浦和レッズについて議論するページ

▼気持ちが大事なSB
88分にラファエル・シルバが決めたゴールにより、浦和レッズのアジア制覇はもう目前まで迫っていた。しかし、緊迫した試合展開の中で仮に1点でもアル・ヒラルに奪われれば、それは延長戦突入を意味するに等しい。相手に退場者が出て数的優位に立っているとはいえ、この1点をチーム全体で守り切ることは大きなミッションだった。

4分と表示された後半のアディショナルタイム。右SBの遠藤航は右サイドの相手陣地で同サイドのズラタンとともにボールをキープし、時間を消費していく。そうした冷静な判断を下す中、相手陣地深くまで侵入する体力がまだ残されていることに、少なからず驚く自分がいた。

「緊張感のある試合だったので、守備的な戦いになったけど、最後のほうの時間帯でズラ(ズラタン)とボールをキープしていた場面は、守備的に戦っているからこそ体力が残っていてできるプレーです。SBのポジションは守備でも攻撃でも自分の気持ち次第でどちらに比重を置くか、決められる部分がある。最近はそう思っています」

SBとして、一つの"醍醐味"を見い出そうとしている遠藤は、アジア制覇の瞬間をピッチで迎えた。

「ACL優勝のチャンスはなかなか巡ってこない。タイトルを獲れて良かった」

試合後のミックスゾーンでは、アジア制覇の達成感よりも、安堵感のほうが優っていた。

▼SBはわかりやすいポジション
解任されたミハイロ・ペトロヴィッチ監督の後を受け継いだ堀孝史監督は、より自分の色を打ち出す意味でも、J1第25節・柏レイソル戦から基本システムを[3-4-2-1]から[4-1-4-1]にシフトした。しかし、ミシャ体制の浦和は元指揮官の標榜するサッカーを実践するために組まれたメンバー編成のため、SBの人材に関しては乏しかったことは否めず。システム変更当初は森脇良太が務めていたものの、負傷欠場の影響と個のタレントに優れた選手たちと対峙するアジアでの戦いを踏まえて、ACL準決勝第1戦から右SBのポジションには遠藤が抜擢された。

「一番考えていたことは守備から入ること。そういう意図もあって、僕をサイドバックに起用したんだと思います。サイドに張っている選手に対して、アプローチに行くところと行かないところのメリハリをつければ良かった。サイドバックはシンプルに楽しめました。いろいろなポジションをできることは強みですし、やったことのないポジションでもある程度できたことはポジティブな材料です」

浦和で初のサイドバックを終えた遠藤はそう語っていた。"いろいろなポジションをできることは自分の強み"。ボランチでの出場にこだわりがないと言えばウソになる。しかし、フッキ、オスカルら強力なアタッカーをそろえる上海上港を相手にすれば守備の強度は絶対必要になる。アジアの頂点という景色にたどり着くためにも、与えられたポジションで自分のやるべきことに集中する。ただ、それだけだった。

上海から帰国直後のリーグ戦第28節・ベガルタ仙台戦では、右サイドで野津田岳人からボールを強奪すると、最後は正確なクロスボールで興梠慎三のチーム2点目を演出。埼スタでのACL準決勝第2戦後には、日本代表・ハリルホジッチ監督が右SB遠藤のパフォーマンスについて言及し、彼の働きを賞賛していた。

「SBは結構分かりやすいポジションですよね。1対1の勝負で勝てれば評価されるし、クロスボールを入れられて失点につながれば評価は下がりますから」

"白黒ハッキリ"つきやすいサイドバックのポジションも次第に板につき、第30節のガンバ大阪戦後はクロスボールの入れ方の工夫についても言及。「チームメートからも僕のクロスボールを期待されていることは感じる」と話すなど、本人は"守備専SB"からの脱却にも色気を見せていた。

▼もっともっとクオリティを上げたい
こうして右SB遠藤はACL決勝の舞台でも不変だった。決勝の相手であるアル・ヒラルは前からプレッシャーをかけてハメに行こうとしても、巧みな技術と球際の強さで浦和のプレッシャーを剥がせるチームだった。ポゼッションを相手に譲り、時には防戦一方の時間帯は長かった。それでも、浦和の選手たちは食らいつき、アウェイでの第1戦を1-1で引き分けてホームでの第2戦につないだ。そして、埼スタでのリターンマッチでも、浦和は押し込まれる時間が続くことになる。

