平川が少し中に入り、対面する相手サイドバックの大野和成を引きつけてサイドにスペースを空ける。そして、この高い位置の右サイドへ森脇がオーバーラップして行く。森脇をフリーにしないためには、相手の左サイドハーフの田中亜土夢はズルズルとマークに下がらざるを得ない。

本来ならば、田中は2トップを助けるために前に出て、青木にプレスをかけたいのだが、どうしても森脇のポジショニングに後ろ髪を引かれて、それが許してもらえない。そして、田中が下げさせられて芋づる式に空いたスペースへ、青木がドリブルで運んで中盤を攻略する。そこから、1トップ2シャドーへ向けて斜めの縦パス。浦和の攻撃は見事なロジックで構築されていた。

そう。それだ。なんで僕がコートジボワール戦を思い出したのか。それは新潟の田中が、森脇のオーバーラップに引きずられて下がる様子が、あの試合の香川真司そっくりだったからだ。あのとき右サイドバックのオーリエが高い位置を取る動きに対し、香川もズルズルと下がるしかなかった。そしてうまく相手のプレスを外した浦和は、コートジボワールのようだった。

対戦が決まってから6カ月という期間があったコートジボワールは、日本攻略の戦術を攻守にわたって整備したし、今回の浦和対新潟も、たくさんの準備期間が与えられた試合だ。それだけに入念な準備と、それを予想して外してみせたペトロビッチの戦略が見事だった。

▼ザックジャパンに出来なかった事
ところが、新潟はそこで終わらず、前半が終わりに近づく頃には、ザックジャパンが出来なかった守備調整をやってみせた。マンツーマンで平川を追いかけていた左サイドバックの大野が、平川を追わずにレオ・シルバにマークを受け渡したり、あるいは小林が森脇のマークを受け取ってサイドの守備へスライドするなど、田中が下がって来なくても後ろが足りるように守備を合わせた。

これにより、田中は前へ出て青木にプレスをかけられるようになり、今度は浦和のビルドアップが行き詰まる。そうなると浦和は、GK西川周作も使ってパスをつなごうとするのだが、雨で滑りやすくなったピッチでは西川もいつもほどのパス精度が出ず、やはり追い詰められていく。後半はこの新潟のねらいがよりハッキリした。

新潟がやったように、コートジボワール戦のザックジャパンも、オーバーラップしてくるオーリエに対する香川のマークを、長友、吉田、長谷部らが受け取り、高い位置に香川を残してくれれば、もう少し挑戦が続けられたかもしれない。もちろん、新潟の場合はビハインドを負ったスコア状況も手伝って積極的にリスクを受け入れやすかった事情もあるし、それ以前に、コートジボワールの前線を相手に同数で守る勇気も必要になるので、同列に語るのはもちろん無理があるのだけど...。

そんな状況で前半は、相手のねらいを外した浦和が最初にペースを握り、徐々に慣れてきた新潟が押し返した。ボールポゼッション率は前半15分頃までは浦和が70%を握っていたが、徐々に新潟が数字を上げていった。そして後半に入ると、プレッシングをはめ直してボールポゼッションを握って行く新潟に対し、リードを奪った浦和が再び押し返すことはなかった。良い時間帯である前半16分のうちに、オウンゴールで浦和が先制したのは幸運だったのかもしれない。

▼リスクの許容度のバランス
後半に一方的にペースを握られたことについて、ペトロビッチ監督は、オフェンスファールがあまりにも多く取られて前線にボールの収まりどころが作れなかったことを一因に挙げた。それも一つだが、より大きな原因と言えるのは、各選手のプレス意識ではないかと思う。

特に両ウイングの平川と宇賀神は、どちらも後ろに"+1"を残そうとする意識が強く、新潟がサイドバックへ展開したときにプレスで出て行くタイミングがひとつ遅れて、相手を自由にさせる場面が多かった。前には出て行くのだが、それはボールを奪う!という意識ではなく、とりあえずコースを切ってマークにつく、という程度のタイミングや強度が多かった。

そこに思い切って突っ込むリスクをあまり取らなかったのは、いかにも今シーズンの浦和らしいが、原口ドリブルというカウンターの武器がひとつ無くなっている以上、果たしてこのままで良いものか。今回の新潟戦も、引き分けに持ち込まれる可能性は充分にあった。

ただし、直近2年の王者であるサンフレッチェ広島は総勝ち点63、64という低めの水準で優勝を果たしているので、今年も同じ水準とすれば、慎重な戦いの中で多少の引き分けを想定内とする考え方も合理性がある。

ここまでリーグ戦15試合で20得点9失点。1試合あたりの平均ゴール数は2を切り、ロースコアゲームの傾向が強い。一方、ナビスコカップは6試合で15得点9失点。1試合平均で4ゴールも決まっており、こちらはハイスコア傾向だ。

リスクの許容度が如実に表れている結果だが、果たして、この慎重なリーグ戦を変化させるタイミング、させなければならないタイミングはどこかで来るのだろうか。


清水英斗(しみず・ひでと)

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。雑誌『ストライカーDX』、ウェブサイト『Goal.com』の編集長を経て、現在はフリーランスとして活動。著書には「サッカー日本代表をディープに観戦する25のキーワード」「だれでもわかる居酒屋サッカー論 日本代表戦の観戦力が上がる本」「あなたのサッカー「観戦力」がグンと高まる本」「サッカー守備ディフェンス&ゴールキーパー練習メニュー100 (池田書店のスポーツ練習メニューシリーズ)」「セットプレー戦術120」「ストライカー練習メニュー100」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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