0-0で推移する中、後半の半ば過ぎからは相手のラフなロングボールが増えてきた。当然、遠藤のいる右サイドには何度もラフなロングボールを蹴り込まれたが、それを遠藤がことごとく跳ね返していく。

「僕をSBに置いているということの利点はそこにあると思います。CBの選手が行かないといけないような場面でも自分がハイボールの競り合いに行ければ、後ろは余って対応ができます。それは堀さんも理解していることだと思います。阿部さんも僕がハイボールの競り合いに行ってくれたほうが良いと思っているはずですし、良いコミュニケーションを取れています。自分に何ができるか、それを考えた上でのプレーなんです」

サイドでのマッチアップを封じることだけが、SBとしての守備の仕事ではない。仮にハイボールで競り負けていれば、ゴールに近いエリアでフィニッシュを食らうことにつながりかねない。瞬時に状況を察知し、危険な芽は未然に潰す。SBに自分が置かれている意味と価値を、遠藤は実際のプレーで実証していた。

「最近は自分の(本来の)ポジションがどこか分からなくなってきているのですが......。それぞれのポジションで何をできるか。どういうことをしたら良いのか。それを考える能力は自分にあると思っています。そのちょっとした判断やポジションが変わった時のポジショニングやプレーの選択肢など、しっかりと自分の中で整理してやれています。確かにSBで結果を残せたことは良かったですが、代表ではボランチをやっているし。自分がこの先、どうなるのか。それは考えるところではあるんですけどね」

ファイナルの舞台で2点を奪ったラファエル・シルバや準決勝、決勝の舞台でアジアの猛者とも局面で互角以上に渡り合った長澤和輝など、活躍した彼らに隠れがちだが、未知の領域とも言っていい右SBのポジションを務めた遠藤が、アジア制覇に貢献したことに異論の余地はないだろう。むしろ、右SBでの経験値は、プレーヤー・遠藤航としてのポテンシャルが無限大に広がっていることを証明したのではないだろうか。本人は言う。

「ポジティブに言うとそうかもしれませんが、ユーティリティーのある選手はもっとそれぞれのポジションでクオリティーの高いプレーを発揮しないといけないと思います。器用貧乏にはなりたくないので、もっと質を上げていかないと。良いプレーをできているという感触もあるけど、いろいろなポジションをやっている分、波もあります。『コイツはどこで使っても大丈夫』と思わせるためには、もっともっと成長が必要だと思います」

指揮官としてはこれ以上ない"孝行息子"ーー。傍からはそう見えても、遠藤自身はもっと先の景色を見据えている。



蹴球界のマルチロール・郡司聡

30代後半の茶髪編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスに転身。現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測しながら、編集業・ライター業に従事している。

コメント
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1. 名無しの浦和レッズサポーター(IP:153.205.10.206)

航ってホントすげーと思う、どのポジも何事もなくできるよね。どこがベストかっつたらボランチだろうけど。阿部ちゃんの後継者にとは思うけど海外に行きたいだろうしな。

December 1, 2017 11:40 PM

2. 名無しの浦和レッズサポーター(IP:1.66.105.222)

航無双!個人的には、準決勝の第2戦、決勝の第2戦。共に埼玉スタジアムでの2試合は航がMOMです!確かサカダイの採点6点とかだった。採点した人は何を観てたの?って怒りを覚えましたが。 確かに長澤も凄かったけど断然航でしょ? 航これからも頼むぜ!!

December 2, 2017 1:07 AM

3. 名無しの浦和レッズサポーター(IP:49.98.133.154)

長谷部だってヴォルフスブルクの時、はじめの頃サイドバックやっててブンデス制覇をしたりしたし。今、遠藤がサイドをやってもマイナスではないと思う。 むしろクロスを磨けば上位のサイドバックになれると思うけどな。

December 2, 2017 1:18 AM

4. 名無しの浦和レッズサポーター(IP:124.86.164.110)

あれだけ地上戦に強いSBってのは本当に魅力的だ 精力的かつタイミングの良い上がりも武器になる

December 2, 2017 7:47 AM

5. 名無しの浦和レッズサポーター(IP:27.82.153.62)

実際、ブンデスってどうなんだろうね? 本職がSBでない長谷部や細貝がソコでレギュラー起用されてSBが本職の酒井高徳がSBをやらせてもらえなかったりするからな 海外の起用基準もよー分からん

December 2, 2017 9:33 AM

6. 名無しの浦和レッズサポーター(IP:202.214.198.118)

ACLを見てたらSBの方が適正だと思った。

December 3, 2017 10:10 AM

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